田鹿様と栄養学/風呂と薄荷
永禄2年5月18日 砥石城
ごめんくださーい。おれは再び砥石城に舞い戻った。実務者と炊き出しについての話をせねばならぬ。
「話は聞いておる。無理難題を持って来てくれたものじゃ。」
この方は、春家様の家臣である田鹿様である。おれさま初見である。だが言うべきことは言わせてもらうぞ。とりあえず、少なくてもこの城下町に住んでいる人間には行き渡る量を用意してください。期間は1か月。玄米、味噌汁、大根の漬物、鰯か鯵を一人に最低一匹はお願いします。
「海の魚が量を確保できるかが難じゃが、1か月ならばまぁ無理ではないか。本当に治療になるのか?」
お、看護師としての見解だな?栄養学上等だ。かかってこい。
「そも、その食事のなにが治療になるのじゃ。」
医食同源といってだな。そもそも食事と医療とは密接に関係しているよ。その体は何で出来ているのか、について思いを馳せることが大切なのですよ。田鹿様。口から入る物で人間の体は作られているのです。その構成する要素が…聞いておられますか田鹿様。
「もうよい。これ以上聞いていても頭が痛くなりそうじゃ。手打ちにされる前に早くいね。」
お口が悪うございますね田鹿様。おっと手打ちにされるとたまらないのでおれは逃げ出した。後は頼みましたよ田鹿様ー!
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城下町
走って逃げてきたから汗をかいたから服を匂ってみた。臭い。匂うぞ。そういえばしばらく入浴も、していない。おれは閃いた。そうだ、ナイチンゲールを誘って風呂屋に行こう!
「行きませんよ?」
一蹴された。萎えるわー。
「この時代は混浴でしょう?私は衆人にみだりに肌をさらす趣味はありません。」
なるほどね。まぁ温泉文化の発達している現代日本人でもなければ他人の前で裸になることなんてそうないよね。納得したおれは桶を持って井戸に行き水を汲んで手拭いと共にナイチンゲールに差し出した。お先にどうぞ。
「なによ。気が利くじゃない。…覗いたら治療しますよ。」
何をとは聞かないおれは成長したんだと思うことにした。散歩にでも行くか。
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肉をこいつらに常食させるにはどうしたらいいかな。それが今日の散歩のテーマである。肉美味いよね。牛肉いいよね。牛乳も栄養価高いしな。鶏も良い。卵も良いぞ。テンションが上がってきた!こいつらに肉食の良さを知らしめてやるのだ。牧場物語でもやるか。牛と鶏のプランテーション化?盛り上がって来たぞー。だがしかし、これは流石に小夜に相談しないと怒られる案件だと知っている。おれはしょんぼりした。ふと道端にハッカが生えているのが見えた。ハッカ…え?俺は二度見した。ニホンハッカじゃん。ほぼ雑草やんけ。おれは一株根から掘り起こして持ち帰ることにした。めーぐさー。めざめぐさー。
ただいまー。
「おかえりなさい。水は代えておいたわよ。」
サンキューナイチンゲール!あと、これ見て!ミントだよミント。ナイチンゲールは露骨に眉を顰めた。
「捨ててきなさい。庭がダメになるでしょうが。」
おれはきょとんとした。ニホンハッカは地下茎で増殖しないから計画的に育てられるよ。効能はいわずもがなである。せーよー薄荷とは違うのだよ。
「へぇ、普通に勉強になったわ。私が植えておくからさっさと汗をぬぐいなさい。」
おれは体を拭った。気持ちいいぜ…。ハッカは古くから胃腸薬や鎮痛薬、香料として使用されてきた。
飲用では食欲不振、胃もたれ、腸内ガスの排出などに効くとされ、外用するときは、虫刺されのかゆみ止めに生葉を揉んで汁を患部につけるか、頭痛、筋肉痛、肩こりにも患部へ塗ると、痛みを和らげるとされていた。芳香が残っている薄荷があれば、布袋に入れて風呂に入れると、肩こり、筋肉痛などを和らげるのに役立つと言われていたのだ。ミント風呂入りてぇなー。クーラー無いし、冷を取る方法も必要だ。よーし。なんか考えるか!
お気づきだろうか。こうやって無駄にタスクを載せて回る。現代日本人の良くない所が今開花しようとしていた。言うほど成長している?