表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/49

しばしの休息

お待たせしております。修正しました。

【ダンジョン街 診療所 休憩室】


「・・・・・・悪くない」

「ああー・・・・・・ずず・・・・・・ああー・・・・・」


盛られた椀を空にしてぽつりとこぼすトマスと、つゆをすすってはため息をもらす少女。

目の前にはニコニコしたウィズと、ほかほかとした湯気を立てる寸胴鍋。

二人は、ウィズが持ってきたポーション鍋に舌鼓をうっていた。


マギはこの緊急事態に奮闘してくれた二人を労うため、患者を診療所へ運んだあと店へ戻り、疲労回復にうってつけの『完成版・ウィズ特製ポーション鍋』をウィズと共にこしらえていたのだ。

寸胴いっぱいに入った、ポーションと同じ青さ(毒々しさ、といってもいい)をした鍋料理に、話を聞いていたとはいえ引き気味だった二人だが、意を決して一口すすった後、あっという間に盛った分を食べきってしまったのだった。


「見た目はともかく、味に不満点はなく、精神疲労への効果が高い。ぼうっとしていた意識もはっきりしてきた。緊張と疲労で固まっていた身体も、弛緩し始めている。回復の兆しだ。

ライフポーションを直に飲むよりも遅効性ではあるが、病人にも好まれる可能性が高い」


評価を口にしながら、トマスが空になった椀をウィズへ差し出す。おかわりだ。

なにも食わずに数時間集中し、治癒ヒールをし続けていたのだ。いくら魔力オド回復にポーションを飲んでいたとはいえ、摂取した成分は吸収する間もなく治癒ヒールとして即座に排出されていた。腹に貯まるようなものは何も口にしていなかったのだ。

そりゃあ、一杯程度では満たされない。


「えへへー、よかったです!自慢の看板メニューなので!!」


ウィズが笑顔で受け取り、具材をたっぷり入れてトマスの椀を満たす。味を認めてもらえたのが嬉しかったのだろう、最初よりも大盛りだ。

盛りに驚きながらも、トマスは素直に受け取る。相当、空腹だったようだ。


「・・・・レシピは、部外秘か?」


椀を受け取った後、一転鋭い表情になるトマス。

効能を確認し、病院食として取り入れたいと考えたのだろう。しかし、これだけの効果があるものだ。簡単に教えてもらえるとは思っていない。


「・・・・はい。そこに関してはちょっと企業秘密なので・・・・」


ウィズも真剣な表情で答える。苦労したレシピを簡単に明かすわけにはいかない。

となれば。


「・・・わかった。君のところから定期的に出汁ベースを卸してもらおう。それでいいか?」

「あ・・・・・!ありがとうございます!!」


そう。定期的な収入源のゲットである。

飲食店として営業する売り上げのほかに、出汁を販売することで、ポーション鍋の普及にもつながり、商売もその日の売り上げだけに頼らずとも余裕ができる。いいこと尽くめだった。


「えと、注意点・・・・・食べるときは必ず火にかけて液状にしてください。じゃないと、うまく効果がはたらかないんです」

「ふむ、効果発動に条件があるのか・・・そのまま出汁ベースを飲むのではだめか?」

「うーん、効果はゼロじゃないですけど、ほぼ薄まったポーションなんですよ・・・・。食材と合わせて煮ることでこの効果になってるので」

「ひと手間必要なわけか。面倒だが、味が良いのなら病人から文句は出ないだろう」

「あ!あと、スープは肉・魚どちらでも合うんですけど、相性がよくない具材があって・・・・」


問いにも答えつつ、補足する。

トマスの反応もいい。病院の食事にポーション鍋が追加されるのは確定だろう。

ウィズとしても、自分の店の料理が認められるのは嬉しいに違いない。しかも、定期的な卸先ができたのだ。願ったり叶ったりである。

などと、商談が進められている横で。


(・・・・ああ、なんというか。慣れてしまったなぁ、わたしも)


そのやり取りを見ながら、白ローブの少女――――ミーアがつゆをすすりつつ、ため息を吐いた。

初日から、()()()()()()治癒ヒールを使わされ続け、倒れるように終わる日々。

一回で治しきれないので、ポーションを飲んで何度も何度も治癒ヒール治癒ヒール治癒ヒール。魔力が尽きればポーションで無理やり補充され、治癒ヒール治癒ヒール治癒ヒール治癒ヒール

結果、ひと月でわたしの魔力マナ量は飛躍的に上昇し、ここの激務にも身体が付いていくようになり、今回のこの騒動も乗り越えられてしまった。


(・・・・・わたしも、悪魔せんせいの仲間入りだなぁ)


飲んでいるスープに映る自分の濁った目を見ながら、そんな事を考えるミーアだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