13-世界の約束
……プス、プススゥ‥
理人:
「………」
直弥:
「………すまん」
‖
‖
《世界の約束》
‖
‖
それは、僕たちが
山から寮に向けて
直弥の車で山中を
下っていたときのこと。
直弥:
「…つまんねえな」
ふいに
こんなことを言い出す。
未頼:
「じゃあみんなで
しりとりでもしよ〜」
直弥:
「しりと[り]」
炎:
「りん[ご]」
理人:
「ゴリ[ラ]」
ヴェル:
「ラッ[パ]」
舞風:
「パンドラのは[こ]」
未頼:
「コスモタワ[ー]」
直弥:
「…[ー]って
[ワ]か、[ア]か?」
舞風:
「[ア]に
決まっているだろう」
炎:
「[ワ]だ」
舞風:
「[ア]だ」
炎:
「[ワ]!」
ヴェル:
「日本の中でも
カルチャーショックって
あるんですか?」
理人:
「似たようなものがね」
直弥:
「止めだ止め。
他にはないか?」
要:
「ならこの前お前が
帰ってきたらやりたいと
言っていたあれで
いいんじゃないか?」
理人:「あれ?」
直弥:
「ああ、あれか!
よしじゃあやるか。
《五つを並べて
俺たちで新しい
自己紹介文を
作っちまおうぜ
in2009》!!」
舞風:
「ルール説明」
直弥:
「確かな…
今から紙とペンを
渡すから、全員に対する
見た感じの感想とかを
書いてくれ。
いつどこで
誰と何をしたゲーム
みたいなやつだな」
在夢:
「あったねえそんなの」
直弥:
「んじゃ、要頼んだ」
要:
「貴様の分はどうする」
直弥:
「もう書いてる」
何て手際の良い…
はなっから遊ぶ気
満々じゃないか。
直弥:
「よし、じゃあそろそろ
山も抜ける…し‥‥」
理人:
「…え、なに?」
横顔を見やる。
青ざめてる。
ゲージを見る。
針がEと重なって…る‥
舞風:
「まあ保ちはしないな」
未頼:
「へ、どうかしたの?」
直弥:
「心配すんな!
こんな時のために
予備があるんだからな」
自信満々に
指をグッとたてる。
直弥:
「……あれ?」
足下を満面なく探すが
出てきてほしいものが
出てこない。
そこで直弥は
片手運転をして
見つけようとする。
炎:
「っ!!
バカ兄っ、前だ、前!!」
そしてはじめに戻る‥
Ι
Ι
舞風:
「前方不注意で
案の定、樹に衝突。
挙げ句の果てにガス欠、
エンジントラブルか」
直弥はみんなに
ずっと土下座するはめに
なっていた。
雅紀:
「結局立ち往生かよ」
炎:
「バカ兄、助け、連絡」
直弥:
「山奥だから
2時間くらいだとよ」
助けは
来てくれるみたいだ、
良かった良かった。
直弥:
「っつう訳で、
続きしようぜ、続‥!」
炎が樹の上から
かかとおとしを決める。
直弥:
「残念だったな。
そいつはダミーだ」
本物の直弥はすでに
炎の後ろに立っていた。
要:
「だが直弥、
ゲームをするのもいいが
まず燃やせるものを
探さないとな。
もう昼過ぎだ。
この状態でやっても
頭が回らないだろう」
直弥:
「確かにそうだな…
じゃあこうだ、
先に枝や落ち葉を
分担して探そう」
抽選の結果、
僕は炎と2人っきりで
探すことに。
Ι
Ι
理人:
「…それにしても」
視界いっぱいに広がる
自然の緑色。
さえずる鳥の鳴き声。
自然味一色だった。
炎:
「こんな
人里離れたところに
来るなんて初めてだ」
炎もこの風景に
少し驚いているようだ。
理人:
「さ、早く拾おう」
炎:
「……理人、
その背中にいるやつを
前に見たことがあるぞ」
理人:
「背中のやつ?」
振り向いてみた。
?:
「…グガァ!!」
……嘘だ。
理人:
「炎、逃げて!!
月の輪熊だ!!」
炎:「く、熊!?」
熊:
「ハアァァァア!!」
‖
カチャ、カチッ
………バン!!
突然の音に驚いた熊が
背中を向けて去っていく
理人:
「りょ、猟師?」
石に躓いて地面に
伏せていたから
顔がうまく見えない。
?:
「やあ、久しぶりだね」
炎:
「お、お前は!」
理人:
「し……不知火、君?」
Ι
Ι
怪我をした僕を
不知火君は木製の家に
案内してくれた。
不知火:
「さあ
これでもう大丈夫」
笑顔を見せながら
絆創膏を
膝に貼ってくれる。
理人:
「あ、ありがとう‥」
…というか何で
不知火:
「…ん、どうかした?」
炎:
「お前が
ここにいるんだ」
直球だよしかも!
炎:
「もう出番は
ないのかと思ってたぞ」
あ、そっち!?
でもたしかに。
不知火:
「何でって、
前にも言った通り
君たちを守るためさ」
疑問符を浮かべながら
答えてくれた。
理人:
「だけど何で
僕たちを守るの?」
不知火:
「んー……あれ?
何だったかな?」
肝心な部分を‥
不知火:
「まあいいだろ?
助かったわけだし」
理人:
「そうだね、
じゃあ僕たちは
元の作業に……あれ?」
窓に映る景色には
小さな流星群が
広がっているようだった
炎:
「雨だ」
不知火:
「どうやら、
まだいるしかないね」
‖
雅紀:
「げっ、雨かよ」
在夢:
「雅紀シィールド!!」
スライディングで
雅紀の下に潜り込む。
雅紀:
「うおっ!
泥がかかっちまった
じゃねえかよ」
在夢:
「気にしなーい、
気にしない!」
直弥:
「……多分、あれか」
シリアスチックな
雰囲気を醸し出す。
直弥:
「要、ちょっとそこらで
雨宿りでも
しておいてくれ。
俺は理人と炎を
捜しにいってくる」
要:
「……なに?
ああ、ついにか」
Ι
Ι
不知火:
「雷まで来たか。
あ、距離計算しとこ」
理人:
「何故また
このタイミングで!?」
雨降る季節、
別段感じてなかったけど
もうそうなのかな。
不知火:
「計算、計算〜!
……ああぁぁあっ!!
忘れてきたぁぁ!」
理人:
「な、なにを!?」
不知火:
「ショットガン」
何故そんなものを!?
あ、傘忘れちゃった
みたいに軽く
言わないでよ!
てか必要ないじゃん。
不知火:
「ちょっと理人君、
手伝ってくれるか?」
理人:
「え、まあいいけど」
というわけで炎を残して
雨の中の暗闇を
ほっつき歩くことに。
Ι
Ι
直弥:
「…理人、
お前には向き合わなきゃ
いけないことがある。
世界はもう限界に
近づいている。
止められるのは
お前か、それとも‥」