痩せ我慢
夜景スポットから車に乗って移動する。
俺の頭の中はパニックになっていた。
房中術って簡単に言ってしまえば男女の営みだよな。
俺と房中術を試すってそういう事だよな。
初恋の人を抱ける?
そんな事があるの?
頭からドパミンがガバガバ出ている感じだ。
ふと、先程言われたシロちゃんの言葉が頭に甦る。
頭から冷水を浴びせられた感じだ。
一瞬で俺は冷静になった。
車を道路の脇に止めてシロちゃんを見つめる。
こちらを見つめ返すシロちゃん。
やっぱりキチンとしないとダメだ。
「シロちゃん、俺はシロちゃんが好きだ。俺の初恋の女性はシロちゃんなんだ。今でもシロちゃんを魅力的に感じている。だからこそこんな形は嫌なんだ。房中術を試すためだけにシロちゃんは抱けないよ。なんて言えば良いのかな。シロちゃんが純粋な心で俺に抱かれたいと思ってくれるまではそんな事はできないよ」
口を噤むシロちゃん。
俺はシロちゃんの言葉を根気良く待った。
考えが纏まったようでシロちゃんが話し始める。
「ごめんなさい。ナギの言う通りね。私はナギを好ましく思っている。だけどこの気持ちが恋なのかはまだ分かっていないと思う。房中術を試すためにそのような行為はおかしいわね。先程の私の言葉は忘れてくれると嬉しいかな」
「了解だ、シロちゃん。結構痩せ我慢しているんだけどね。それにしてもどうしたの?シロちゃんらしくなかったけど?」
「ナラクさんに自分の眷属は身も心も繋ぎ止めて置くように言われてきたの。そうしないとナギがまた他の妖狐の房中術に引っかかるって」
ナラクさんの入れ知恵か。
香澄の房中術にかかってしまった俺としてはナラクさんを、なんとも怒りにくい。
「俺のせいでシロちゃんを心配させてしまっていたんだね。俺は確かに前に付き合っていた女性に房中術をかけられた経験があるみたいだ。でも安心して欲しい。俺には揺るぎない想いがある事を理解したから。シロちゃん以外の房中術にはもうかからないよ」
俺が笑顔を見せるとシロちゃんも笑顔になってくれた。
「シロちゃん、慌てる事はないよ。俺たちの関係は、俺たちのペースでゆっくりやっていこう」
そう言って俺は車を発進させた。
帰宅してすぐにナラクさんを問い詰めた。
ナラクさんに俺の言葉は柳に風だ。
「なんじゃ、ナギはせっかく段取りを整えてやったのにヘタレなんじゃな。主人と眷属で房中術を使うと体内の気の調和が取れて、とても有効なんじゃぞ。ナギの鍛錬にも役に立つのにのぉ」
「そういう問題じゃないんです。強くなるためにそんな事はできませんよ」
「ナギは案外、初心なんじゃの。童貞じゃあるまいし。ナギがロマンティストとは、かかかかか!」
「笑い事じゃないんですよ!もうシロちゃんを焚き付けるのは止めてくださいね!」
「分かった、分かった。シロのお誘いを断るお前が、他の妖狐の房中術にかかるわけが無いからな」
お騒がせな空狐のナラクさんだった。
キリが良いところでしたので短めの文になりました。
ご了承の程よろしくお願いします。
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