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未知の個体と狂う予定

【引き続き 『水流』ダンジョンにて】




「49・・・・・・と!」

「ほい、”麻痺(paralyze)”!」

「ナイスー!!ラスト、50!!!」


ダンジョンへもぐり始めて数日。

ウィズとソルは、順調に素材を集め、最後のノルマにかかっていた。


「今のでスライム素材は完了、ですかね。いやー!これもまた多いわ!」


飛び散ったスライム片を瓶に詰め終えたところで、ソルがため息とともに声を上げる。

今回の依頼の中で一番収集数が多かったのが、この『スライム素材』だった。


「結構いろんなところから素材依頼あったもんねー、スライム。

装飾品店に、道具屋、鍛冶屋。そんなものに?!ってとこからもあったびっくりしたよ!

・・・・・一番驚いたのは()()()だけど。

食べられるんだ、あの素材。うちでも考えてみようかなぁ!鍋で!!ね、ソルくん!!」

「・・・・・マギさんに相談してから検討してくださいね、それ」


チャレンジ精神旺盛なウィズに、一抹の不安を抱きながらそっと釘を刺すソル。

この女性ひとは、思い立って行動する能力が高いが、そこへの算段など計画する能力が低い。

マギ曰く、


「鍋屋も、料理ほとんど作ったことないのにノリで再建しようとしてたからね・・・。

や、行動力はすごいけど、もうちょっと考えてやってほしいなー。教えたら覚えてできるだったからいいけど。センスあるのになー、惜しい天才だなー」


と嘆くほどである。

・・・・それはともかく。

マギたちが引き受けた期間内の、『黄金の果実』への依頼。そのすべてが完了した。


最初に比べ、ウィズと組んでから、ずいぶんと素材回収が楽になった。

敵の『釣り』をする回数が少なかったこと、率先してウィズが敵に向かってくれたこと等、ソルの負担が減ったのもあるが、途中休憩時に食べた『ポーション鍋』の効果が大きい。

通常のポーションでは魔力マナを回復するのが精いっぱいなのだが、鍋という調理法に加え、()()()()()と共に摂取することにより、組み合わせ次第で体力の回復率まで上げてくれるのだ。


「・・・・まぁ、魔石ませき()()()よりは、スライムの方がまだ食材っぽいですけど」

「あははは!何事も挑戦、ってね!結果、こんな組み合わせが生まれたわけだし!」


そう、魔石ませきである。魔道具を動かしたり、人造人形ゴーレムの核にしたりと、なにかと必要になるダンジョン由来の鉱石。それを粉末状に削りポーション鍋に混ぜることで、体力の回復効果が得られることを、ウィズがひとりで発見していたのだ。

即効性はないものの、自然治癒による体力の回復量が増大する鍋。ダウングレード版のライフポーション、とでもいうのだろうか。ずいぶんと助けられた。

おかげさまで、あとは、そのまま出口へ戻って終了・・・・の予定だったのだが。




「嘘・・・・なにあれ」



帰路の途中、大きな湖が広がるフロアで、少々奇妙な光景を見つけた。

サハギンが、()()()()()()()()()()()()のが見えたのだ。


・・・・元来、サハギンというのは、狡猾ではあるものの、知能自体は低いとされている。

そして水棲の生き物の中では凶暴性が高く、協調性が低いため、2、3匹の群れはともかく、()()()()()()()()()()()()()()

だが―――――――


「・・・・・総勢()()()。群れ、ですね。まぎれもなく」


湖を挟んだ岩場の陰で、奴らにばれないよう、ソルが声を潜める。離れているとはいえ、あそこまでの群れを相手にするのは、二人では危険だ。


「そうだね。こんなにいっぱいのサハギン、はじめて見た。力で従わせてるのは、いくつか見たことあるけど・・・・・」


ウィズも、声量を落として警戒を強める。そうそう見つかる距離ではないが、用心に越したことはない。

その警戒中、ウィズがとある者に気づく。


「あ!見てソルくん、あいつ!」


サハギン、のようなのだが、一般的な個体より、体が大きく、体色も濃い。

群れの中心で、周囲を警戒するように、辺りを見回している。


「・・・・リーダー格、群れの長の『アルファ』くん、ってとこかな」

「珍しい個体ですね。あれも見たことないや・・・・ウィズさん、ギルドからなにか聞いてます?」

「いや、なにも。あたしらが第一発見者かもね。せっかくだから、このまま討伐しちゃえたら報酬もはずんでもらえそうだけど・・・・ちょっと危ないかな」


考えが足りない、と言われているウィズだが、こういった危機管理には優れている。

経験からくるものだろうが、普段生活するときもこのくらい慎重だったら、「惜しい天才」などと言われなかっただろうに・・・・などとソルが思っていると。

ウィズが懐から望遠鏡を取り出し、ソルへ手渡す。


「ひとまず観察ね!ソルくん、生体スケッチとメモ、とっておいてくれる?ギルドへの報告用に」

「えー・・・?おれ絵は苦手なんで、メモだけでいいっすか?」

「ダメ~!下手でもいいから、簡単な絵もつけた方が伝わりやすいよ?あと、ソルくんの絵が見たい!」

「さてはそっちが本音か!!!もう、わかりましたよ・・・・・笑わないでくださいね?」

「えへへへー!よろしく~あたしは警戒続けておくね!」


と、それぞれの役割を決めて二人が群れへ視線を戻した直後。

奴――――――――――――――――『アルファ』が顔をこちらへ向ける。

湖を挟んだ反対側。不用意な大声は上げておらず、岩陰から身を乗り出すようなヘマもしていない。

気づかれるような行動は何一つしていなかった。なのに。

まるで、こちらに何かがいるのを悟ったように。示し合わせたように視線が合う。

瞬間。


「――――――――――――――――え」


()()を一瞬で移動してきたかと思うと、その『アルファ』は、ウィズの前に立ちはだかり、


「・・・・・・やば」


防ぐ間もなく、その鋭利な爪で、容赦なく、彼女を切り裂いた―――――――――――――


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