04-First Mission
理人&炎:
「……!!」
?:
「ふふふ、な〜んてね」
銃口からは
クラッカーのような音と
小さな鳩が飛び出た。
銃弾じゃない。
炎:「……」
?:「あれ?
もしかして怒ってる?」
理人:
「君は‥‥」
?:
「ん?ああ、
自己紹介が遅れたね。
俺の名前は、
《沼津 権兵衛門》
(ぬまづごんざえもん)
っていうんだ。
よろしく!」
握手を求めてきた!
会ったの
数十秒前なのに!
理人:
「よ、よろしく‥」
沼津:
「……ねえ
違和感覚えない?」
理人:
「違和感?何の?」
沼津:
「名前だよ!
な・ま・えっ!!」
理人:
「え、沼津権兵衛門…」
沼津?:
「そんな古風な名前の
キャラクターがこんな
幾何学的正体不明小説に
出てくると思う!?」
理人:
「んーたしかに‥」
炎:
「そろそろ名前作りに
疲れたのかと思ってた」
沼津?:
「なるかいっ!!
…コホン。
俺の本当の名前は、
《あああ あ》
(ああああ)だぁ!!」
理人:「……」
炎:「………は?」
イタい!!
ボケに対するツッコミで
《…は?》なんていう
反応はキツい!!
せめてもうちょっと
台詞長くしないとね。
あああ?:
「……本当は」
炎:
「本当も嘘もあるか。
さっさと帰れ、
クロマニョン原人」
最終的に
原人扱いしたうえで
拒絶反応起こした!?
あああ?:
「ぅ…《胡蝶 不知火》
(こちょうしらぬい)…
これは本当!
これは本当だから!!」
炎:
「はっきり言って
どーでもいいから、
何しにきたんだお前は」
必死の訴えに対して
台詞は長くなったけど
《どーでもいい》は
まだキツいよ。
不知火:
「理由か……
まあ簡単に言うと
君たちを助けるため…
…かな?」
理人:
「助けるって何から?」
不知火:
「それはもちろん
日常のことから
非日常のことまで」
炎:「……」
理人:「……」
不知火:
「……よろしくね」
何だろう、感じる。
この人から出ている
限りない想いを。
彼は僕たちを助けて
どうする気だ?
何のために、
僕と炎だけを‥‥
‖
‖
《First Mission》
‖
‖
翌朝午前8:15分
理人:
「直弥!雅紀!
起きてよ早く!!」
床には土下座の姿勢で
寝ている直弥と、
ネックスプリングでも
やるかのような姿勢で
寝ている雅紀がいた。
直弥:
「ん…うわぁあ!
あーよく寝た」
理人:
「直弥!もう時間が‥
…ってああもう!!」
二度寝の臨戦態勢に
突入しようとしていた
直弥を布団から
引っ剥がす。
直弥:
「…ったく。
どうした理人?」
やっと起きたか‥
理人:
「だからね、
もう時間が‥」
直弥:
「そんなに
杏が入ってないどら焼き
を食べたいのかい?」
理人:「……はい?」
まだ寝ぼけてるのか‥
直弥:
「まだ杏が
入ってないどら焼きを
食べたいのかい。
理人も好きだな〜‥」
!!
僕が好きなの!?
全然そんな
おいしくなさそうな
どら焼き
欲しくないからね!?
直弥:
「…ったく。
たまには杏の入っている
どら焼きのことも
考えてやれよ‥」
考える考えない
じゃなくて
それが普通じゃないの?
直弥:
「本当に理人は
味噌汁オレンジが
好きだな〜」
好きじゃないし
ループしてるよね!?
直弥:
「まだ味噌汁オレ‥」
理人:
「待った待った待った!!
それじゃあ一生
終わらないからさ。
雅紀も早く!!」
目を雅紀に遣ると
そこに雅紀はいなく、
冷蔵庫が開いていた。
雅紀:
「うおおーーっ!!
元気100倍!
