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天影の華  作者: AIO
第一章「学園」
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第零話「原点」

約600年前だろうか。

南極に月の破片が堕ちてきたのは。

その光はとても眩しく、幻想的で、そして怖いくらいに美しかった。


長らく続いた平和も、何もかも全てその時に崩れ去った。

南半球は衝撃波による地震や大津波によって、その日の内に半壊状態。

北半球も、その後に起こった断続的な自然災害により、生命が生きていける様な環境が徐々に奪われていったのだ。


そこで残された人類は考えた。

散らばっていては生き残れない。

ならば集結しよう。協力しよう。

そうして残った人類が英智を集結させて作ったのが、難攻不落の要塞である咲嶺大都園(さきみねだいとえん)である。



咲嶺大都園(さきみねだいとえん)

ここは総人口11.3億人、総面積90万k㎡をほこり、西暦2400年代の日本の辺りに位置している大きな要塞型都市、咲嶺大都園(さきみねだいとえん)

総面積90万k㎡とはどの位の大きさなのかと言うと、元々の日本の約2.5倍ほどである。


何故、元々日本だった土地にそれ程までに大きい要塞を作れるのかというと、約600年前の大災害で日本海の海底が隆起し、日本海そのものが完全に無くなり陸となったからである。

自然とはまったく不思議なもので、簡潔に言うと日本海が丸々陸となったのだ。

この現象はおそらく世界各地で起こっており、他にもベーリング海や東シナ海、地中海さえも陸になっていると思われる。

北半球の大半の海が陸となった今なら、アフリカとヨーロッパを徒歩で渡れるであろう。

しかし、この徒歩で渡れるという説には、あの大災害以来その土地まで調査に行った者は誰も居ないという補足を付け足しておく。

あくまで予想であり、事実では無いのだ。

それこそ南半球は未知そのものであり、あれから600年ほど経つが、誰一人そこへ赴こうとした者は居ない。

さて、地理の話はここまでにしておこう。


次は公民の話だ。

咲嶺大都園(さきみねだいとえん)では政府と、それに準ずる社会が形成されており、経済や教育などの国として充分存在していける制度が整っている。

その礎となる都内憲法は、国会、内閣、裁判所がそれぞれを抑制し合って権力の濫用を防ぐ三権分立の原則を定めており、これにより都民の権利と自由が保障されているのだ。

言い換えれば、かつての日本と大差は無いということである。

短いが、公民の話はここまで。


では、最後に歴史の勉強といこう。

皆さん気になっているであろう、月の破片。

何故そんなものが地球に堕ちてきたのか、謎で仕方ないと思うのだが、その原因は未だ解明されていない。

逆にそれを解明できれば、未来永劫に君の名前が教科書に載ると断言しよう。

なんせ、大災害直後は全人類てんやわんやの大混乱状態で、次の日を生きるだけでも精一杯。

しかし、何も分からない、知らないでは歴史もへったくれも無いため、一つだけ確かなことを伝えておこう。


"人類は減ったが、化け物は増えた"


では予習はここまでにして、本編である人類と化け物の、長い長い戦いの一部始終を語っていこうではないか。



【天影の華】



約600年前に起こった大災害によって、住む場所を奪われた全人類が生活する咲嶺大都園(さきみねだいとえん)

ここに住む12億人に満たない人類が、なぜ難攻不落の要塞を築く必要があったのか。

かの秀吉でさえその生涯のうちに海を越えた領土拡大を図ろうとしたのに、何故生き残った人類は今も尚、籠城する必要があるのか。


答えは簡単。

咲嶺大都園(さきみねだいとえん)の外は、化け物の領域だから。

その化け物を、人類はこう呼ぶ。


酷天者(オボロ)』と。


この表記の所以(ゆえん)は諸説あるが、一番有力な説は『最も酷い天からの贈り物』をそのまま略したというものである。

(もの)』と『(もの)』の漢字が違うのは、おそらく酷天者(オボロ)の第一発見者が出会った個体の容姿が、人間に似ていたからであろう。


読み方の所以(ゆえん)は諸説があり過ぎて有力なものが一つもない、いわばどんぐりの背比べ状態である。

例えば、朧月の夜は特に活動が活発になるとか、朧月の夜に初めて現れたとか、当時に酷天者(オボロ)と出会った人間が朧気な記憶しかなかったからとか、とにかく胡散臭いものばかりである。

ただ、かの化け物に対する専門家達は正式名称を酷天者(オボロ)としているため、コレが正しい読み書きなのである。


まぁそんな読み書きの事は案外どうでも良くて、大事なのは大災害が起こってから幾年が経ったある日、突如そいつらは姿を現し、襲ってきたということである。その日が朧月の夜だったのかは、定かでは無いのだが。

酷天者(オボロ)の容姿は大半が人間のようなのだが、犬や猫などの様々な動物、想像上の生き物とされていた生物までもが確認されており、それらは確かに原型をとどめているのだが、全く似て非なるものである。


