で、結局ここはどこなのか。
ちょっと説明回です。
永禄2年5月3日朝起きたころ。
賢明なる読者の皆様方はお気づきの事かとは思いますが、3日目の朝でございます。おはようございます。わたくし、川崎こゆずは、この3日間溜めに溜めた言の葉を吐き出したく思います。
「で、結局ここはどこなんだ!」
朝から大声を出して申し訳ない。
2日連続でふて寝してしまい誰に聞くでもなく、自分で答えを探すでもなく流されに流されてしまった。
「どうなされた、こゆづ殿!」
我縁さんが駆けつけてくれた。ありがとう。いきなり死に掛けの人の世話をさせるブラック寺院だけどあんたいい人だよね。で、ここはどこ?
「び、備前の国と児島郡の境の村である。」
なんで俺は海岸に流されていたの?
「そこまでは知らぬ」
なんで知らないの?今は西暦何年?
「せいれきってなんじゃあ…。それに質問しすぎじゃろ。ひょっとして記憶が?」
いや、記憶はあるんだよ。あるのが問題なんだよ。いっそ忘れて居たらな。。。
途方に暮れていたら坊さんが優しくしてくれた、
「取り敢えず朝餉でもどうじゃ?調子が悪いようならば部屋に運ぶが。」
いや、一緒に頂きます。
「では用意をしておるので少ししたら来なさい。」
はーい。部屋を離れる足音が遠くなってからおもむろに掛布団に顔をうずめて絶叫した。
『ナイチンゲェェエルゥゥ!!!!!!』
「呼んだかしら。」
呼んだよ!坊主じゃ話にならねぇだろ!説明しろ説明!
「ここは永禄2年、西暦で言えば1559年ってところね。場所は岡山県の児島と水島の間くらいの所ね。あなたが海岸に漂着していたのはこのあたりが元々は干拓による埋め立て地だからね。知ってた?あなたの住んでた地域はこの時代海の底だったのよ、笑えるわ。」
笑えないんだよなぁ。マジ殴りたい。聞いたら聞いただけ教えてくれる所がなおムカつく。なんでこんなひどい事が出来るの?
「勘違いしないでほしいんだけれど、私は趣味や嫌がらせであなたをここに送り込んだわけでは無いわけ。あなたが何もしたくない。帰りたい。というなら元の時代に返してあげる。」
え、帰れるんですか?
「帰れるわ。ただし看護師の資格ははく奪したうえで、一生医療には関われない体にするけれど。」
どんな体で、おれに何をするつもりなんだ!
「ここで、今、あなたが必要とされているとしたら?」
何故か心臓が大きく高鳴った。
「ここが時代の分岐点で、あなたが今そこに関われて、たくさんの人が救われるとしたら?」
「あなたにその能力があると判断したうえで、たった一度のチャンスにあなたを採用したとしたら?」
「うふふ、私でさえもまだ生まれていない、この時代で、貴方に賭けてみたいと思ったのよ。」
目の前にいる人間が、天使のようにも悪魔のようにも見える。帰れるならば今すぐ帰りたい。だが、逆らえない自分がいる。
「ほんの少しの間、あなたに悩む時間をあげる。」
そう言って彼女は掻き消えた。だからなんなんだよその現われ方と消え方。
「おーい、朝餉じゃぞー。」
遠くで能天気な坊さんの声が聞こえる。とりあえず朝飯にしようか。
「うむ、参る。」
隣の部屋から声が聞こえた。いや怪我人が参るな。安静って言っただろうが。とりあえず朝食とは真逆の方向にダッシュした。俺の明日はどっちだ。