命の値段は
【ダンジョンショップ『マギ・クラフト』にて】
「キュージョ、料・・・?」
「そーです、救助料。きっちり支払ってねー」
療養所からの帰り道。一応お礼を、と思って例の店に寄ってみたらこれである。
ソルの目の前には、そこそこの金額が書かれた紙が置かれていた。
「えー、と。あれは、探索ついでに助けてくれた、とかでは・・・」
「そーなんだけど、うちは仕事でそういうことやっててさー。
たとえ偶然だとしても、ダンジョンに関する緊急事態の解決、ってのも、金額決まってるのよね」
「ぇえ~・・・?」
困惑するソル。偶然見つけたものを助けて、金をとる?それって詐欺では?
そこへ
「うちは定期的にダンジョンを見回り、こういった緊急事態がないか確認してまわっています。
結果、『深層』ダンジョンからの生還率は80%近く。死者・行方不明者は年間通して50名弱。
これはほかのダンジョンとは比べ物にならない数値です」
「なっ・・・・?!」
従業員であるエマに説明され、驚愕する。
・・・ダンジョンというのは、魔物の巣窟だ。当然、命の危険がある。
そして・・・・・・・魔物の素材や希少な鉱石など、宝の山でもある。
命を懸けたギャンブルのようなものであって、慣れた冒険者であっても
生きて帰れるかわからない。
一般的なダンジョンなら、死者や行方不明者など月で百人出てもおかしくないのに・・・。
「さらに、事前にダンジョン内を確認できる『解説書』を購入せず、単独でのアタック。
命からがら生還した、というのがあなたの状況なのですが・・・これでも、まだなにか?」
「ぐ・・・・っ」
正論だ。助けられておいて、不平不満などあるのか、と。
もちろん、感謝している。相応の礼はしたい、ところなのだが・・・・
「・・・・ってない」
「ん?」
ぼそっと、なにか聞こえた。辛抱強く待ってみると・・・
「・・・・・・・・・・・・・も、持ってません。
金とか・・・全部、なくしたので・・・・・・」
しどろもどろになりながら、ソルが言葉を絞り出す。
稼ぐためにダンジョンに入ったのだ。ダンジョンの成果で、これからの生活資金を調達するつもりだった。
が、思っていた以上に自分とは相性の悪いダンジョンで、持ちものはすべて失ってしまった。
装備や道具、靴や衣服さえもすべて壊されて、残ったのは身ひとつ。
「「ほーう?」」
支払えないとわかるや、店の者たちににじり寄られた。
稼ぐにしても、どこかで借りるにしても、自分は新参者で、この街での信用がない。
つまり、仕事を見つけようにも借金しようにもあてはなく、ダンジョン以外、すぐに稼ぎようがない。
・・・・八方塞がりだ。
最悪、奴隷商に身体を売られるか、黒魔術師に内臓を売られるか。
身体ひとつで金になることなんて、そのくらいしか――――
「よーしオッケー!わかりやすい!!」
ぱーん、と店主が手を叩く。あっけにとられるソルに、店主は
「うちの仕事を手伝って、返してもらおう。
大丈ー夫!!この街じゃよくあることだからね!!!」
などと、あっけらかんと言い切ったのだった。




