仕事を終えたらご飯です
【主都『黄金の果実』ゲストルーム】
「お、ソル君、おつかれー。頑張ってきたようだねえ」
「ご苦労様でした、ソルさん」
素材集め初日。くたびれてベッドの上に倒れて込んだソルに向けて、マギとエマがねぎらいの言葉をかける。二人はもともと素材ストックがあったポーションとライフポーションの精製のため、工房にこもって作業しており、ちょうど必要分のものを一日かけて作り終えたところだった。
・・・・ソルは、かろうじて「ぁぃ」という返事をしたまま、動かない。
ギルドに来る一日分の素材収集依頼を、アトラがいたとはいえ、たった二人で完了した反動だろう。『釣り』の囮役ののち、標的への奇襲、陽動、その他採取など、山ほど働かされたのだ。
もはや悪態をつく余力すら失っている。
・・・・・同行していたアトラはピンピンしているが。さすが、ギルド長は伊達ではなかった。
「・・・・マギ。いくらソルさんに比があることの結果とはいえ、初日からハード過ぎない?
しかも、明日からアトラさんもいないんでしょ?普通に過労で倒れちゃうんじゃ・・・・」
隣にいたエマが、心配そうにマギへ耳打ちする。
そうなのだ。今回、監督役として同行したアトラは、
「あれだけ腕をあげたなら、私がいなくとも問題はないでしょう」
と太鼓判を押し、自身も休暇に入ってしまった。
・・・最後まで同行・協力してもらっていたら元も子もなかったので、休暇に入ってくれる分には問題ないのだが。
「大丈夫。秘策と秘密兵器がいるから」
心配するエマに、マギが意味深な返答をし。
「さーー!労いのご飯いくよー!!起きた起きた」
ベッドに沈んでいるソルを担ぎ上げ、そのまま外へ連れ出す。
エマは不安そうに、二人の後を追った。
【主都『飯処 ユタカ』】
「到着!!今日の夕飯会場はここでーーーす」
「え、ここ・・・・」
到着したのは、主都にしては少々こじんまりとした店構えの大衆食堂『飯処 ユタカ』。
かつて勇者となった者が作り、その子孫が代々継いでいる店だ。
「・・・・マギ、ここに来たってことは、ついに・・・・?!」
エマが少々うろたえながらマギを見やる。マギの方は、看板を見ながら感慨深そうにうなずいた。
「うん、完成したって。あとは諸々報告と、暴走しないように忠告と、あと協力要請・・・・・」
「師ーーーーーーーーー匠ーーーーーーーー(しーーーーーしょおーーーーーーー)!!!!!!」
ばごん!!という轟音と共に吹き飛ぶ店のドアとマギ。
声をあげる間もなく、その先の壁へと追突し、めり込んでしまった・・・・。
「・・・・・・・・はぁ」
エマは、衝突ギリギリで手渡されたソルを抱えながら、毎度見慣れてしまった光景にため息を吐く。
「変わってませんね、ウィズ・・・・・いいことか悪いことか、わかりませんが」
壁にマギともどもめり込んでいる小柄な人物へ、声をかけた。