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月光の狐  作者: 葉暮銀


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煽て山にいた二人

煽て山は街外れのシロちゃんの社から走って10分程度の小高い山である。

以前、夜通し悪霊退治をしたことがあったなぁ。


狐神界の街中を走り抜け、煽て山に向かう。

煽て山に近づいていくと悪霊が少しずつ出現してくる。

以前来た時とは完全に悪霊の量が違いすぎる。

煽て山に入る頃には周り一面が悪霊だ。


「シロちゃん、これどうするよ?」


「たぶん以前の騒がせ山のように憑代があるはず。それを浄化しないとダメね。取り敢えず頂上を目指しましょう」


煽て山は丘と言っても良いくらいの標高だ。

それではまずは頂上を目指しますか。


俺は【日日(ひび)(つき)】を抜き、悪霊を斬り捨てていく。

日日(ひび)(つき)】は、今まで神界で使っていた(なまくら)の神刀と違い切れ味も気の通り方も段違いだ。

戦闘がとても楽になっている。


俺は【日日(ひび)(つき)】に気を流す。

刀が光り刃が3倍ほどに伸びる。

横薙ぎに刀を振ると6メートルほどの光る刃が飛んでいく。

力徳(りきとく)(りゅう)刀技(とうぎ)光刃(こうじん)(ざん)も大幅に強化されている。


圧倒的な殲滅力。

悪霊が固まっているところに放ったところ、一振りで殲滅ができた。

ナラクさんとの鍛錬のおかげで特殊な呼吸法の持続時間も3倍以上に伸びている。


俺は片っ端から悪霊を倒していく。

霊片に変わっていく悪霊。

霊片はそのまま放っておくと妖気を吸い込む事で悪霊に戻ってしまう。

シロちゃんが丁寧に霊片を回収していく。

けっして勿体ないわけではない。


悪霊を倒しながら煽て山の頂上に近づいてきた。

相当な数の悪霊を倒してきたが、周囲はまだ悪霊だらけだ。

20分ほどかけて煽て山の頂上付近まで辿り着いた。


悪霊の密度が濃くなっている。

頂上辺りに二人の人影がみえる。

こちらの動きを窺っている様子だ。

頂上にいる二人の姿がしっかりと視認できる距離まで近づいた。


一人は巫女装束の狐耳の女性だ。袴の色が黄色で黒髪だ。身長はシロちゃんと同じくらいで160㎝くらいか。

もう一人は男性だ。黒い作務衣を着ている。脇には刀を差している。

二人の足元辺りに大きな黒い(もや)が集まっている。

どうやらそこに憑代(よりしろ)がありそうだ。

俺は悪霊を斬りながら2人に話しかける。


「よっ!お前らは敵で良いのか?」


悔しそうな顔をしている狐耳の女性。

黒い作務衣を着た男性は無表情だ。


「返事が無いなら敵と見做す。それで良いな」


俺の言葉に黒い作務衣の男が口を開く。


「あなたは力徳ナギですね。あなたとやり合うつもりはこちらにはありません、私達を攻撃するのは止めてください」


「そう言われても、隣りの女性はそんな感じの顔をしてないけどな。ヤル気満々の顔じゃないか」


狐耳の女性が怒鳴り声を上げる


「うるさい!何でお前がここにくるんだ!何で私達の邪魔をする!」


「邪魔と言われても困るなぁ。お前達こそ何でこんな悪霊を増やす事をしているんだよ」


「お前のような馬鹿に言ってもしょうがないだろ!」


尼義(あまぎ)香澄が言っていた狐神界をひっくり返すって事か?そんな事してどうするんだ」


「狐神界で(しいた)げられてきた我ら黒狐の怨念を晴らすためだ!崇高な存在である九尾(きゅうび)()の元、狐神界を治めるのだ!」


九尾(きゅうび)()

あの有名な妖狐か?

よく分からんが、あれはヤバい存在じゃないのか?


「まぁお前らはお前らで頑張ってくれ。俺は俺で自分の役割をこなすよ。敵対するつもりがあるなら斬るけど、どうする?」


俺は周囲の悪霊を斬りながら2人に確認する。

歯噛みする狐耳の女性。

怒りで震えているみたいだ。

黒い作務衣の男が狐耳の女性を抑える。


「ハヤセ様、ここは諦めましょう。力徳家の眷属には勝てる道理がありません」


「隆一!お前は何を言っている!お前は上信(じょうしん)家の跡取りの眷属だろ!力徳家を前にして背中を見せて逃げる気か!」


「はい、その通りです。私は勝ち目の無い戦いはしない主義なんですよ。ハヤセ様も一時(いっとき)の感情で大局を見誤らないようにお願い致します」


どうやら二人の話は終了したようだ。

俺は隆一と呼ばれた男性に話しかける。


「隆一って言うのかお前は。俺の邪魔をする気がないなら少し下がっていてくれるかな。お前達の足元にある憑代を浄化する予定だからな」


隆一はハヤセの手を取り、黒い(もや)が集まっているところから離れる。

靄の周りの悪霊を俺は斬り裂いていく。


悪霊が少なくなったところでシロちゃんが祝詞(のりと)を唱え始めた。

30秒ほどで黒い靄が晴れる。

黒い靄が出ていた地面は土が盛り上がっている。

10㎝ほど掘り返すと5㎝ほどの玉が出てきた。

以前の騒がせ山と一緒だ。

これが憑代なんだろう。

俺は離れたところに移動した二人に向き直る。


「お前らは野狐の里のものか?」


隆一と呼ばれていた男が話し始める。


「改めて自己紹介させてもらいます。こちらが黒狐のハヤセ、私がその眷属の上信(じょうしん)隆一です。野狐の里にお世話になっております」


「もう俺の事は知ってるみたいだな。俺は力徳ナギだ。こっちが地狐のシロ。神界管理局の依頼を受けてここに来た」


「こんな時になんですが、ナギさん、野狐の里を助けてくれませんか?」


「そう言われてもなぁ。俺にそんな義理はないよ。それに何をどうすれば良いんだ?」


「今、狐神界では黒狐が虐げられています。それを変えたいのです。いくら神格管理局に言っても話すら聞いてくれませんから」


「俺には良く分からんな。そのようになった経緯も知らないから。ただ野狐の里のこんなやり方は間違っているとは思うけどな」


「それは分かっています。しかし他に方法が無いんです。もしナギさんの気が変わったら野狐の里に来てください。歓迎しますから。それでは今日は失礼いたします」


ハヤセと隆一は去っていった。

その後、俺とシロちゃんは残っている悪霊を退治するために煽て山を駆け回った。

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