彼はどこから来たのか。
【『深層』ダンジョンにて】
「うああああああああ!!」
悲痛な叫びが響いた。
全身傷だらけ、血まみれ、服も装備もボロボロ。
―――何故、こんなことになった?
自信はあった。技術も磨いてきたし、知識も経験も積んだ。
ランクは中級だが、相応以上の力はあると自負も、あった。
周囲の評価もまずまず。期待を持たれているエースだと。
・・・それが。
「はひっ、はひっ、ぐ、えほげほっ!!」
限界まで走り続けたせいか、呼吸がうまくできない。でも、走り続けるしかない。
だって―――
『Shaaaaaaaaaaa!!!!!』
命を刈り取る存在が、すぐそこまで追ってきている。
「く、そ・・・・なんで、くそぉ・・・」
冒険者ソル・リード。挫折を知らなかった彼は、
ここにきて、はじめての挫折を味わっている。
『深層』のダンジョン。
国が生まれる前からこの僻地に存在し、幾多の冒険者を吞み込んできた、魔窟。
だが、現在は最深部まで攻略され、踏破するのは難しくない―――
そう、聞いていたのに。
「こ、んな、聞いてない・・・。こんなやつがいるなんて!」
ついに行き止まりまで追い詰められてしまった。目の前には、巨大な、鋼の蛇。
体にはいくつもの武器や、持ち主だったものが突き刺さったまま、こちらへ鎌首をもたげている
先ほど、自分の武器もやつの体に弾かれ、ついには折れた。
「こんな化け物が中級だっていうのかよぉ!!!」
「そうだよー?」
気の抜けた声が聞こえたかと思うと
「”炸裂(Burst)”」
ひゅん、と何かが飛来する音、そして。
「Shaaaaahaaaaaaaaaaーーーーーー!!?」
目の前で引き起こされる爆発。
正確には、目前まで迫っていた蛇の化け物が、内側から爆発していく。
突然の出来事に、ソルは呆然とするしかない。
いま、なにが起きた・・・?
「もー、基本的に外側はカタイから内部構造に干渉できる魔法中心で、ってのが僕以外向けの『深層』のセオリーなのに。
『深層』の解説書、読まずにきたなー?うっかりさんめ」
そこへ、困り顔をしたまま黒いローブの人物が近づいてきた。
さっきの爆発は、こいつが・・・?それに、ダンジョンの解説書?そんなもの・・・
「・・・そんな、眉唾なもん。あてに・・・」
「なるよ。だってここで生まれた僕が書いたものだもの。
地元に詳しくなるのは当然のことでしょー?」
「・・・・は?・・・・・」
いま、こいつ何と言った?
ここで、生まれた?ダンジョンで?俺がいま死にかけた、ここで?
「まー、話すと長くなるから省くけどさー。
とりあえず次からは、うちで解説書買ってから潜るのをおすすめするよ。損はさせないから安心して。
あと、ここの敵相手に効果てきめんな、攻撃を補助するための道具も置いてるし。
ほかには・・・・・・」
直前までの命の危機から、いろいろなことが起きすぎた。
ソルの意識は、もはやキャパシティーを超えた状況と情報に翻弄され、暗闇へと落ちていった・・・・。