マッスル
ライフスライサー!!」
また何かよくわからない
飲み物を作ってるけど、
そのネーミング、
命すり減らしてるから。
理人:
「えーと…起きた?」
雅紀:
「もちろんだぜ!
今日も朝から理人と
目一杯遊ぶため
だからなぁぁー!!」
まず黙ろう。うるさい。
でもこれは使えそうだ。
理人:
「雅紀、それを直弥にも
飲ませてあげて」
雅紀:
「お、ついに直弥も
己の体について
不満が出てくる年頃か」
そんなときは未来永劫
来ない気がする。
雅紀:
「待ってろよ、
すぐ飲ましてやる‥‥」
そう言うと雅紀は
直弥の顎を上げて、
口の中にあの液体を
一気に流し込んだ!
………ガクッ
気絶したっ!?
やっぱりあの名前は……
とそんなことより
どうしよう、これ。
雅紀:
「まだまだだな直弥も。
理人ならいけるよな?」
理人:
「いや、
僕に勧めないでよ‥」
どうしょう…
もう時間がない。
でも直弥を背負っては…
でも置いていけないし…
その時玄関から
見慣れた巨体が。
要:
「理人、
まだそんな馬鹿に
付き合っているのか。
遅刻ギリギリだぞ」
理人:
「要!
ちょうどいいところに」
要:「ん?なんだ?」
理人:
「ちょっと
直弥運ぶの手伝って
ほしいんだけど‥」
要は快くしたように、
要:
「理人の
頼みならいいだろう。
だが理人は先に独りで
行っててくれ」
理人:
「え、でも
それは悪いよ」
要:「気にするな!
俺たち仲間だろう?」
笑い飛ばしながら
僕を半強制的に学校へ
送り出す要。
その後、部屋から
呻き声が聞こえたとか、
げっそりした要を見た
とか、噂は定かではない
Ι
Ι
ヴェル:「う〜〜‥」
教室に入るとヴェルが
後ろの黒板前で
唸るように
立ちすくんでいた。
理人:
「おはよう、ヴェル。
何してるの?」
ヴェル:
「あ、リヒトさん!
おはようございますっ」
いつものように元気よく
礼儀正しく挨拶をする。
日本人顔負けの笑顔だ。
理人:
「うん。
それでどうかしたの?」
在夢:
「そこからは
私が説明しましょ〜」
どこからともなく
現れるところは
舞風さん譲りか…
というかヴェルはまだ
何も説明してないけど?
在夢:
「結構前にね、
直弥さんと理人君が
いない間にある話が
あったんですよ。
それがこのぉぉー!!」
バンッ、と強く壁を叩いて強調する。
一瞬涙ぐんだ
気もするけど‥
理人:
「寮生募集?」
在夢:
「そうっ!!
実はこのヴェル皇帝は
ルームメートが
いないのですっ!」
ヴェル:
「そんな大々的に
言われるとひたすら
物悲しいんですが‥」
理人:
「あ、だから書き込みが
ないか立ってたのか」
在夢:「そうぅぅ!!」
なるほど、合点はいった
何故在夢さんが
絡んでくるのかは
知らないけど。
理人:
「僕がなってもいいけど
寮法で禁止
されてるからな〜
在夢さんとかはどう?」
在夢:「んーー」
長く考え込む。
何か問題でも
あるんだろうか……
あるとは思えないが。
在夢:
「ごめん、私はムリ!
私のルームメートが
私を必要と
してるんだよ」
在夢さんが必要?
理人:
「えっと…
それは何故また?」
返答は
驚くべきものだった!
在夢:
「たしか…
在夢がいてくれれば
それだけで執行部への
好感度UPで、
あとあと楽になるとかぁ
責任を私に押しつける
ことができるとか…
…意味はよく
わかんないけど」
わからないんだ…
まあそれが
幸いしてるから
今が保てるんだろうけど
理人:
「よし!
なら今日はヴェルの
ルームメートを探そう」
在夢:
「楽しみにしてね、
魔獣ヴェル皇帝っ!」
ヴェル:
「ありがとう
ございますっ……
ところでどうして
皇帝なんですか?」