知能等級は、元となったであろう生物に関係なく真面(まとも)に会話ができないほどに低い。

習性としては、何故か生物に異様なまでの執着をみせ、視界に入り次第徹底的に襲ってくる。

一部の報告書では、人型の酷天者(オボロ)が小鳥の群れへと飛び込み、手当り次第に握り潰していたという記録も残っている。

運動能力には個体差があるが、極めて高いものだと超次元戦闘漫画並の身体能力を発揮する個体も存在するらしい。

食性は不明で、何を食しているのか、何を栄養にしているのかサッパリ分からない。

というか、何をエネルギーにしているのかも分かっておらず、植物の様に光合成をしているのではないかという説を立てる学者もいるくらいだ。

外見は各個体様々だが共通して半透明で、その身体の中に丸く赤い核を有している。

また、その身体は内に向かうにつれて色も濃くなっていき、丁度心臓や肺がある部分は宇宙の一部をその体内に有しているかのような見た目であるが故に、大層美しい。

顔の部位は、のっぺらぼうの様に何も無い個体もいれば、目があったり、口や鼻のような穴が有ったりするのだが、耳がある個体は未だ発見されていない。


と、特徴を挙げればキリがないほどに謎が多い存在だ。


最後に一つ取り上げるとすれば、半透明の身体をしているがスライムのようなブヨブヨしたものでは無いということくらい。

故に獲物にまとわりついて溶かしながら侵食するとか、そういった芸当はできない模様。

そんな化け物、酷天者(オボロ)に多くの人類が殺されたのだ。なんせ知能は無いが、なにか強い意志を持っているようで、人間へと何度も牙を剥いてきた。


しかし、大災害も厄災ばかり引き連れてきた訳では無い。

きちんと人類への凄い贈り物も用意していたのだ。


異能(アビリティ)


これは人類に与えられた、酷天者(オボロ)に対抗する為の力であると位置付けられる。

大体五歳くらいの歳から自分が持っている能力が発現し始め、二十歳を過ぎた頃から能力が使えなくなり、三十歳で消失してしまう。

六歳から十二歳までを第一次能力成長期、十三歳から十八歳までを第二次能力成長期と呼称し、小等学校にて第一次能力成長期、学園にて第二次能力成長期の育成を行う。

しかし、一般的には小等学校を卒業すると中等学校への入学が求められ、高等学校は能力ではなく学力面での教育を主として能力の育成は行われない。


異能の力と聞けば、健全な諸君は迷わず学園への入学を希望すると思うが、現実はそんな優しくは無い。

能力を育むための学園へ入学するには、各小等部にて能力と学力の両方で優秀な成績を修めなければならないのだ。

何故かというと学園では能力の育成を主とし、学力面は並の教育で留めるからであり、半端な頭脳ではやっていけないのである。

学園に入学するには「小等部卒業時点で中等部卒業等級までの勉強を修了しなければならない」とまで言われるほどだ。


更にそこへ追い討ちをかけるのが、その門の狭さ。

咲嶺大都園には学園が全部で20校しかなく、ましてその内の7校は『七大学園(ななだいがくえん)』と言われる超優秀な学園であるが故に、その門をくぐれるのはほんのひと握りの優秀な者のみなのだ。

これを聞くと、異能の力に胸躍らせていた健全な諸君も、学園に入学する事がどれだけ難しいかよく分かったであろう。

この咲嶺大都園の中では、中・高等学校と学園は全く別物。学力を育むか、能力を育むか。

それは、選ばれし成績優秀者にとって人生における最大の選択と言って差し支えないであろう。


学園へ入学すれば、年に一度行われる都外進攻作戦『都外演習(とがいえんしゅう)』に『学園生(がくえんせい)』として参加しなければならなくなるのだ。それも毎年死者を出すような、極めて危険な進攻作戦である。

何故、若く優秀な学園生たちがそんな危険な作戦に参加しなければいけないのかというと、都内の安全のためであり、瀬戸際に立たされた人間の最終手段と言っても過言では無い。

最新鋭の軍事力を駆使しても歯が立たず、拳銃から砲弾、最終手段として一度人類が放棄した核兵器ですら酷天者を倒すことが出来きなかった。

そのため、能力を使える学園生の方がよっぽど効果的で現実的だったのだ。

もちろん、学園には自主的な入学希望のみ認められ、本人が望まない強制的な入学は法律によりこれを固く禁じられている。

これは親も対象であり、子に学園への入学を強いた場合、懲役刑に処される事もある。

そのため、どれだけ優秀な頭脳で、どれだけ強力な能力を有していようと、学園への入学の拒否権はちゃんとあるのだ。


わざわざ死の危険に晒されてまで能力を育むか、安全かつ平凡な人生でいいから更なる学力を育むか、コレが人生最大の選択と表現した訳である。

ただ、これでは学園に入学する子など滅多といないのでは無いかと、学園に入学する利益が何処にも無いじゃないかと。


ここで、一つの機関を紹介しよう。

燎灯科園(りょうとうかえん)

政府直轄の組織であり、学園と学園関係組織を束ねている、いわば能力に於ける最高統括機関である。

何故ここで紹介したのかというと、簡潔に言ってしまえば学園を卒業した時点で燎灯科園(りょうとうかえん)へ、そのまま就職できる。ということを説明したかったからだ。

その権利は凄まじく魅力的で、言い換えれば都内で一二を争う覇権組織に、十八歳という圧倒的に若い年齢から就職できるということである。

ある程度公平な社会とはいえ、平等ではなく、貧富の差が都内における問題となっている今、その差を埋めようと小等学校から勉学に励み、学園への入学を希望する子が後を絶たないのだ。


もちろん、全員が全員そういう訳ではない。

家柄で代々学園に入学している子や、有り余る力を試したいと入学する子、気分で入学する子など様々である。

結局はその子自身の気の持ちようなのだ。

良く言えば死を恐れない、悪く言えば死を知らないような子もいるはずである。


と、長ったらしい前置きはここまでにしておいて、次からは本編を語っていこう。

いつも天影の華をご愛読いただき、誠にありがとうございます。

さて、今回は内容の大幅変更が決定いたしましたのでご報告させていただきます。


2023年4月1日より順に随時変更を開始します。


いつもご愛読いただいている皆様に、多大なご迷惑をお掛けしてしまうことを深くお詫びいたします。

これからも天影の華をよろしくお願いいたします。


制作代表 AIO

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