王道の皮を被ったナニカ
たいへんお待たせしております。
久方ぶりに続きを執筆しましたので、よろしければお楽しみください。
【首都 中央都】
マギたちがダンジョンに潜る少し前――――――
「ありがとう!ありがとう市民の諸君!!」
パレードが行われ、馬車で引かれた台座の上で周囲へ笑顔を振りまく人物がいた。
「かつて勇者として活躍したこの私を頼ってくれたこと、光栄に思う!
推薦してくれたベロ伯爵に代わって、あらためて平和を取り戻すと約束しよう!!」
金髪のマッチョな男である。英雄じみた演説を行うと、市民たちは嬉しそうに歓声を返した。
勇者と宣言した男の横にいる身なりのいい男性―――ベロ伯爵も、満足げにそれを見つめている。
パレードの盛り上がりは、最高潮に達していた。
「龍退治にかつての勇者の凱旋…か。茶番だな」
国王は、パレードの賑わいを見ながら、玉座でため息を吐いていた。
それに対し、宰相が側で同じように下がり眉で返答する。
「仕方ないでしょう。龍がダンジョンから出てくる可能性がある中、マギ殿たちだけでダンジョンの対応をさせるのは、治外法権を認めた我々はともかく、事情を知らぬ市民たちには不安かと。
何せ、市民たちのマギ殿の印象は商人としてのものですので」
そう。一般にもマギたちは知られており知名度はあるのだが、それは人形の技術を活かしたアイテムを売る商人としてのもの。
ダンジョン街に居を構えているとはいえ、強さ・治外法権としての能力は認知度が低かった。
そのため、ダンジョン街での龍騒動に関して、市政からは不安の声が上がっていたのだ。
「そこに、ベロ伯爵お抱えの勇者を使って龍討伐の遠征を組むことで、市民の不安を和らげるというのは悪くない案だったかと」
「案自体の有用性はわかっておる」
宰相の言葉に対し、有用性を認めた上でさらにため息を吐く国王。
「しかし、遠征に向かう勇者がアームストロング殿とは…」
「陛下。過去のことは過去のことです。アームストロング殿自身、そのことに対して申し訳なく思っていたではないですか。
非常に反省し、長期の自粛期間も設けてらっしゃいました。その後は各地の復興支援にも積極的に参加し、市民からの信頼も復活しております」
―――信頼を失った元・勇者。
かつて、大規模な魔物の大群により中央都が壊滅の危機に陥ったことがあった。都の周囲を魔物に囲まれ城壁を越えられるのも時間の問題、という時。
それを救ったのが、当時勇者として召喚されたばかりのアームストロングだったのである。
溢れるパワーと光り輝く聖剣の力で大群を一掃し、一躍脚光を浴びた。
…が、その後。
とある事件により貴族の不興を買ったことで貴族社会から追い出され、さらに都で窃盗・強盗まがいの事件を起こしたことで市民からの人気も低下。
どうしようもなくなっていたところ、ベロ伯爵に拾われて上記のボランティア活動に従事すること十年。
かつての信頼ほどではないにしろ、本人の誠実さにより徐々に人気が回復した―――という顛末である。
宰相のその説明に対し、王はそこではない、と反論する。
「アームストロング殿自身には、何の不安もない。本人のやる気は間違いないし、伝え聞いたものだが当時の事情も把握しておる。
ただ…ベロ伯爵の発案でアームストロング殿を起用、というのがな」
「…王。それは…」
「わかっておる。それこそ過ぎたことだ。だが…」
それは、王だけでなく家臣全員の懸念でもあった。
当時、ベロ伯爵が起こした事件――――それが尾を引いていた。
一方。パレードは中央都の入り口まで迫り、いよいよ遠征へ出立するという頃。
満を持して、元勇者・アームストロングが声高に宣言する。
「市民の皆々、安心してくれ!
辺境にて居を構える龍…そしてダンジョンの人形ども!ことごとくを屠ってみせよう!」
市民の歓声が響くその宣言の後、何やらほくそ笑むベロ伯爵の姿があった―――




