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月光の狐  作者: 葉暮銀


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シロの視点(任務の受諾)

今日は朝から神格管理局に顔を出しに行った。

地狐になって細かい登録があったからだ。

書類を確認しながらサインをしていく。


なんか受付のほうが騒ついている。

その騒めきがドンドンと近づいてくる。

何事かと顔を上げると、そこには神格管理局の局長代理のサクラさんと、その眷属の久礼(くれい)秀一さんがいた。

サクラさんは私を探していたようだ。


「地狐のシロ、ちょっと用事があるんだけど良いかしら?」


選択の無い選択肢だ。

私は頷いて席を立ち、サクラさんの後ろについて行く。

応接室に入るとサクラさんは溜め息をついた。


「シロ、今日は眷属の力徳ナギはいないのかしら?」


「今日は物質界で鍛錬をしています」


「分かったわ。それでちょっとマズい事が起きそうなのよ」


「マズい事?」


「馬鹿な受付の赤狐(せきこ)が娘のカナデに情報を漏らしたの。貴女たちが富士の樹海の洞妖窟で霊片を集めてきた情報をね。それが昨日の午前中。今日の朝からカナデと眷属の直人がいないのよ。カナデの事だから洞妖窟にきっと行ってるわ」


サクラさんの横に座っていた秀一さんが話を挟む。


「我々、久礼(くれい)家の刀技では土蜘蛛の攻撃には相性が悪い。糸で攻められるとそれを断ち切る事が難しい。カナデ様の狐火があるといっても二人分の糸を断ち切っていく事は厳しい。殲滅力も力徳家のほうが上だからな。結局は物量にやられてしまう」


サクラさんが深刻な顔になる。


「今、神格管理局で動かせる人材で、富士の樹海の土蜘蛛の洞妖窟で戦えるのはシロ達しかいないのよ。獲得神力の特典を付けるから富士の樹海の洞妖窟に行ってカナデ達を連れ帰ってほしいの」


私は逡巡する。

あのカナデが大人しく私の言う事を聞くだろうか?

反発しかされないような気がする。


「サクラさん、この依頼は受けたいとは思うのですが、私には向いていないと思います。カナデさんがおとなしく私の言う事を聞くはずが無いからです」


私の言葉にサクラさんは巻物を取り出してくる。

その巻物には辞令が書かれていた。


「こちらは特例で出した神格管理局の辞令です。シロ、貴女をチームの隊長とする辞令です。今のところ隊員は一人のみでカナデです。これで貴女がカナデに命令を下す事ができるようになります。あくまで特例で出した辞令のため、カナデを保護したらチームは解散になります」


私は唖然としてしまった。

カナデさんを保護するためだけの辞令じゃないか。

こんな横紙破り……。

サクラさんが私をじっと見つめている。

その目は母親が娘を案じ、できる事をしようと決意した目だった。


「わかりました。その任務お受けいたします。何か注意点はございませんか?」


「野狐の里の動きが少し気になるのよ。情報を漏らした赤狐(せきこ)は野狐の里に逃走したみたい。一応、注意はしておいて」


「了解しました。早速、富士の樹海の洞妖窟に向かいます」


私はソファから立ち上がり物質界に向かった。

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