21-欠ける一番星
直弥:
「お前は俺たちを
見捨てなきゃいけない!
なのにお前はまた!!!」
理人:
「ごめん、直弥。
僕はみんなを
見捨てることなんて
絶対に無理…だ!」
倒れている直弥を
力の限り担ぎ上げる。
諦めたりしない、
もし諦めたら
僕は自分を殺す。
直弥:
「理人……バカヤロウ」
理人:
「うん、大馬鹿だよ」
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《欠ける一番星》
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辺り一面明るい…
というか燃えているから
通路がわかりやすい。
見取り図によれば
もう少しで
非常口に出るはず‥
理人:
「!」
やっと出れた。
空に光る星々が
宿の炎をかき消すように
光り輝いていた。
炎:
「理人ぉぉーー!!」
待ちきれなかったのか
炎が出口付近まで
走り寄ってくる。
直弥:
「ふ……っ!!炎!!!!」
直弥がいきなり
炎に向かって走り出す。
でもその形相は
喜びの顔じゃなかった。
直弥:
「危ないっ来るな!!」
その瞬間炎の頭上付近の
瓦がなだれ込んで
炎に突っ込んでくる。
直弥:
「炎っ『炎っ!!!』」
僕は何をしてるんだ。
いま炎を助ければ
僕は死んでしまう。
直弥が助けようと
しているんだから
放っておけばいいのに。
ねぇ、炎。
僕は正しいのかな。
僕は迷わず
飛び出していたーー
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‖
周りがぼやけてる。
ああ、今度こそ
本当に死んだんだ。
霧のようなそこは
きっと天国かな。
水越:
「こんばんは水無月君」
理人:
「……水越さん?」
突然水晶玉を持った
水越さんが現れた。
水越:
「どうです、ここは?」
理人:
「どうって…
水越さんも死んだの?」
ははっ、僕は一体
なんて明らかなことを
天国まで来て
訊いているんだろう。
水越:
「…そうですね、
死ぬんでしょうね」
その言葉に
僕は動揺してしまった。
水越さんが
断定じゃなく推量的に
喋ったからだ。
水越:
「この水晶玉‥」
水越さんが水晶玉を
自然落下させて
水晶玉を割る。
水越さんはしゃがんで
その中から
色さまざまな
鍵らしきものを
僕に手渡す。
理人:
「ーーこれは?」
水越:
「あなたの記憶です」
理人:
「記憶?」
水越さんは
黙って頷いた。
水越:
「それはあなたの
直弥さんが作った世界の
皆さんとの記憶の鍵。
それを壊せば
ヴェルさんと同じ
効力を持つ鍵と
一緒の力を持ちます」
ヴェルと一緒の鍵…
ヴェルの鍵は
向こうの世界から
こちらの世界への
唯一の架け橋。
それをもう一度‥
理人:
「壊したら…
壊したらみんなに
また会えるかな」
水越:
「はい、きっと。
でも私のことは
忘れているでしょう。
私は向こうの世界で
あなたに初めて
会いましたから」
理人:
「そっか‥」
僕は強く鍵を握りしめ、
精一杯に躊躇なく
鍵を壊した。
水越:
「ーーさようなら、
彼らと私の希望ーー」
記憶がなくなっても、
僕はみんなを、
水越さんたちを
忘れはしない。
Time will shine.
I live again..