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月光の狐  作者: 葉暮銀
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16年ぶりの再会

 仙森市にある古い日本家屋の一戸建て。祖父さんが三年前に亡くなって俺が引き継いだ家だ。


 この家の庭には古い祠がある。お稲荷様を祀っている。


 亡くなった祖父さんが生前言っていた。

 稲荷神社の神はお狐様と勘違いしている人が多いが通常、(まつ)っている神は、五穀を司るとされる()()()()(たまの)(おお)(かみ)である。

 お狐様はこの神様の眷属として祀られているのがほとんどだが、中にはお狐様自体を神として祀る神社もある。

 この庭の祠もこのタイプだ。またお狐様はほとんどが白狐(びゃっこ)であると。


 この話を小さい時から聞いていた。本当かなって思っていた。

 だって庭の祠には金色の狐が住んでいたからだ。


 俺が今4歳になると大人の金色の狐の他に子供の白い狐も現れた。子供の白い狐は人間の女の子の姿になり、よく俺と遊んでいた。


 小学生に入り、父の転勤で祖父の家に行かなくなった

 俺が小学四年生の時、両親が交通事故で亡くなり祖父に引き取られた。

 その時には狐は見えなくなっていた。

 狐は子供の時にみる幻だったのだろうか?


 両親がいなくなり泣いてばかりいる俺に祖父は剣術を教えた。祖父は古くから伝わる剣術の継承者だった。弟子はいなかったため俺が最後の弟子だが。


 中学に上がると俺はヤンチャになっていた。

 若気の至りなんだろう。そんな俺を見て、祖父は特に何も言わなかった。

 所詮、中学生のやる事は子供の遊びなんだろう。たかが知れている。


 高校に入ると酒と女を覚えた。付き合っていた大学生の女性の部屋に入り浸る毎日だった。

 高二の冬の年末に1週間ぶりに家に帰った。付き合っていた女性が実家に帰省したからだ。


 昼から降り出した雪が夕方に降り止み、20㎝ほど積もった。

 深夜、トイレに起きた。月の明かりがとても眩しい夜だった。

 家の庭を見ると白い狐がいた。

 俺の時間が一瞬止まった。子供の頃の思い出がありありと蘇る。

 月光を浴びて、白い狐は白い雪の上に凛とした姿でいる。


 俺は裸足で庭に出て白い狐に近寄る。

 白い狐は慌てたように逃げていく。追っかけたが見失った。

 見失ったところには古い祠が佇んでいた。

 冷たくなった足に俺は心まで寒くなっていた。


 その日から俺は変わった。

 付き合っていた大学生の女性と別れた。毎日、祖父と朝の鍛錬をし、学校にもしっかり登校するようになった。規則正しい生活と勉強、まるで人が変わったような生活になる。

 そのおかげか、大学は二流ではあるが国立大学に入ることができた。


 大学二年の時に祖父が亡くなった。

 朝の鍛錬に起きて来ない祖父を見に行くと布団の中で冷たくなっていた。

 通夜の日、庭に白い狐をみた。

 祖父を見送りに来たのだろうか?


 俺は大学を無事卒業し、地元の企業に就職した。

 仕事にも慣れ始めた三ヶ月目、家に帰宅すると居間の明かりが付いていた。

 本来なら怪しむべきところだが、俺は気が()いて玄関を上がり、居間に行く。

 居間には巫女服の少女が正座していた。


 俺は気安く話しかける。


「久しぶりだな、シロちゃん!」


 やっと会う事ができた。

 16年ぶりに会う初恋の人との再会だった。

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