ダンジョン街、帰還。
【ダンジョン街 「マギ・クラフト」店内】
「あ~~~~・・・・久々に帰ってきましたねー!」
ぐい~、と身体を伸ばしながら、ソルが感慨深げにつぶやいた。
『マギ・クラフト』の面々は、久しぶりにダンジョン街へ戻ってきていた。
たかだかひと月程度、とはいえ、向こうでの出来事が劇的だったせいか、ずいぶん久しぶりに感じる。
「本当・・・・・いろいろありましたものね。なんだかようやく一息つけそうな気持です」
荷物を下ろしたエマも、なにやら疲れた様子だ。馬車による移動の疲れもだが、ここ最近の状況で心労が絶えなかったことも加わって、若干やつれているように見えた。
「あはは、お疲れお疲れー。龍退治の準備はあるけど、さすがに、今日一日はお休みにしようか。街のみんなへの挨拶もあるし」
周囲を(珍しく)気遣って、そんな提案をするマギ。その提案に、ソル・エマ双方が喜びの声を上げた。
マギは単に自分も疲れたから休みたいだけだったのだが、結果的に喜ばれる形となった。と。
「や~、懐かしー!変わってないですね、お店!なんか懐かしさと嬉しさが相まってすごい!!すごくすごい!古巣っていいなー!!」
新たな声が一つ、加わっていた。
「ウィズもごめんね、お店閉めさせてまで来させちゃって。さすがに龍相手だと一人でも戦力がなきゃ厳しそうだったんで」
「いやいや!遠慮しないでください!だって、龍ですよ?!ダンジョンでもそうそうお目にかかれなさ過ぎて、好奇心が、もう、とめどなく!!むしろ、置いてかれてたら勝手に来てましたよ!!」
そう。今回の龍討伐作戦にあたって、力に自信のある冒険者へ助力を頼んでいたのだが、その一人、ウィズは作戦決行よりも少々早めに現地入りしてくれることになった。
曰く「久しぶりにダンジョン街へ行けるので、挨拶も兼ねて」とのこと。
「で!!ちょっと下見に『深層』行きません?!?!ちょっと!!ちょっとだけでいいんで!!
一目、龍見たらすぐ戻るんで!!!ね!」
・・・・真相は「龍興味深い、早く見てぇ」だったようだが。
「・・・・いま言ったでしょ、ウィズ。今日はみんな疲れてるから、ひとまず休むの。
それに、ダンジョンは封鎖してるから、どっちにしろ作戦日まで入れないよー」
マギが呆れたように答える。ウィズは「ぇえ~~~?!」と残念そうにがっくりとうなだれた。
その姿を見て、ソルとエマが苦笑する。
好奇心に駆られるのもわかる。ソルも、一度遭遇していなければ同じような反応をしていたかもしれない。
なにせ、常設であらわれるダンジョンも見つかっておらず、侵入者としても珍しい龍である。その強さから倒したものは英雄として称えられ、語り継がれるほどの化物。
さらに、その素材は非常に丈夫で、武具に使われたら一級品のものになること間違いなし。が、そもそも加工できる技術を持った職人が少なすぎて、一般には出回らないほど。
一生のうち一度は見たい、という冒険者が少なからずいるくらい、希少で憧れな存在なのだ。
・・・・見たら死ぬかもしれない程危険、というおまけ付きなため、ソル自身は、叶うならもう二度と御免なのだが。
「数日すれば嫌でも会えるんだから、それまで我慢して。それまでは準備と休息!英気を養うこと」
マギにぴしり、と言われ、渋々「はぁい」と返事をするウィズ。が、次の瞬間には、
「じゃ!代わりに挨拶がてら、街の方たちに完成したポーション鍋、振舞ってきますね!!あの美味しさと効果をこの街にも普及させないと!」
と、鍋と素材を荷物から取り出し、店の中の調理場へ駈け込んでいった。
移動の疲れを少しも感じさせない俊敏な動きである。なるほど、「挨拶」と言っていたのは方便ではなく、鍋の宣伝も兼ねてきちんと考えていたのか。たくましいものである。
「・・・・・とりあえずウィズは置いておいて」
こほん、とマギが気をとりなおし。
「明日から忙しくなるよ。きっちり、龍討伐できるように応援呼んだけど、二人もしっかり役割があるから、よろしくねー」
ソルとエマへ、声をかけるのだった。




