龍退治のため、第二歩
【首都 中央教会大聖堂 執務室】
「・・・・・・・・救援依頼?騎士団ではなく、俺に?」
白を基調とした、石造りの大聖堂。その中にある執務室にて、とある男が手紙を受け取っていた。
年は30を少し過ぎ、短く刈った髪と無精ひげが特徴的な、騎士というよりは戦士という出で立ち。だが、纏った衣装は間違いなく神殿騎士の制服である。
さらに、胸元には教会の上層部から送られた、いくつもの勲章。
それが、彼が神殿騎士団長、フューリー・ガザであることを示していた。
「左様でございます。
期間としては、来週からの一週間ですな。ダンジョンアタックの随伴とのことです。
例の、龍が発生した、あの街の」
そのフューリーに手紙を届けた、執事らしき壮年の男性。こちらは白を基調とするのはおなじものの、騎士の服装ではなく、側仕えするものらしい機能的な服を纏っていた。
手紙は、見覚えのある人型の印が入った封蝋。間違いなく、あの店からの依頼である。
「・・・・・・・・・・なんとか、誤魔化して断ることはできんか?」
ため息とともに、フューリーが面倒そうな渋面で、無精ひげの生えた顎をぼりぼりと掻く。
とても、規律の厳しい騎士団の団長とは思えない反応だった。
それに対して、厳しい目つきで首を振る執事らしき男性。
「無理でしょうな。こちらは団員の更生のため支援を依頼し、最終的には危機的状況から、その団員の命まで救っていただいた恩があります。反故にするには厳しい状況かと」
「・・・・だよなぁ。だー!くそめんどくせぇ!!なんで団長になってまで、こんな労働させられにゃならんのだ!!!」
執事姿の男性に断定され、頭を掻きむしりながらだだをこねる。もはや大きな子供である。
・・・・フューリーという男、実はもともとかなりの怠け者であった。
生まれて成人するまで、親のすねかじりで生きてきた筋金入りなのだが、とある世話好きに自身の特性を見出され、地獄のような特訓を様々経験するうち、戦闘の才能が開花。
自身の特性から教会の神殿騎士へ推薦されてしまい、仕方なく任務をこなしていった結果、団長として見出されるほど強くなってしまったため、現在その椅子に座っている。
本来、精神性など最も考慮される地位のはずなのだが、彼の能力の特異性・有用性、そして武に敵う者も騎士団内にはおらず、現在も不動の地位となっている。
・・・そのおかげか、方々からの依頼が絶えず、まったく怠けられないのだった。
「神殿騎士の団長なら、よっぽど大きな事さえなけりゃ書類仕事だけの優雅な生活ができると思ってたのに・・・・・!!」
「世の中、そうそう思い通りには運ばぬということでございます、坊ちゃま」
「爺、ここで”坊ちゃま”はやめろ。・・・この歳とナリでいまだにその呼び方は恥ずかしすぎる」
・・・・・・元々貴族の末弟である彼は、幼少からの側仕えの言葉に、仕方なく覚悟を決めた。
「はぁ・・・・・・。どちらにしろ、マギからの依頼じゃ断れねえか。書面で断っても、最終的に物理で連れてかれるしな・・・・・」
「ほほほ。マギ様は歩く治外法権ですからなあ。坊ちゃまがはじめて連行された日を思い出します。屋敷の修繕にはたいそう費用がかかりました」
「やめろ、トラウマを掘り起こすな。調子悪い時にまだ夢で見るんだぞ・・・・」
爺の軽口に、フューリーが青ざめる。当時は爺含め、屋敷の者たち全員あの事態にてんやわんやしていたはずだが、いまとなってはいい思い出、ということらしい。タフなものである。
「・・・・いくらか、騎士団から希望者を募っておけ。腕利きがいい」
「承知いたしました。明日には、リストを作ってお渡しします」
「おう」
心底嫌そうではあったが、渋々依頼を承諾し、この案件を進めるよう執事へ指示を出す。
「・・・・・・・久々の龍退治だ。せいぜい、本番までは楽させてもらわんとな」
教会の誇る、龍殺し(ドラゴンスレイヤー)・フューリーが、ダンジョン街への遠征を決定したのであった。




