そして、僕は生まれた。
【過去 ダンジョン内部】
目覚めると。
倉庫のような、広い空間にいた。
壁際には、人形―――――おそらくこの世界のゴーレムがずらりと並んでいる。
で、自分の身体を動かしてみてみると・・・・やはり、似た質感の腕が見えた。足が見えた。
・・・自分で自由に動かせる、手足があった。
・・・・正直、嬉しい。
さっきまでの、生身の自分の手足も嬉しかったけど。ちょっと感覚がふわふわして、現実味が薄かったし。
これから、感覚もきちんとある、痛みのない身体で生きられる、と思うと、感動で走り出したい衝動に駆られた。
が。その前に・・・・違和感。
・・・・・・・・・・・なんか・・・・・自分のシルエットが、丸い。
腰とか肩とか、ちょっと、僕が想像していた『ゴーレム』とは違う気がする。
ちょっと、見た目、華奢な気もするし。
ていうか・・・・・明らか、胸部の核がはまっている付近、流線型のふくらみが・・・・・
そこで、はっ、と気づく。魔王さんの言葉。
『人形で転生したい、というのは予想外だったため、少々時間がかかったが、なんとか適した素体を見つけることができた。ただ、完全な希望通りとはいかなかったので、そこは理解してほしい。
ああ、言語に関しては問題ない。君の魂を固着する核に、翻訳する術式を仕込んでおいた。
なにせ、「魂」という膨大な情報を組み込める巨大宝珠だ。意味を伝えるだけの術式程度、追加しても余裕があるくらいだった。入力された場合も出力される場合も問題なく機能するだろう。
もちろん、希望された生殖機能については問題ない。
下腹部に、提出してもらった君の書類の情報をもとにした体細胞を生成するよう、術式を組んだ。問題なく子作りできる。生まれるのは相手の細胞をベースにすることになるが、君の細胞もきちんと取り込まれることだろう』
送り出す前に確認で言っていたアレは、つまり、
『オ゛ ンナ ・・・・?』
初めての身体で喋ったはじめての言葉は、ザラついたそんな一言だった。