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月光の狐  作者: 葉暮銀


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力徳流刀技一刀斬

夜の高速を飛ばして4時間程度で仙森市に到着した。

夜、遅かったため軽くシャワーを浴びてベッドに潜り込む。

当たり前のように俺のベッドに入ってくる狐姿のシロちゃん。

フワフワの毛並みがベルベットを思い起こされる。

鼻をつけて匂いを嗅ぐと良い香りがする。

頭の中もフワフワになる。

回復術でもかけているのかな?


昨日、あれだけ運転したのに疲れは全くなかった。

シロちゃん様々である。

いつものように道場の掃除をし、朝の鍛錬をする。

とても気持ちの良い時間だ。

一通りの鍛錬メニューをこなし、庭の祠を掃除する。


台所に行くとエプロン姿のシロちゃんが朝食を作っている。

小さいが幸せがここにある。

朝ご飯を食べ終わった後にナラクさんに相談してみる。


「シオリが九尾(きゅうび)()を目指していたのを教えてもらったか。今は確かに神格管理局に囚われておるのぉ」


「どうすれば狐神界でのいざこざを収める事ができますかね?何か良い知恵はないですか?」


「いざこざはある程度は起きてしまうのじゃ。しかし小規模にする事はできるのぉ。ナギは妾の言う通りに動く事ができるか?それはナギが望まない事かもしれないかもなぁ」


それからナラクさんの話の詳細を聞いた。

確かにこれなら俺の希望は叶えられる可能性が高い。

暫く考慮した。

あとは決心するだけだ。

俺はナラクさんに揺るぎない言葉を吐いた。


「わかりました。ナラクさんの言う通りに動きます。よろしくお願いします」


「本当に良いのか?今なら引き返せるぞ。所詮狐神界のいざこざじゃ」


「俺の優先順位はシロちゃんです。シロちゃんがお母さんと一緒に居られること。二人が安心して暮らせることです。その為にはこれが一番良い方法だと思います」


次の日からナラクさんが指示するところにシロちゃんと出かけていった。

栃木県の那須郡周辺から円心状に広がる地域。

ナラクさんの千里眼で次から次へと移動する。

移動した場所には南北朝時代に破壊された殺生石が転がっている。


シロちゃんが祝詞(のりと)を唱え、殺生石を霊片に変えていく。

大きな殺生石の欠片には悪霊が纏わりついている。

その悪霊は俺が斬り伏せた。


1ヶ月の間、日本各地をシロちゃんとナラクさんと一緒に回った。

シロちゃんは移動の間はずっとハードロックの音楽をかける。

ナラクさんはタブレットで漫画を読む。

緊張感が欠けている道中だったが、俺はとても楽しかった。


最後に大きな殺生石を浄化してこの旅は終了した。

あとは俺が成長しているかだ。


1ヶ月ぶりに家に帰宅した。

恒例の焼き肉パーティーだ。

肉を頬張るシロちゃんに顔が綻ぶ。

これはビールの肴になるな。


したたかに酔ってベッドに潜り込む。

狐姿のシロちゃんがベッドに入ってくる。

相変わらずフワフワだ。


早朝に道場を掃除する。

道着に着替えナラクさんが作った金剛石の前に正座する。

静寂が周囲を包む。

特別な呼吸法で心を無にしていく。

心が刀になっていく。

静かに立ち上がり上段に構える。

力みが抜けた動き。

刀を振り抜いた。

そこには二つに斬れた金剛石の玉が転がっていた。

真の力徳(りきとく)(りゅう)刀技(とうぎ)一刀(いっとう)(ざん)である。


力徳(りきとく)流刀技では、切れる、切れないとは考えない。

【ただ一心に斬る】

やっとその深淵に辿り着いた。

これでやっとピースが揃った。


シロちゃんとナラクさんと一緒に神格管理局の霊片納品所に行った。

霊片に変えた殺生石を納品する。

受付の赤狐(せきこ)はここまで大きな霊片は見た事がないのだろう。

また大量でもある。


慌てて神格管理局局長代理のサクラさんを呼びに行く。

別室に連れて行かれそうになるがナラクさんがそれを止める。


「ここは霊片納品所じゃ。早く霊片を納品するのじゃ。これだけあればシロも気狐に容易くなれる。シロの研修は妾がやるから安心せい。早くシロに霊片に見合った神力をよこすのじゃ」


有無を言わせぬナラクさんの言葉にサクラさんは何も言えない。

ナラクさんの言う通りシロちゃんは神力を受け取った。

帰り際にナラクさんがサクラさんに伝える。


「これでシロも気狐じゃな。シロの母親の情報は妾から伝えておくから安心せい」


俺たちは神格管理局を後にした。

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