治療と、商品の売り込み会と。
永禄2年5月6日朝食の前。
職人の朝は早い。ううむ。タコはまだ流石に一晩じゃ早かったな。虫が湧くのが心配だけど5月だしまだ数日は干せると見た。網戸張りの干し部屋欲しいよねぇ。
蜂蜜酒は順調に細かい泡が立って居た。発酵してる。醸してる醸してる。
「うぉい。朝餉じゃぞ。」
我縁坊が顔をのぞかせる。
「タコか。なんか串刺しになって居るが。」
これはですな、串を使って足を広げる事によってくっ付くのを防ぐと同時に、見栄えも良くなってくるのですよ御坊。
「御坊なんて柄ではないわい。ほう、言われてみれば足を広げておる方がそれらしいと言えばそれらしいの。見栄えが良い。」
売れるといいな。あ、朝食にタコの内臓処理してみたんで主食のあてにどうでしょうか。
「うむ、ではありがたく。」
タコの内臓のちょっと醤油仕立て。びびっとくる美味さだった。我縁坊と清三郎さん大喜び。
で、朝餉の後に清三郎さんの傷口を見たらもう皮膚が張ってきてる。つ、強い。両手の使用と食事と厠に自由に行き来する許可を出した。お腹はまだジュクジュクしてるからゆっくりとね。とはいえ、お腹の傷もかなり良くなってきている。こそっと蜂蜜をうすーく塗ってるからか、全く膿んでいない。今回は幸運続きと思おう。清三郎さんの希望通り1週間前後で退院できそうです。無理をしなければですよ?
「まことにかたじけない事だ。」
ここを出られる前に心づくしの食事会をさせていただきたいと思っています。
「なんと?ここまで厚遇を受けてなぉ貸しを作るおつもりか?それがしに返せるかどうか。」
あー。いや。これが自分勝手な話ですが幾つか物珍しいものが提供できそうなもので。ハッキリ言ってお侍様方にも買っていただけるような代物なのかを判官していただきたい。
「それが食事会とやらの目的か。よい。どのようなものが出てこようとも中立的に判断することを誓おう。」
やったぁ。川崎印の食事会の開催が決まったぞ。おせったいおせったい。
前菜、未決定
主食、干しダコの戻しタコ飯。
主皿、未決定
飲料、蜂蜜酒
酒のあて、欲しダコの炙りとなにか。
ふふん。まずは足りないメインディッシュからかな!さぁお散歩だー。
我縁坊、散歩に行ってきますね。
「今朝のタコの内臓とやらは美味かったの。また美味いものを探してくるのか?」
そんな感じです。あ、タコの内臓を食べたってあんまり人に言ってはだめですよ?毒がありますからね。おれは毒の避け方を知っているだけです。
「そうなのか?ではまぁ内緒じゃの。」
にっこりと笑う我縁坊の為にいざ出陣だー!