会社を退職
狐神界のシロちゃんの社から現実世界の自室に戻った。
神界にいると体調はとても良くなる。まるでぐっすり寝ていた感じだ。
今日の朝ご飯はフレンチトーストを作る。少し気落ちをしているシロちゃんと朝ご飯を食べながら会話を切り出す。
「さっきの神格管理局の女性は知り合い? サクラさんって言ってたけど」
「あの人は神格管理局の局長代理のサクラさん。カナデのお母さんで仙狐かな。神力が足りなくてまだ天狐になれないんだけどね。お母さんの昔からの知り合いなの」
あのカナデの母親か。神格管理局の局長代理ならエリートなんだろう。あまり良い印象は受けなかったな。娘のカナデも喧嘩腰だったし。あまり関わり合いたい狐ではないな。
「それより今日の霊片の納品はどうだった? 神力は結構上がった?」
「だいぶ神力は上がったけど、地狐になる為にはまだまだ足りないわ。このペースでも数年はかかりそう」
「地道にやる以外の方法って何かあるか?」
少し悩んだ後、シロちゃんは重い口を開いた。
「富士の樹海の洞妖窟」
「富士の樹海にそんなものあるんだ。早速行ってみる?」
「でもナギの仕事があるでしょ」
「俺は優先順位を間違えたりしないよ。今はシロちゃんの神格を上げて、シロちゃんのお母さんを探す事だよ。仕事は辞めてくるよ。幸い祖父の遺産と両親の生命保険でお金はあるからね」
俯いて顔を上げないシロちゃん。絞り出すように喋り出す。
「ナギ、本当にごめんなさい。私の都合で迷惑かけて」
「それ以上はもう良いよ。この間も言ったけどそこはごめんなさいじゃなくありがとうって言って欲しいんだけど。取り敢えず2週間くらい待ってくれるかな。今日、会社に退職届を出してくるからさ。それまではコツコツ神界で悪霊退治だな」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
勤めていた会社には朝一番で退職届を提出した。
辞める理由は知り合いの仕事の手伝いをする事になったで押し切った。仕事の引き継ぎは2週間になる。
その2週間の間に富士の樹海の洞妖窟に行く準備をする。
シロちゃんは人型になると頭には狐耳らお尻に尻尾がある。まだ隠せないようだ。地狐になれば隠せるようになるみたいだけど。
シロちゃんには狐の姿で移動してもらうのが良いだろう。移動は俺が車を出せば良い。念の為シロちゃんを入れる犬用キャリーケースを購入するか。
富士の樹海の洞妖窟は結界が張られており、洞妖窟に入ると神界と同じ状況になるそうだ。
気を使った力徳流刀技が使えるのは助かった。
神界で使っている神刀は二足三文の刀だが、今回は刀を持ち込む事ができる。祖父から受け継いだ刀を使う事にした。
神刀【日日月】は、刃文は直刃、刃の長さは約70cm、柄まで含めると約95cmになる。黒い鞘で装飾はされていないがそれが逆に神秘的だ。
祖父からは必要な時に使うように言われてきた。この時代に刀が必要になる事などあるはずがないと思うのが普通だが、俺は必ず必要になる事があると疑わなかった。
今がその時なんだろう。
洞妖窟に入る為のヘッドライトやロープや手袋。その他に傷薬や携帯食料や途中で泊まるための寝袋も用意した。刀を持ち運ぶためにバットケースも購入した。
準備不足なら引き返せば良いだけだ。
仕事の引き継ぎを終え、会社を退職した。
今日は良い天気だ。
富士の樹海に向けて車を走らせた。
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