表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/49

これまでの僕/これからの僕

【??? 待合室】



先ほどの確認が済んで、しばらく。

今度は、上の階の”待合室”に案内された。

やはり役所と同じシステムらしく、何度かの書類などの確認・審査を経て、次の転生先が決まるのだそうだ。


――――そう、死後の世界。


天国や地獄、黄泉の国。呼び方はなんでもいいが、そういう認識であってるそうだ。

・・・システマチックな『あの世』もあったものだが、現世の人口増加などに対応していった結果らしく「ずいぶん楽になりましたよ」としみじみ『受付』の方が言っていた。



・・・さて。僕自身だが。

最初に多少の混乱はあったものの、死んでいたこと自体にショックは少ない。

事故などで突然死んだ場合はショックを受ける人も多いそうだが、寿命・病気などで死んだ人々は、おおむね僕のようにすとんと受け入れる人が多いそうだ。


重ねて。

僕の場合、幼少の頃に壊死して失った手と足があること。

薬の副作用で全身にあった倦怠感や痛みが感じられないこと。

・・・・それらが、ここを現世ではない、と信じさせるのに十分な理由となった。

『受付』の方曰く「ここにいる間、支障がないように」とのことだったが、結果。


「・・・蒔田さん、ありがたいですけど、すごく素直に書類内容受け入れてくれますね?

いやありがたいんですけど、ちょっと珍しいもので」


珍しがられるほど、素直に受け入れてしまった。

・・・実は、手が使える、足で歩けることに浮かれていて、あまり他が気にならなかっただけなのだが。






そんなことを繰り返し、十階まで登ってきた。

案内してくれた方にどうも、と頭を下げ、扉を開く。


「・・・・ようこそ、蒔田さん。おかけください」


入ってすぐ、声をかけられた。他では順番待ちだったのに・・・システムが違うのかな?

呼ばれた仕切りの席に座る。すると、目の前に、二人の人物が現れた。


「十階までお疲れさまでした、蒔田さん。ここの書類確認で、申請は完了です。

転生されるか、少しこちらでゆっくりされるか、選べますよ」


丁寧な対応をしてくれる、ここまで見てきた市役所の職員っぽい方と、


「できる限り早めの転生を所望する。こちらは待ちくたびれているのでな」


なんか不遜な、黒スーツの厳つい顔の人だ。


「魔王さん、そうはいっても向こうの意思を尊重しないと。クレームで尊厳値そんげんち落ちますよ?」

「ぬ・・・・またか。それは困る」


・・・・なんか揉めてる。ぇえー、ここに来て面倒なタイプの職員に当たっちゃった?

あと、なんか魔王とか言ってる。え、なんか偉い人?あと尊厳値ってなに?


「・・・蒔田さんすいません。ちょっと事情がありまして」


申し訳なさそうに、職員っぽい方が説明してくれた。


なんでも、人間への転生はやっぱり人気で、かなり順番待ちしないと転生できないそうだ。

とくに、地球への転生は、ちょっと人口的にも大変らしく、遠慮してもらっているとのこと。

が、他世界では、事故や戦争・獣害などで人口が減少しがちな世界ところもあり、

そこへの人間へ転生を検討してくれる方には、順番待ちもなく、更に()()()()()()()転生してもらっているんだそうだ。

今回、隣にいた魔王さんも、少々困った事情を抱えた世界の主、だそうで。


「・・・・わが世界は、魔物被害による人間の減少が、思っていたよりもずっと早い。

このままでは、魔物に人類が淘汰されてしまいかねん。

勇者と呼ばれる人間による()()()()()は、いままで何度もしてきた。

だが、それだけでは根本的な解決にはならん。つまりシステムとして、人間が死ににくくなる環境を作らねばならんのだ。

とはいえ、魔物を全滅させてしまっては、わが世界の根本のバランスが崩れる。

どうしたものか、と思っていたところに、貴様の話が聞こえてきた」


・・・なんでも。生前の自身の身体について、ひとつも()()()()()()()()

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

そういった事が、『類まれな精神性』として評価され、他世界へ転生するなら通常よりも特典が付く、とのこと。


・・・単に、生まれた時からその状態だったから、他の快適さを知らなかっただけだったんだけど。

あと、羨むもなにも、わりと、好き勝手やらせてもらってたからなー。

手先が器用な父さんに改造してもらった電動車いすで、病院内を爆走したり、とか。

PC使って文章代筆するアルバイトとかさせてもらって、ちょっとお金稼いでみたりとかもできたし。

・・・羨んだり憎んだりする必要、なかったもんな。

だから最後、声の出ない口で「ありがとう」って言って死ねたんだと思う。


「貴様を・・・わが世界に迎えたい。ただ魔物を倒すもの、ではなく、人類の成長を促す起爆剤として」


なんていう、魔王さんの世界のプレゼンを受けた。

いわゆる魔法がある世界で、魔物が跋扈するダンジョンが各地に存在するんだそうだ。

なんでも、これまで転生した『勇者』たちへの対応と世界の管理で、だいぶクレームがついてしまったらしく。

世界における内申点、的な、尊厳値というものがだいぶ下がってしまったとのこと。

尊厳地が下がる=世界の環境が落ちる、んだそうだ。

つまり、内申点がそのまま世界の存亡に関わる、と。えげつねえなぁ、神様の世界。


ビシッと「起死回生の一手となるのだ」と決めていたけど、表情が不安そうだった。

自分が直接関われないもの、だもんなー。そりゃ不安か。これまで失敗してたっぽいし。

自分の世界を守るのに必死なんだなー。えらいなー、と魔王にちょっと好感を持った。

・・・・正直、特典が付く、と言われたって、自分に何ができるかわからないけど。


「あ、書類の確認できました?・・・・・お」


職員の方に、最後の書類を渡す。

『異世界への転生は検討していますか?』という項目の、『はい』に印をつけて。


ま、何をしたらいいかまだわからないけど。思いついたことは、全部やってみよう。

どうやら今度は五体満足で生きられそうだし。

あとは・・・・好きな種族ものになれるなら。


「む、特典のリクエストか。よい、ここで聞こう。」


僕からの希望。

今度は、失わないように。失っても、どうとでもできるように。


「ご・・・・・・・・・ゴーレムへの・・・・転生??」


さきほどの世界説明で聞いた、人形ゴーレムが、僕の希望に合いそうだったのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