01-Return spring
この作品は、前作、
《ウィアスターズ》の
続編です。
前作を読んでる方も
まだ読んでない方も
楽しんでほしいと
思ってます。
桜舞うまだ肌寒い季節。
高校2年生に
無事進級した《僕》は
クラスの
割り振りを見る。
……いた。
要に雅紀、そして炎が。
‖
‖
《Return spring》
‖
‖
進級して変わったことは
階段を上る
回数が増えたこと。
そして……
理人:
「おはよう、炎」
炎:
「……ん」
頷きさえしたのか
わからなかったが、
特に気にはせずに、
そのまま黒板に
張り出された座席表を
確認する。
理人:
「2と、3つ目……
ここか」
ちょうど窓側に位置した
その机にはまだ完全には
消されて
いなかった落書きが
点在していた。
見たところ、
星が9個ほどあった
らしく、ところどころ
角が散らばっていた。
理人:
「繋げてみようかな‥」
シャーペンに手をかけた
その時だった。
バーンッ!!
後ろのドアが勢いよく
開けられる。
そこには見慣れた
巨体が立っていた。
理人:
「…おはよう、雅紀」
雅紀:
「……へっ。
毎日毎日挨拶なんかして
よく飽きねえよな、
理人」
理人:
「………」
雅紀は…
変わってしまった。
まわりの環境が
悪かったせいか。
それとも他に
理由があるのか。
本当のところは
わからない。
もし、直弥が
あの頃のままだったら、
こんなことには
ならなかったのかも
しれない‥‥
‖
放課後
炎:
「…理人」
理人:
「どうしたの?
炎から話し掛けてくる
なんて珍しいけど」
炎:
「ちょっと来てほしい
ところがある。
一緒に来てくれ」
理人:
「どこに行くの?」
炎:
「…あいつのところだ」
Ι
Ι
3年生の教室。
来年になったら僕たちも
ここにいつも
来るのだろうなどと
考えながら部屋に入ると
教室の隅の方の机。
彼はそこでじっと
曇り空を眺めていた。
理人:
「……直弥」
直弥:
「…ああ、理人か」
活気がない。
疲れている様子はないが
その顔は少し
やつれていた。
直弥:
「炎もこんなところまで
どうした。
宿題見てほしいのか?」
炎:
「バカ兄は私たちが
何で来たのか
わかってるんだろう」
直弥:
「さあな。
何のことやらだ」
澄ました顔で答える。
理人:
「炎、
やっぱりあのこと?」
炎:
「そうだ。
……バカ兄。
もう一度《ウィ‥」
直弥:
「無理だ」
一言だけ
そう言い捨てる。
理人:
「何で!?」
直弥:
「…人間っつうのは、
適度な距離が
大切なんだよ。
あのグループは
近づきすぎたんだ」
理人:
「そんなことないよ!」
直弥:
「…じゃあ、
仮に作ったとしよう。
雅紀や要、他のやつらは
どうする?」
理人:
「どうって……
きっと集まってくれるよ
在夢さんや
未頼さんたちは」
直弥:
「雅紀は?」
理人:
「雅紀は……」
多分話なんて聞いて
くれないだろうな‥
直弥:
「多分無理だろな。
だからもう一度
あのメンバーで始める
ことはできないんだ」
炎:
「…簡単な
話じゃないか」
直弥&理人:
「へ?」
炎:
「あいつの頭を
殴ってでも元のあいつに
戻させてやる」
そう言って炎は体を翻し
教室を出る。
理人:
「ちょ、炎!
待ってよ!」
炎:「早くついてこい」
炎も随分
強気になったなぁ‥‥
Ι
Ι
理人:
「炎ー?
どこに行ったのー?」
あまりの素早さに
体がついていけず、
つい置いてきぼりを
くらってしまった‥‥
理人:
「炎ー……ん?
あれはもしかして‥」
窓の外に目を見やる。
グラウンドに設置された
懸垂の下に雅紀を
見つけたのだ。
理人:
「…雅紀の
ところに行こう」
躊躇うことはなかった。
Ι
Ι
理人:
「雅紀!」
雅紀:
「あ?
何だ、理人かよ。
なんか用か?」
理人:
「雅紀……
ウィアスターズに
戻ってほしいんだ」
雅紀:
「んな……
ば、馬鹿言ってん
じゃねえよ。
あんなのな、せいぜい
ガキが限界なんだよ」
理人:
「なら、僕や炎は
いつまでも
子供のままでいいよ。
雅紀も、ね?」
雅紀:
「っ……
ふ、ふざけてん
じゃねえよ!」
僕の肩をドン!と
力強く押し、思わず
衝撃でお尻をつく。
理人:
「痛た‥」
雅紀:
「もう俺に構うな!
……さよならだ」
この場から離れようと
すぐさま体を翻し、
歩き出そうとしている。
ガシッ!
雅紀:
「なんだよ‥‥」
僕は必死に雅紀の足を
掴んでいた。
理人:
「お願いだよ、雅紀‥」
雅紀:
「………」
理人:
「戻ってきてよ‥」
雅紀:
「……んなろうっ!!」
片手で体を持ち上げた
かと思うと、その手は
襟を掴んでいた。
理人:
「(くっ、苦しい‥)」
雅紀:
「てめえは俺に
戻ってきてもらって
何がしてえんだよ!!」
理人:
「も、もう一度…
みんなで、
笑いたいんだ!!」
雅紀:
「笑…いたいだ?」
理人:
「そうあの頃みたいに
みんなでまたっ!!」
……あれ?
そんな時は1年生の時に
あったっけ?
…何だろう、記憶が
断片的に無くなってる?
雅紀:
「あ………」
ゆっくり、
ゆっくりと
手の力は緩んでいき、
ついに地上に降り立つ
ことができた。
理人:
「……雅紀?」
雅紀:
「楽しいことが…
待ってんのかな……」
理人:
「その言葉、
昔どこかで聞いたことが
あるような‥」
雅紀:
「…ぐっ!
すまねえ理人っ!!」
理人:
「え、ええ!?」
突然謝られるものだから
驚いてしまった。
雅紀:
「もう一度…
俺はウィアスターズに
戻っても、いいのか?」
理人:
「も、もちろんだよっ!!
また、よろしくね、
雅紀」
雅紀:
「お、おうっ!!」
固い友情の握手。
これはウィアスターズの
一種の慣わし。
そう、雅紀がついに
戻ってきたという
証だった。
‖
炎:
「理人はうまく
やってくれた
みたいだな」
遠目で見ていた
炎の横には4人の生徒が
終始ニヤニヤしていた。
?:
「そうだな。
彼を体を張ってまで
元に戻すなど、
考えるだけで
相当な勇気だ」
?:
「でもそれを理人君は
やり遂げちゃったん
だからすごいよねぇ」
?:
「仲間だもん。
私たちは」
?:
「あとは直弥さんと
要さんだけです。
頑張りましょう」
?:
「ということは、
私たちの出番は
もう少しだけ後だな」
?:
「そうっすねえ」
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