俺を怪異と恐れるな。
第2話です。大体1000文字前後で進みます。
毎日ちょい読みでお楽しみください。
永禄2年5月1日午前中。
ざばぁ。
と波が来る。暫し波打ち際にて戸惑う。はて。ここはどこだろう。
おれは、そうおれは女に絡まれて…どうなった?
なぜ、おれはここで波に打たれている?
数メートルすると緩やかな海岸があり、その先に幾つかの古ぼけた小屋が見える。
少なくてもコンクリート造りではなく。なんならば子豚ちゃんが作るワラの家だろう。
おれが蹴っても壊れそうだ。その先に山の中に幾分か、『まし』な木の家がある。
一家族で済むには大きすぎ、寄り合いにするには少々狭かろう。
春の海は寒い。俺は取り敢えず陸に上がることにした。
現状は分からぬまま。流されるがままに第一歩目を踏み出した。
「おう、なんじゃ主は。水の底から這い上がってきたような面をしおって。
村人が恐ろしがって拙僧のところまで助けを呼びに参ったわ。死人でないなら名を名乗れ。」
藪から棒に袈裟を着た老人(拙僧ってことは僧侶?)に貶されてげんなりする。死人だったらどうするんだ。
「おれの名前は川崎こゆず。」
「そうか。わしの名前は我縁。そこの山のしがない僧侶じゃ。寺にはワシ一人しかおらんからの。和尚でもある。」
「そうか。おれは看護師だ。看護師…わかるよな?」
「分からぬ。それにその服装も見慣れぬ。正直言って主を異人か妖ではないかと疑っておる。」
もはや人だとすら認識されてねぇ…おれは段々と苛立ってきた。
職を求めただけでこんなひどい扱いを受けるのか?海に浸かっていたせいで疲労が溜まり、
朝から何も食べていないからか腹の虫までなってきた。
「…くだらねぇ。」
「なんじゃと?」
「くだらねぇ。下衆の勘繰りは休むに似たりだ。だったら俺も休ませろ。
飯と宿を要求する。対価は体(肉体労働)で返す。拒否するならもうその辺でごろ寝してやるぞ。おれは疲れているんだ。」
がえんも、その辺の奴らも残らず絶句してこちらをみていた。知ったこっちゃねー。文句があるならナイチンゲールを出せ。
浜辺に生えている松に寄りかかりずるずると座り込んでやった。
「まぁ待て。取り敢えず休む場所と飯くらいは用意してやる。だから立ち上がって寺までは歩け。」
せっかく座ったのに…文句を言う気にもならずただぼんやりと後をついていった。
「取り敢えず寝ろ。起きたら飯を食え。喰いながら事情は聴かせてもらうからな。」
がえんの言葉を聞きながら、うっすい布団にくるまってその日は眠りについた。
よほど疲れていたのだろう。飯も食わず翌朝まで夢も見ずに眠った。
どうでしょうか、少しでも楽しんでもらえていると嬉しいのですが。
感想や批評お待ちしています。少しでも良い作品作りの為に。
ではまた明日。