20-夢の果て
ヴェル:
「この世界の中心、
つまり創造主です。
この世界の外見は
直弥さんが創りました。
そして私は…
外への鍵です」
‖
‖
《夢の果て》
‖
‖
理人:
「ヴェ、ヴェル?
どうしたの?
外への…鍵?」
ヴェル:
「その門の向こう、
その先はもう
何もありません。
外見上の崩壊です。
でも絶対として
この門だけは消えない」
直弥はヴェルが言うには
外見をただ現実に
似せただけだという。
そしたらヴェルは?
鍵?……門…!
理人:
「ヴェルは、
この世界の核」
ヴェルが
こくりと頷く。
その顔には似合わない
真剣な顔つきをしてる。
炎:
「理人ぉぉーーッ!!」
理人:
「炎?」
振り向くと校舎の方から
こっちに向かって
炎が走っていた。
近くまで来ると
すぐにわかった。
涙ぐんでいる。
炎:
「理人…ヴェル‥」
ヴェル:
「炎さん‥」
‖
?:
「役者は揃ったな」
‖
ヴェル:
「あ‥!」
炎:
「バ、バカ兄‥!」
理人:
「…直弥」
直弥は苦しそうでもなく
悲しそうでもなく、
嬉しそうでもなかった。
Ι
Ι
直弥:
「ヴェル、
理人には話したな?」
ヴェル:
「…はい」
直弥の瞳はまるで
機械のようだ。
顔色ひとつ変わらない。
直弥:
「理人、事情とか
そんなのはわかったな」
理人:
「直弥はこれから
僕たちをどうするの?
ヴェルや直弥は?
雅紀たちは?」
幾つかパターンを
想像してみる、
最悪のパターンを‥
もしかすると
みんな死んでしまう、
誰も生き残れない。
それさえ考えた。
だが返ってきた答えは
僕にとって
それよりも悪かった。
直弥:
「ああ…
理人と炎はこれから
校門をくぐってもらう。
俺は別の方法で
門の先に
行かせてもらう。
雅紀たちは
もう行ってる」
理人:
「ヴェルは?」
ヴェル:
「私は…残ります」
残る!?この世界に?
人も動物も太陽も
なにもかも
無くなったこの世界に?
炎:
「バカ兄ッ!!」
直弥:
「しょうがないんだ!!」
直弥が声を荒げて
大声を出す。
直弥:
「あの時、修学旅行で
俺とヴェルだけが
無事に生還した!
俺はお前らと
離れるなんて
考えられない!!
ヴェルは言った、
みんなが元気で過ごせる
世界を創ろう、と。
ヴェルは自ら
この世界の鍵になった。
それが何を意味するのか
知っていながらな!」
直弥の眼からは
涙が溢れてきていた。
ヴェルも
ずっと俯いてる。
理人:
「でも!!」
ヴェル:
「…直弥さん、
開けますね?」
炎:
「ヴェル!!」
ヴェル:
「私は、いいんです。
みなさんと出会えて、
嬉しかったです。
それに…私は既に
独り身ですから」
理人:
「独り身じゃない!
僕たちがいる!」
ヴェル:
「祖国…ラグナス」
…ああ、そうだった。
ヴェルの生まれた国、
ラグナス共和国。
確か内戦に
巻き込まれて‥
ヴェルの家族も‥
ヴェル:
「ありがとう、理人。
知ってたんでしょう?
実は私も知ってました。
でも言い出せなくて…
遅くなっちゃいましたが
ありがとうです。
そして、さよならーー」
Ι
Ι
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ーーそしてーーーーーー
ーーー門は開いたーーー
ーーーーーーーーーーー
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Ι
Ι
Ι
Ι
Ι
要:
「…きろ!
起きてくれ理人!」
理人:
「うん……う?」
空気がやけに熱い。
ところどころで
火花が散っている。
そうか、あの日に
戻ってきたのか。
要:
「今雅紀がヴェルを
先に外へ出してる。
舞風たちも多分
先に外へーー?」
動かない体を
無理やり動かして
要の袖を引っ張る。
要:
「どうした?」
理人:
「まだ…だ、だめだ。
舞風さ…んたちは
まだ中、に‥」
要:
「何だと!?
わかった、俺がいく。
直弥、理人を頼んだ」
直弥:
「わかった。
要…死ぬなよ」
要:
「…ああ」
そして要は奥の方へと
走っていった。
直弥:
「理人、炎、立てるか」
炎:
「き、きつい‥」
直弥:
「我慢しろ。
生き残れたら
猫でもなんでも
お前にやるよ」
炎:
「わかった、頑張る」
炎が膝を震わしながら
なんとか立ち上がる。
炎:
「理人も、ほら」
差しのべられた
小さい手のひら。
僕も負けていられない、
死んじゃいけないんだ。
直弥:
「よし、とにかく
向こうへ走…れ」
理人:
「直弥ッ!!」
炎:
「バカ兄ッ!!」
直弥が僕たちを庇って
木の下敷きになる。
どかそうにも
力が足りなかった。
直弥:
「俺はいい…早く行け」
炎:
「そんな…こと‥」
…直弥が何か持ってる。
理人:
「直弥、これ‥」
直弥:
「ああ、さっきまで
部屋でパソコン
いじってたろ。
そん時に作った」
この旅館の
見取り図だった。
そして何やら
赤い線が引かれてある。
直弥:
「避難経路だ。
そいつに従え…
間違っても
窓なんか開けて
バックドラフト
起こさないようにな」
ごめん、前に
言ってほしかったよ。
理人:
「…直」
直弥:
「行け、炎を連れて」
僕はそれだけ聞くと
炎の手を取り
無言のままに
走り出していた。
炎:
「な、と、止まれ!
まだバカ兄が!!」
理人:
「ダメだ止まっちゃ」
ここで
止まるわけには
いかないんだ。
みんなを…置いてく。
僕たちだけしか
助からないんだ。
Ι
Ι
なおや:
「泣くなよ〜理人」
りひと:
「だってぇ‥」
頭をよしよしと
なおやになでられる。
なおや:
「俺がお前を
おいてくわけないだろ」
りひと:
「……うん」
なおや:
「よし、なら行こうぜ!
まだ日はくれない、
俺たちは輝き続ける。
"ウィアスターズ"
俺たちはずっと一緒だ」
Ι
Ι
周りは
ひたすら暗かった。
時間は多分1時頃。
目の前には
燃えている旅館。
理人:
「炎、ひとりでもう
大丈夫だよね?」
炎:
「…り、理人?
私を…置いていくな」
理人:
「待ってて、
すぐ帰ってくるから」
要ひとりで
舞風さんたち全員を
助けれるわけない。
直弥も助ける。
でも炎が危険だ。
だから炎は
連れていかない。
‖
直弥:
「……まだ生きてる」
死に損なったか。
まあいい、理人と炎さえ
この先生きて
幸せになってくれれば‥
理人:
「直弥、起きて?」
目の前になんで
理人がいるんだ?
ついに幻覚まで
見えてきたか。
理人:
「…直弥‥‥っ!!」
なんで…なんで…
直弥:
「お前がここにいんだよ
理人ぉぉーーッ!!!」