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月光の狐  作者: 葉暮銀


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空狐のナラクさん

珍客が帰り、俺は家の掃除を始めた。

応接室や居間、台所と結構汚れている。

最後にシロちゃんのお母さんとシロちゃんの部屋を掃除する。


八畳間の部屋。

箪笥が置いてある。

俺がシロちゃんとまた会えると思ったのは、この箪笥があったからだ。

中には特殊な巫女装束が入っている。

袴のお尻の部分に尻尾用の穴があいている。

こんなもの普通の人にはいらないもんな。


掃除が終わり少しゆっくりした。

夕方になり鍛錬をする。

会社を辞めてから夕方にも鍛錬をしようと思っていた。


朝と同じように道着に着替え道場で正座をして呼吸法を一つ一つ確認していく。

毎日の積み重ねが大切だ。

その後、刀技の型を丁寧に行い鍛錬終了になる。


晩御飯はカレーを作って食べる。

カレーに失敗はないからな。

食卓に一人で座っていると少し寂しさを感じる。

祖父が亡くなってから、ずっと一人で食べていたが、シロちゃんがいる事に慣れていたのだろう。

揺れる尻尾を思い出しながはカレーを口に運んだ。


昨晩は酔っ払って、そのままベッドに入り寝てしまったが、今晩は素面(しらふ)だ。

ここでもシロちゃんがいない事を思い知らされる。

早くシロちゃんに会いたいと思いながら目を閉じた。



月曜日の朝。

普通の会社員は憂鬱な気持ちと重い身体を引きずり仕事に向かう。

無職の俺は朝から鍛錬だ。


朝ご飯を食べ終わるとやる事がなくなる。

8月に入り日差しがキツい。

外に出るのが命懸けの気温。

こんな日は家で読書でもと思い、前に読んだ小説を読み始める。

作家は既に亡くなっている小説だ。

ふと、俺が死んだら何か残せるのかと思う。

この世に生を受けて来て後世に何か残せる事は幸せなんだろうな。


そんな事を考えていたら来客のチャイムがなる。

昨日は珍客が来たが、今日は何かなっと思い玄関を開ける。

昨日よりも驚愕した。


目の前にいた女性は巫女装束を着崩した格好だ。わざわざ両肩を出している。

その為胸の谷間が見えてしまう。

上は白色、下は紫色の袴。

力徳(りきとく)家が用意する巫女装束と色が一緒だ。

胸の谷間に意識がいってしまった。

顔を見ると20代後半だ。

切長の目に鼻筋が通っている。

はっきりいって美人だ。

妖艶な雰囲気がある。

髪の色は黒色。

肌の色が透き通るように白い。

そう、透き通るように……。って本当に透き通っている!?

唖然として言葉が出ない俺に、その女性は言葉をかけてくる。


「お主が力徳(りきとく)ナギか。妾はナラク。お主の研修をやりにきたぞ」


少し落ち着いてきた。

敵ではないようだ。

この人が研修担当者か。


力徳(りきとく)ナギです。ナラクさん、よろしくお願いします」


「うむ、礼儀正しくて良いのぉ。若者はそうあるべきじゃな」


「ナラクさん、すいません。身体が透けているのですが?」


「妾は空狐(くうこ)だからな。実体はあって、実体が無い。全にして無。無にして全じゃ」


何を言ってるのか、全然分からない事だけが分かる。


「一度、応接室にお上がりください。今日は暑いですから」


「ほう、今日は暑いのか。全くわからなかったぞ。どれお邪魔するかの」


そう言ってナラクさんは歩き始める。

ここでも驚きが出る。

全く歩く音がしない。

滑らかに地面を進んでいく。

ナラクさんを応接室に通して麦茶を出す。


「おぉ、わざわざ茶を出してくれて申し訳ないが妾は飲み物や食べ物はもういらないのじゃ」


ナラクさんは良い人そうだが得体がしれない。

警戒を解いて良いのか判断がつかない。

こちらの思惑を気にせずナラクさんは俺の顔を覗き込んできた。

妖艶な容姿のナラクさんの瞳に吸い込まれていく。

頭がクラクラしてくる。

意識が飛びそうだ。

その時、ナラクさんが俺の肩を掴んで揺らした。


「お主、房中(ぼうちゅう)術にかかっておるのぉ。まだ若いのにやるもんじゃなぁ。それとも若いからかかっておるのかな、かかかかか!」


房中術?なんじゃらホイ?


「房中術ってなんですか?それに俺がかかっているって言われても」


ナラクさんは俺の問いにニヤリと笑い答えてくれる。


「房中術とは男女の(いとな)みから体内の気を交り合わせて気の調和を図る術じゃ。通常は身体に良いものなのじゃが、使い方によっては毒になる。また相手を性の快楽に堕としこむこともできるな。お主は悪い房中術をかけられておるわ」


性の快楽に堕ちるって!?

マジでヤバいやつじゃないのか。


「その房中術は解けるのですか?」


「まぁ焦るでない。お主に残っている房中術の痕跡をみると結構前の房中術はお主自ら解いておるな。今かかっているのは最近のじゃな。何か心当たりはないのかえ」


最近の俺の女性関係っていったらシロちゃんと香澄くらいか。

以前にもかけられていたのなら香澄以外考えられないな。


「心当たりが1人います。それでこの房中術は解けるのですか?」


「うーん。自ら解くのが一番良いのだがな。外部から力を加えるのはあまり良くないのぉ。以前はどうやって解いたか覚えておるか?」


香澄と別れたきっかけは月光に凛としたシロちゃんを見て再び会いたいと思ったからだ。


「シロちゃんです。シロちゃんにもう一度会いたいと強く思いました」


「ほぉ!若いのぉ。お主はシロの眷属じゃな。主人と眷属の絆か。それを忘れなければ大丈夫。ただし、房中術に一度でもかかった経験があると性衝動が一時的に激しくなる時があるから注意せよ」


最近の性衝動は房中術が原因なのかな?

まぁ注意はしないとな。

香澄には会わないようにしたほうが良いのか?

何で房中術なんて使えるんだよ。


「ご忠告ありがとうございます。しっかりと注意していきます。それでは研修とは何をすればよろしいでしょうか?」


「まぁゆっくりやるぞ。妾は源治と仲が良かったんじゃ。孫のお前を立派にしてやるから安心するのじゃ」


ナラクさんは大声で笑い始めた。

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