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月光の狐  作者: 葉暮銀


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富士の樹海の洞妖窟

(どう)(よう)(くつ)に入ってすぐに目に飛び込んできたのは大量の蜘蛛(くも)

大きさが身体が20㎝ほど、足を入れると80㎝にはなるだろうか。

見渡す限り蜘蛛だらけ。

何匹いるのかわからないくらいだ。

慌てて刀で斬り倒していく。

シロちゃんが少しパニックになっている。


「シロちゃん、落ち着け!良く見て刀振っていけ!」


シロちゃんに一言告げ、まずは自分の周りとシロちゃんの周りの蜘蛛を斬り倒していく。

今のところ蜘蛛からの攻撃は無い。

ここの蜘蛛は斬り倒すと霊片に変わっていく。

いつも倒している低級の悪霊の霊片より大きめだ。

なるほど、これは効率が良さそうだ。


シロちゃんも落ち着いてきたようで丁寧に蜘蛛を斬りつけている。

数十匹倒したところで蜘蛛が少し距離を取ってきた。

蜘蛛は俺の前方と右側から糸を飛ばしてくる。

刀に糸が絡まった。

斬り払おうとしたが弾力性に富んでいて上手くいかない。

そのまま右手にも蜘蛛の糸が絡む。


ヤバいと思い、即座に刀に気を流す。

光り輝く神刀【日日(ひび)(つき)】。

あっさりと蜘蛛の糸を切り裂いた。

俺の左側にいたシロちゃんは蜘蛛の糸で全身を絡め取られていた。

焦っているシロちゃんに声をかける。


「シロちゃん、狐火!」


ハッとしたシロちゃんが狐火を全身に纏う。

蜘蛛の糸は簡単に焼け切れる。

これなら大丈夫だな。

そう判断して蜘蛛を次から次へと斬り倒していく。

シロちゃんも蜘蛛の糸は狐火でやり過ごして安定した戦いをしている。


あとは体力がどこまで持つかが勝負か。

さすがにこの蜘蛛の量を全部倒し切るのは一回では無理だ。

途中で撤退しないといけない。

霊片が足下に溜まってきたのでシロちゃんは腰に付けてる神袋に霊片を片っ端から入れていく。

俺は長期戦を考え、気を使わず蜘蛛と戦っていった。


三時間は刀を振り続けただろうか?さすがにお腹が空いてきた。喉も乾く。これは一度撤退だな。


「シロちゃん、一回外に出て休もう。キリがないや」


「了解!落ちている霊片を集めたら一度外に出ましょう」


シロちゃんが霊片を拾い終えたところで俺は神刀に気を入れる。

刀が光り刃が1.5倍程度に伸びる。

横薙ぎに刀を振り3メートルほどの光る刃を飛ばす。

力徳(りきとく)(りゅう)刀技(とうぎ)光刃(こうじん)(ざん)を放ち、その隙に結界を抜け外に出た。


外に出ると満天の星空だった。

7月の末のため寒くはない。軽く吹く風が心地良い。

置いておいたリュックから食料と水を取り出す。

いつも悪霊退治をしている神界だと、現実世界に戻ると疲れは無くなるのだが、(どう)(よう)(くつ)は違うようだ。

腕がパンパンに張っている。刀を三時間も振ればそうなる。

シロちゃんも疲れているようだ。


「シロちゃん、お疲れ。刀もバッチリ使えていたね」


「もう腕が疲れちゃった。続きは寝てからね。それより今日の晩御飯は何?」


「今日は大したもんは無いよ。缶詰めとおにぎり。こんなに蜘蛛がいるとは思わなかったよ。長期戦になりそうだね」


「こっちの世界で人型でいると神力を使っちゃうからご飯を食べたら狐にもどるわね」


「了解。ご飯を食べたら寝袋を出すから休むと良いよ。食事と水の量を考えると明後日には一度戻る必要がありそうだね」


満天の星空の下で二人で食べる食事はとても美味しかった。

誰と何処で食べるかで、粗食でもご馳走になるんだな。


食事の後、シロちゃんは狐の姿に戻った。

寝袋を二つ出したがシロちゃんは俺の寝袋に入ってきた。

唯一の肉親である母親が行方知らずだ。

シロちゃんは不安で寂しいのだろうか?

そのまま俺は狐を抱きしめながら寝た。

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