治療(ヒール)の特性
【ダンジョン街・療養施設にて】
「痛ってぇーーーーーー!!!!!」
建物どころか街中に、本日何度目かの悲鳴が響く。
ここは、ダンジョン街にある療養所。ここで暮らす人々にとって、なくてはならない場所だ。
そこで、一人の男が治療を受けていた。そこには、
「・・・悪いが、まだ続くよ」
「えっ」
悲鳴に動じることなく、目の前で”治療”を続ける別の男。そして、
「ぎゃああああああ!!さっきより痛ぇえええええええええ!!!」
先ほど以上の悲鳴を上げる、ダンジョンから救助されたソル・リードの姿があった。
「・・・ふぅ。これで、大部分の治療は終わりだ。お疲れ様」
涼しげな顔で、先ほどまで”癒しの力”を振るっていた治療師は告げた。
トマス・アーリマン。この療養所の主である。
「・・・ど、どもっす・・・・ふー、ふー・・・」
息も絶え絶えになりながら、ソルは返事をした。
―――話には聞いていたが、これほどとは。
治療の技術と、痛み。
全身傷だらけからの回復には、相応の対価が必要だ、というのを実感した。
治療というものに、痛みはつきものだ。
ちょっとした切り傷でも、治す際のピリピリとした傷口の痛みを伴う。
なので、治療を使わず自然に治るのを待つ、という人は多い。
逆に大ケガの場合、治療というのは何故か効きが悪くなるうえ、
当然のように痛みを伴う。
ただでさえあるケガの痛みに加え、治す痛みの上乗せ・・・・・・・
過去には、治療の痛みによって死亡してしまった例もあるそうだ。
だから、大ケガの場合は病院へ行き、医者に手術してもらう。それが通例だ。
だが、
「はぁ~・・・なんで医者がいねえんだよ、この街・・・」
がっくりと、ソルはため息を吐いた。
そう、自分だってあのケガで生還した時は「あーしばらく入院だなー」なんて思っていたのに、
あの『自称ダンジョン生まれ』に連れ込まれたここで、その事実を知り、
仕方なく治療を受けたのだ。
「手術は成功する確率がそこまで高くないし、成功しても体が元に戻るまで時間がかかる。
よって非効率的ということで、街のスタイルには合わないんだ」
と、恩人である先生はとんでもない理由を教えてくれた。
「・・・ここの人たちは家畜かなんかなのか・・・?」
思わずつぶやいてしまった言葉を、聞いて、先生は初めてふっ、と笑った。
(でも・・・この人だからできる方法なんだよな。)
先に説明した通り、普通、大ケガをした人間が治療で治るなんてのはありえない。
治る・治らないはもちろんだが、まず治す時の痛みで死ぬ。
成功する確率があるだけ、手術の方が確実なのだ。
そのため、朦朧とした意識で手術を希望したのだが、この先生は
「復帰は早い方がいいだろう?悪いが、治療させてもらうよ。
なによりうちには医者がいない。治癒師だけだ。
だが安心したまえ。腹が破けたり手足がちぎれた程度までは死なずに治せるからな」
なんて、とんでもないことをのたまい。更には
「それと。
治癒の通説はね、患者を死なせる能無しの治癒師の言い訳に過ぎないよ」
と、面白くなさそうに鼻で笑った。
実際、何人もそんな人を救っているらしい。
・・・・・・本当、いろんな意味で規格外の街だ。




