釣れないナイチンゲール
永禄2年5月7日朝
我縁坊ー!
「どうした嬉しそうじゃの。」
三平太が仲間になったよ!やったね!
「ほう。確か吾平の倅であったな。」
うんー。穴じゃこいっぱい取ってなー。
「ほうか、遊び相手ができたか。」
?違うよ?おれはきょとんとした。
「いや、昨日は遊んでもらったのでは?」
あぁ、昨日は遊んでもらった。でも遊んでばかりじゃいられないので仕事もするよ。三平太にも手伝ってもらいますよ。ふふふ。ははは。
「お、おう。それは主の中で矛盾しないのじゃな。」
そうだね。例えばおれの最終目標に病院と学校と孤児院の併設があるんだけど。
「は?おぬし、そんなことを企んでおったのか!!」
そうなんですよー。で、今はお金も信頼も人手も足りないでしょう?だからちょっととりあえず清三郎様相手に小銭稼ぎをして…。
「侍相手にまた無茶を。で、小遣い稼ぎをしてどうするんじゃ?」
ずっと商売人の真似事もやってられないですからね。酒問屋と米問屋を立ち上げます。ある程度人と金を確保してからまずは孤児院からですかね。どう思われますか我縁坊。
「出来る前提で話しているのがひたすら恐ろしいが…。」
ほら、今ははやり病とか戦とか色々あるでしょう?急いだ方が良いかなって。都に近かったらなんか医学の権威とか出てきて絡んできそうでしょ?その点、岡山は大丈夫ですよ。ど田舎ですからね。
「岡山に入ったことがあるのか?」
おっと、この辺は岡山じゃなかったな。備前備前っと。まぁ岡山にも行ったことはあります。物売るときは岡山城か下津井城にいこうかと。
「岡山は田舎ではないと思うがのう。まぁ、やれるだけやってみるが好い。何も支援は出来ぬが、寝床と飯の支度ぐらいはしてやろう。」
はー。それが一番ありがたいんですよ。じゃ、ちょっと朝食前に借りてる部屋の掃除をしてきますね。
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ナイチンゲール!
「なによ。」
ナイチンゲールって呼んだら出てくるけどずっとは居られないの?
「居られないことはないけれど、貴方の意にそぐう動きはしないことは確かね。」
居られるんなら、諸国漫遊的なノリで旅してます的な感じで、この寺に滞在してくれませんか?
「何をやらせようというの?」
看護覚書の執筆。
「あなた馬鹿なのね?何百年もあとの知識よ。それにあなた紙もペンも持ってないでしょう。それもあの宗教家に借りるの?私は絶対に嫌よ。」
じゃ、じゃあ取り敢えず執筆に必要な環境と道具が揃ったら書いてくれる?あれないとちょっときついよこの先の展開。衛生観念の植え付けとか、看護システムの導入に必要不可欠でしょ。
「あなたが書きなさいよ…そしたらルールにも抵触しないわ。」
『ルール』があるってことは言質頂きました。ふぅん。何かしらの取り決めはあるわけね。ナイチンゲールが書くには問題になるけどおれが書くには問題ないと。なるほどなるほど。
「何頷いてるの…?怖いわよ。」
いーや、こっちのはなし。じゃあ病院開設したら師長やってくれる?
「師長…うーん。そこまで表に出るのはどうなのかしら。まぁその時の状況次第ね。」
言質とれんかったかー。ま、今日の所はここまでかな。四角い部屋を丸く掃き、今日の部屋の掃除は終わりとなった。さて、酒が出来るまでやれることがなくなってきたぞ…。