怠惰な団長と突然の極光
たいへんお待たせしております。続きを投稿いたします。
「龍による、ダンジョンの上書を阻止します。とゆーわけで、さっそく潜るよ~」
ソルの報告の翌日、マギからあらためて、ダンジョンアタックすることが告知された。
道中の危険が少なく、さらに悠長にしていると龍による上書きされてしまう危険性もありえるため、
補給と必要な道具を用意し、すぐさま出発することになった。
メンバーは、マギ、エマ、ソル、ウィズの道具屋メンバーと、
神殿騎士の方は、フューリーを筆頭に、『爺や』さん、『姉さん』、ゲルドほか親衛隊数名。
前日の視察において、ついてこられそうな面々が絞られた形だ。
残った神殿騎士たちには、マギたちがダンジョンアタック中のダンジョン街への突発事象に対応してもらうことになった。
「とくに不満が出なかったのは、前日の視察が効いたからかな?」
「よい施策だったかと。何も知らないままであれば、『深層』とはいえ人形ごとき!と突撃していた面々ばかりだったでしょうから」
先頭を行くマギの問いかけに、爺やさんが答える。
「神殿騎士などと騎士を謳っていますが、傭兵やごろつき上がりも多い集団ですからな。
実地の結果で黙らせたのは、いい薬にもなったでしょう」
「はじめて商品の説明でうかがった際も、盗賊の根城のような雰囲気でしたものね?」
「ははは、お恥ずかしい。いまは多少ましになりましたが、あの頃はまだ騎士団も立ち上げたてで、特に柄が悪かったですからな」
「あ~…やっぱそういうメンツなんすね。思ってたよりガラ悪いとは思ってましたが…」
「あははは!あたしは親しみやすくて好きだけどね!」
うすうす感じていた疑問の答えが、爺やとエマの会話によって確定し、ソルとウィズが呆れ顔と笑顔で反応した。
『深層』の中層域。前日の確認通り、湧き出る人形の数が少ないためか、本来なら考えられない速度でダンジョンアタックが進んでいた。
「あんま気ぃ抜くなよ?不可視型の迷彩で襲ってくる奴らだっているんだからな」
と、いま話していた面々の後方から声がかかる。そこに、ソルとウィズはげんなりとした顔で振り返った。
「…フューリーさんに言われたくないんですが…」
「…ちょっと、説得力ないですねー、団長さん…」
うわー…と感じている意思をかけらも隠さず二人が返事に応える。
そこには、団員に輿(こし)で担がれたフューリーの姿があった。
「なんだよ。あらかじめ説明しただろ?俺の能力が必要じゃねえのか?」
「いや、力を温存するため…とは聞いてましたけど」
「えとー、ちょっと信じられないぐらい温存してるので、ウソでしょ…?と思ってます」
寝ころびふんぞり返って輿で担がれている姿は、成り上がりのお貴族サマのようで非常に印象が悪い。
こういう態度はマギどころか、関係性をみるに爺やさんが咎めそうなものなのだが…
「も~。二人とも言ったでしょ?これは必要なことなの!フューリーが肝心な時に使えなかったら元も子もないんだから、あきらめて!」
「傍目には印象が悪くございますが、残念ながら、私からは何も。
団員の皆様が文句なく坊ちゃまを担いでいただいているのも、ことを把握しているからですので」
と、両方とも逆に指摘した二人をたしなめる始末。
たしかに、あの荒くれっぽい騎士団の面々が文句ひとつなく輿を担いでいる姿は、説得力がある。
「団長!喉は乾いてらっしゃいませんか!?お水です!」
「おう」
…約一名、熱量がおかしい『姐さん』を除いて。
「…あの人、最初会った時と印象違いすぎねーっすか…?」
「ふふ、若いというのはいいですなー」
「ああ、騎士団内でもそんな微笑ましい感じの印象なんすね…」
ソルが遠い目をしながら見れば、騎士団の面々も苦笑しながらほんのり笑顔でその光景を見つめている。
外部の姿しか知らなければ、驚きの光景だったと思うのだが。
「…あん?」
と、寝そべっていたフューリーが突然身を起こした。途端、騎士団が警戒態勢をとる。
「え?」
「戦闘準備!構え!!」
ソルが驚いている間もなく、『姐さん』の号令に、隊列を組んでいた神殿騎士たちが一斉に戦闘用の配置に付いた。フューリーも丁寧に降ろされる。
その視線は、これまでパーティが進んできたダンジョンの後方に向けられている。
――――そして。直後に聞こえ始める轟音。
「おおおおおお!!!見つけたぞダンジョンの首魁よ!!!」
野太く力強い声、そして、なだれ込む多くの足音。
「人形よ!!貴様の悪事を阻止しにきたぞ!この、勇者アームストロングがな!!!」
その手に極光の剣を携えた金髪の偉丈夫が、マギ一団の後ろに立ちふさがった。




