11-哀楽の未確認生命体
熊:
「グラッグアッ!!」
置いた薪を
片手素手で両断する。
雅紀:
「おおっ!
すげえじゃねえか
くまさん。
俺も負けちゃ
いられねえな!」
要:
「(仲間に入りたい…
…っ、俺はなんて
馬鹿なことを考えて‥
………入りたい)」
‖
‖
《哀楽の未確認生命体》
‖
‖
そして工房に全員集合。
要&雅紀以外:
「………!?」
集合したのは
僕たち……と熊!?
しかも子連れ!?
雅紀:
「直弥ー!
こいつも仲間に‥」
直弥:
「殺す気か!?」
ごもっとも。
雅紀以外みんな
頷いてるよ。
雅紀:
「待ってくれよ!
確かにこいつは
見た目は恐いかも
しれねえけど‥」
在夢:
「私たちまで
道連れにされて
たまるもんかぁぁ!」
未頼:
「怖い怖い怖い怖い怖い
怖い怖い怖い怖い怖い
怖い怖い怖いぃ〜!!」
感度満点。
もうずっと未頼さん
炎の手を握ってるし‥
炎:
「………」
直弥&理人:
「炎!?」
なんと炎が
何の躊躇もなく
森のくまさん(子連れ)
に近づいて
いってるのだ!
……未頼さん付きで。
未頼:
「ま、待って
炎ちゃん〜!(泣)」
炎:「大丈夫だ」
未頼:
「全然大丈夫
じゃないって〜!!(泣)」
そしてついに……
熊:
「……グゥ!」
態度を一変して、
噛みつくような様子で
炎をうかがっている。
……未頼さん付きで。
炎:
「……この子を」
熊:「?」
炎が指差したのは
ずっと熊の後ろに隠れて
見えなかった小熊。
炎:
「…私にくれないか?」
………っ!!!!!
一同驚きに言葉も出ず‥
熊:
「………」
無言‥
要:
「え、炎…
お前は何を
言っているのか
わかっているのか?」
それに対して炎は頷き、
炎:
「百も承知だ。
もちろん面倒は
私がすべてみる」
要:
「…わかっているのか?
熊の食べ物は肉だぞ。
毎回俺と雅紀が
遠くの山の川まで
鮭を捕りにいかねば
ならないんだぞ!」
理人:
「……あ、そっち!?」
炎:
「キャットフードで
いいだろ」
駄目でしょ。
要:
「…好きにしろ」
炎:
「そのつもりだ。
…さあ小熊さん、
私と一緒に
来てくれないか?」
小熊?
「………」
小熊の姿は
結局見えない。
しかし、親熊は
後ろを振り向き、
何やら人間には
わからない意思の疎通を
はかっているみたいだ。
熊:
「……オグ」
親熊が身を
小熊から離す。
…つまりこれは親熊が
小熊に自分の意思で
行けってこ‥と‥‥
小熊?:
「……もふぅ」
……っ!!!!!
最早小熊じゃあ
なかったよ!?
なにあれ、
子供ゴ〇ラの黄色版!?
とにかく…成長しても
絶対熊にはならない!
炎:
「…っ!」
炎も衝撃を受けている。
なんせ期待していた
動物が期待とは
まるで違った、
周りをほんわかにする
ようなオーラを
放っていたのだから!
小熊?
「んまっふ、んまっふ」
よーく見たら足がない?
…違うお腹の脂肪で
隠れてるのか。
そして近づいてきた!
まさか…まさか!!
炎:
「よーし、よしよし。
ありがとうだ、
くまさん。
名前は帰りに
つけてあげるからな」
ああ‥‥
熊:
「……グッ!
ゴガイオウ‥」
ガシッ…と
雅紀の首根っこが
熊に掴まれる。
雅紀:
「……え?
お、おいっ!!」
熊:
「グマッ、グマッ!」
なんか笑ってる
ようにも見えるけど‥
理人:
「雅紀、
これまでありがとう。
これからも僕は
雅紀のことを‥」
雅紀:
「待ってくれ!
