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月光の狐  作者: 葉暮銀


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性的衝動

周囲が明るくなっている。

今日も良い天気だ。

シロちゃんは既に起きていて巫女装束を着ている。

嘘の様に身体が軽い。

筋肉痛に全くなっていない。

シロちゃんが俺の顔を見ながら微笑む。


「どう、ナギ。疲れは残っていない?私の回復術は効いたかな?」


「シロちゃんのおかげか。驚くくらいに疲れが残っていないね。これなら今日も蜘蛛を斬りまくれそうだよ」


「あぁ、今日も蜘蛛三昧かぁ。ここは土蜘蛛の巣みたいだもんね」


あれが妖怪の土蜘蛛なんだ。

土蜘蛛の相手が嫌そうなシロちゃんが顔を顰める。


「え、シロちゃん、土蜘蛛がいるって知ってたんじゃないの?」


「富士の樹海の(どう)(よう)(くつ)は何種類かあって、いろいろなものが封印されているのよ。封印の痕跡を感じたのがここだっただけね」


「ふーん。そんなにいろいろ封印されているんだ。結構物騒なんだね」


「昔は今と違って神界と物質界、あ、物質界とはこの世界の事ね。それが密接に繋がっていたからねぇ」


朝ご飯に菓子パンとコーヒー牛乳で済ませて装備の点検をする。

シロちゃんの腰の神袋を確認後して口を開いた。


「まずは昼頃まで頑張ってみますか。体力を見ながらだね。シロちゃんは土蜘蛛の糸には狐火を使って、地面に霊片が溜まってきたら神袋に回収ね」


神袋は特殊な作りになっており、純粋な物質である霊片を神界の自分の社に移す事ができる。

まさに霊片専用の袋である。


シロちゃんが祝詞(のりと)を唱え始めた。

ゆっくりと空間が歪み、俺たちは再び富士の樹海の(どう)(よう)(くつ)に入っていた。


さすがに二度目となると焦らない。目の前にいる土蜘蛛を斬り倒していく。

昨日よりは土蜘蛛の数が減ってる?

それでも多いか。

リズムを崩さないように刀を振るう。

シロちゃんも安定して土蜘蛛を倒せている。

土蜘蛛の攻撃手段が噛み付きと糸くらいだからか。

改めて土蜘蛛の姿を確認する。

大きさが身体が20㎝で足を入れると80㎝。

全身の色は黒系統だ。

身体の背の部分に赤い紋様がある。

8つの目が2列に並んでいて、なかなか不気味な姿だ。


土蜘蛛の歩く音は全くしない。

俺とシロちゃんの息遣いが(どう)(よう)(くつ)に響いている。

その息遣いがリズムを醸し出し混じり合う。

二人が一人、一人が二人。

頭の中が透明になっていく。

ただ目の前のものを斬り倒していく。

身体が自然に動いていく。

熱い衝動と冷静な思考。

いや思考をしていない。

だんだんと熱い衝動が強くなっていく。

気がつくと俺は性的衝動を強く感じていた。

シロちゃんとの繋がりが性交渉より気持ち良い。

俺は狂っているのだろうか?

これはシロちゃんの眷属になっているから?

それともリズムが同調しているせいか?

または土蜘蛛を倒す衝動に喜びを感じているのか?

俺は答えの出ないまま、ただ刀を振るっていた。


「ナギ、そろそろ一回外に出ようか?」


シロちゃんの言葉に通常の思考が戻ってくる。

リズムが狂い、霊片を踏み付けてしまいフラついてしまう。

慌てて体勢を立て直してシロちゃんに返事をする。


「了解、一回外に出て食事にしよう。霊片は粗方拾ったかな?」


「大丈夫よ。それじゃナギよろしくね」


シロちゃんの言葉に応えるように刀に気を流す。

力徳(りきとく)(りゅう)刀技(とうぎ)光刃(こうじん)(ざん)を放ち、近くの土蜘蛛を退ける。

余裕を持って外に出る。


外に出て一息付くとシロちゃんが両腕を上げて伸びをする。

巫女装束を着ているシロちゃんの胸が強調され、落ち着いてきていた性的衝動がぶり返す。

リュックからペットボトルを出し、水を飲んで落ち着かせた。


優先順位を間違えるな。

まずは行方不明のシロちゃんのお母さんだ。

その為にシロちゃんは神格を上げる事を頑張っているんだ。

眷属の俺がフラついていてどうする。

時間を確認すると午前10時を回ったところだ。やっぱり連続戦闘時間は3時間くらいが限度かな。


これから食べる昼食、今日の夕飯、明日の朝食で食料が尽きる。

土蜘蛛の討伐は今日の午後と明日の午前10時くらいまでだ。

どれ、今日の午後は2時から5時くらいか。

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