これからのこと/初めての試み
【『マギ・クラフト』 二階居住スペース】
「というわけで!ギルドにも報告したけど、ダンジョンは龍問題が解決するまで封鎖。
伴って、店の営業もお休みでーす」
「休み!休みっすか!!」
ソルが飛び上がって喜ぶ。依頼主への報告が終わったあと、彼へも伝えなければ、とお店に戻ってから経緯などと合わせて話したのだが、ずいぶんな喜びようだ。
「いや~、よかった!療養明けて働き始めてからはじめての休み!!
仕事内容はしんどすぎてホントどうかと思いますけど、ちゃんと休むことあるんですね、この店!
借金返し終わるまで毎日働きづめか?と震えてたんで、やー、ありがたい!!龍様々!!」
なにやら仕事への不満がたまっていたようで、無意識にちょっとした批判までしてくる始末。
あと君、その龍に殺されかけてるんだけど、覚えてる?現金過ぎない?
「・・・まぁ、主都に用事もあったしね。そろそろ行ってあげないと・・・」
その手のひら返しにあきれつつ、思案顔するマギ。あまり乗り気ではないようだが・・・・
「あー、彼女のとこですね。この事知ったら封鎖関係なくダンジョンに飛び込んじゃいそうですし」
「そうなんだよねー・・・・あの子の好奇心が龍に向かうまえに、向こうで止めておかないと・・・・・」
「ん?彼女って?」
苦笑しながら二人が話す相手など珍しいため、ソルが興味を持ったようだ。
「うん、弟子のひとり、かな。いま主都を拠点にしててね。そこで冒険者をやってる。
結構腕は立つ子でね?それなりに名前も売れてるんだけど・・・・その」
「いい子、なんですけど・・・・・一個集中すると周りが見えなくなる人なので・・・・」
「主都のほうの冒険者道具について、需要とか事情とか、仕入れついでに情報交換してるのよ。
その情報は正確だし、助かってるんだけど・・・・・・店の宣伝の方がなー。
もともとそっちメインのはずなんだけどなー。ぜんぜん成果がみえなくってねー・・・・」
二人が苦笑しながら、遠い目をして語る人物。俄然興味が湧いたソルは。
「あの、主都行くんなら、俺もついてっていいすか?その人も気になるんで」
と、同行の意思を示してくれた。
「あ!ありがとう助かる!!いやー、手間が省け・・・・むぐ」
「結構、買い出しとかもする予定でしたので。よかったですね、店長~?」
「んむ・・・・う、うん」
突然マギの口を塞ぎ、かぶせるように話しかけるエマ。若干の怪しさを感じつつ、
「?・・・まぁ、荷物持ちぐらいなら、手伝いますけど・・・・・」
首をかしげながら、今度の地獄への切符を手にしてしまうソルなのだった。