ようこそ主都へ
【主都『ヴェネティ』にて】
「『マギ・クラフト』ご一行様!!主都ヴェネティへようこそーーーー!!」
わっ、と沸き起こる歓声。主都ヴェネティの入口で、思いがけず熱烈な歓迎を受けてしまい、ぽかんとするソル。
その横でマギとエマは少し困った笑顔になりながら、どうもどうもと出迎えてくれた人々に手を振っている。
――――――――――ダンジョン街を出て数日。
『深層』ダンジョン封鎖と龍出現の報告も含め、知人のギルドへ事前に連絡はしていたのだが、ずいぶん派手な歓迎である。
「マ、マギさん、あの・・・・あの、これどういうコトすか??なにごとですか???」
二人と一緒に歓迎されてしまっているソルが、困惑をさらに深めている。
辺境の街の道具屋の主人の歓迎のされ方ではない・・・・・・顔がそう物語っている。
・・・・・・ちなみに、首にはレイをかけられ、差し出された食べ物を頬張り、プレゼントを受け取り両手に抱えまくっているので、困惑はともかく、満喫してはいるようだが。
「あー・・・・商業ギルドさんと、ちょっと付き合いがあってね。うちで開発した商品を卸してるのよ」
「ここ付近のダンジョンで役立ちそうなものができた場合に交渉して、主都のお店に置いてもらっているんです。結構評判いいんですよ?最近では大口の取引も増えてきていて。
あ、神殿騎士団もその大口の取引先のひとつです」
照れくさそうなマギと、キリっと得意げに説明するエマ。
意外な資金源を知りへぇー、と肉串を頬張りながら感心するソル。・・・・美味しそうだね、それ。
と、そこへ
「ええ、ええ!い~い取引をさせていただいております」
と、派手な柏手をパァンパァンと響かせながら歩み出てくるガタイのいい男性。
その人物を見て、ソルが顔を青ざめた。
「げ・・・・・・アトラ・・・・」
「ご無沙汰しています、マギ様。先日いただいた観賞用の魔水晶、すばらしい一品でした・・・
光をあてて壁に写すと、まるで部屋が水晶造りに変わったかのような幻想的な気分を味わえる。
万華鏡、というのでしたかな?魔術ではなく、技術であのようなものが作れるのはほんとうに素晴らしい。大切にさせていただいております」
「いやぁ~、どうもどうも。手慰みに削ってた水晶がたまたまいい感じにカットできただけなんだけどねー。量産はできないから、せめて贈り物に、と思ったけど、喜んでもらえてよかった!」
厳ついながらもあたたかな笑顔で話しかける大男・・・アトラと、小柄ながら怖気づかず朗らかに返すマギ。
見た目は非常にアンバランスだったが、信頼しあっているのが見て取れた。
「エマさん、ご機嫌うるわしう。本日もお美しいですね。
先日は我がギルド傘下の者たちへの講習、ありがとうございました。皆、非常に有意義なものだった、としきりに語っておりまして。是非、次があるならばまた参加したいと」
「あら、ありがとうございます♪交渉術は商売には必須ですし、わたしなどの拙い知識が皆様の役に立ったなら幸いです」
今度はうやうやしく頭を下げ、敬意を示すアトラ。対し、柔らかな笑みと美しい礼で返すエマ。
双方の尊敬しあう関係が見て取れた。
そして・・・・
「さて・・・・・・・ソルよ」
「わーーーーーーーー!?やべ見つかった!!!!」
「見つからないとでも思ったのか?この俺から。ええ?おい」
首根っこをつかむ厳ついギルド長と、逃げ損ねて青くなっているソル。
「え、アトラさん・・・・・?」
「・・・・・・ソル君、お知り合いで?」
困惑するエマとマギの問いに、
「・・・・・・・えーーーーー、と・・・・・・・・・・・・・・はい」
首根っこをつかまれたまま、しゅんとうなだれるソル。
・・・・・そこには、両者の関係性がありありと表れていた・・・・・・・。