プロローグ
この世界では、十三歳を迎えると、神からの祝福か、あるいは超自然的な存在の戯れによるものか、それまでできなかった何らかの技術を一つ習得する。人々はそれをスキルと呼び、スキルを取得できる十三歳を転換期に、スキルを活かせる職業に就くようになった。
スキルは大きく分けて三つに分類され、コップ一杯の水が出せる、ろうそくに火をともせるといった小規模な魔法や、四桁の掛け算でも一瞬で行える、一時間の睡眠で七時間の睡眠と同程度の効果が得られるといった実生活に役立つスキルを『生活スキル』、剣術や槍術などの武器の扱いや生物に対する殺傷能力のある魔法が使えるといったモンスターを討伐してお金を稼ぐ冒険者と呼ばれる職業に有用なスキルを『冒険者スキル』、大道芸や娯楽、趣味で使えそうなスキルを『娯楽スキル』とそれぞれ呼称した。
アロンが取得できたスキルは、『他人を成長させる』スキルであった。いや、厳密には定かではない。
というのも、取得できたスキルは、十三歳を迎える夜に見る夢において『取得できたスキルを使う自分』という抽象的なイメージにより認識できる。先述の生活スキルであれば、魔法を使ってコップに水を入れ、それを飲んでいるという極めて地味な夢を見るし、剣術のスキルであれば、華麗に剣を操る自分の夢を見る。スキルについて研究する専門家の中では、この夢は一種の予知夢なのではないかといった説を挙げている者もいる。
アロンが見た夢は、スキルで困っていそうな人に助言をして助けているという夢であった。助言を受けた人は、見るからに力を増し、スキルも強力なものになっていた。そのことから、アロンは自らのスキルを『他人を成長させる』スキルであると当たりをつけ、目が覚めるとすぐに両親や友人に対してスキルを使用し効果を確かめた。
幾度かのスキルの使用により、スキルに関しては、対象に意識を向け、脳内にトリガーをイメージしてそれを引くと使用できること、冒険者スキルに分類されるスキルを有している人物に対して効果があること、感覚としてこのスキルは、十三回しか使えないということが分かった。後に、この十三回というストックは、翌年の誕生日に回復することが分かり、また、数回ストックを残して誕生日を迎えてもストックが超過する(十四回以上使用できる)という事象は、二一を迎える現時点では確認できなかった。
また例外として、一部『生活スキル』や『娯楽スキル』を持つ人物に対しても効果がある場合や、冒険者スキルを持つ人物にスキルを使用しても効果がない場合があった。冒険者スキルでないスキルに効果があった事象は、自らのスキルをうまく使いこなせていなかったか、あるいは抽象的な夢のイメージにより自らのスキルを『生活スキル』、『趣味スキル』としてご認識していたのだと考えられる。十三の夜の夢にて、スキルを使う自分を見て効果を推測しろ、と言われているような現状において無理もない話である。そして、冒険者スキルであっても効果がない事象は、冒険者スキルと分類されていたが実はそうではなかったか、スキルには成長する余地があり、その人のスキルはすでに成長限界であったか、あるいはまだ成長する時期ではなかったのか、とアロンのスキル内容と同様に定かではない。
――以上を簡潔にまとめると、
「私、アロン=ベイル、ホッグホッグギルド所属の二一歳。『他人を成長させる』スキルを持っていますが、うまく扱えておりません」
アロン=ベイル……主人公。『他人を成長させる』スキルを持っている。
名前はTRPG 名前作成ってサイトで、「英語名」「男性」でなんか凡って感じの名前が出るまでポチポチ生成していたので、特に意味はなし。
ホッグホッグギルド……首都にあるアロンが所属しているギルドの本部。hogehogeをグーグルさんに読ませたらネイティブっぽい感じで「ホグホッグ」って言ってた(聞こえた)ので、この名前にしました。
異世界だから世界観の説明しなきゃな⇒三人称視点の方がいいかな、ということで、三人称視点で書いてるつもりなのですが、読書経験も浅く、「小説ってこうやって書くのか」みたいなことも考えずに、ただただ読んでいたことしかなかったので、「ここは日本語的におかしいよ」みたいなところがありましたら、ご指摘いただけると幸いです。
三人称視点の場合、冒頭でコイツが主人公って分かりやすくするにはどうすればいいのでしょうか。例えば、アロンは執務室の窓から外をぼんやりと眺めていた。みたいに始まれば分かりやすいのかな。あと一人称でも俺が主人公の~みたいな感じで始まるのもあんまり好きじゃないんですよね。