理人、理人ぉぉーっ!!」
舞風:
「さ、彼のことは
森のくまさんに任せて、
我々は奥で
お茶でもしようか」
在夢:
「そーすねぇ」
ヴェル:
「バイバイ雅紀さんっ」
雅紀:
「ま、ちょ待っ‥‥」
Ι
Ι
そして雅紀を除く
みんなでしばらくの間
くつろいだあと、
舞風さんはまた
工房に戻っていった。
理人:
「早く出来たらいいね」
要:
「俺たちに出来ることは
もうないからな」
直弥:
「………おっ」
ムスッ、と直弥が
立ち上がり、
何かを紙に書き出す。
直弥:
「…よし、今から
この小熊の名前を
俺たちで命名しよう!」
突飛だった。
Ι
Ι
小熊?:
「んもー、んもー」
未頼命名
《もんもん》
‖
小熊?:
「まふるまふる」
ヴェル命名
《まふー》
‖
小熊?:
「ふまほーん」
直弥命名
《狂気のジャック》
‖
小熊?:
「………」
理人:
「え、何で僕だけ
喋ってくれないの?」
理人命名
《タマ》
‖
小熊?:
「……どどるぅ!!!」
要:
「っ!!
なんだこいつはぁぁ!」
要命名
《スプラッシュ!!》
‖
小熊?:
「ふみんふきゅ〜」
炎:
「ふみんふきゅう?
賢い猫だな、お前は」
理人:
「猫だったの!?」
炎命名
《リート》
‖
小熊?:
「………けっ」
在夢:
「動物にまで
けなされたぁぁ(泣)!!」
在夢命名
《エレキテルランバード
ババラントス》
Ι
Ι
小熊?:
「まむぅ‥」
炎:
「やっぱり《リート》
がまともだ。
というかこれ以外
ふざけすぎてる」
理人:
「要に関しては
名前に「!!」が
入ってるしね」
要:
「それを言うなら
直弥のはどうだ。
こいつはいつジャックに
なったんだ」
直弥:
「それを言うなら、
なんだよ黒輝の、
エレキテルランバード
ババラントスって」
在夢:
「だったら
未頼ちゃんやルネアの
鳴き声をそのままって
いうのはっ‥‥」
炎:
「お前らうっさい!!」
炎が一喝する。
するとみなが口々に
己が命名した名前を
猫(炎によると)に
浴びせかけていく。
これで猫が近づいた人の
創った名前を
命名しようというのだ。
小熊?:
「むぅーー」
高いとも低いとも
いえないうなり声を
あげながら、
ゆっくりと猫が
僕に近づいて……
近づいて?
理人:
「ぼ、僕!?
僕の《タマ》!?」
小熊?:
「むもーー」
進路もスピードも
変わらない。
完全に僕一直線だった。
そして僕に猫の
ダイレクト
アタックがぁぁ!!
小熊?:
「むおーー!」
ことの見事に部屋の壁に
吹き飛ばされてしまった
それでもなお
向かってくる
猫らしき生物。
炎:
「大丈夫か理人っ!!
…こらっ、リート!」
小熊?:
「むぅー‥」
怒られたことが
わかったようだ。
落ち込んでしまった。
炎:
「…次からは
注意するんだぞ、な」
小熊?:
「みゅー」
頭を撫でられて
気持ち良いのか、
小さく唸っている。
炎:
「……これで名前は
リートに決定だな」
在夢:
「あ、まさかの
横領ですか炎ちゃん!!」
炎:
「何言ってるんだ。
こいつは最終的には
私の所へ来たぞ」
在夢:
「来たっていつ‥‥」
リート:
「みゅみゅーー」
リートが転がりながら
炎に近づいていく。
炎:
「ほら、こんな風に‥」
リートの頭を
優しく撫でる。
リートは
気持ちよさそうに
唸っている。
さっきみたいに‥
在夢:
「ひっでぇぇ!!
流れじゃないですかぁ」
炎:
「勝ちは勝ち。
だろ、バカ兄」
直弥:
「そうだな…
だがやっぱりここは
バカ兄じゃなくて
お兄ちゃんと呼んで‥」
炎:
「は?」
直弥:
「だよな。
やっぱりそういう
反応だよな、
うん‥‥‥(泣)」
話が進まない‥