俺を怠惰と罵るな。
長らくお待たせしました。
待ってない?いやはや手厳しい。ですが幕は上がりました。
世界は始まりました、貴方はどうですか?
さ、出来うる限りの日刊連載スタートです。
「書き出し」。これは存外に難しいものだ。簡潔に、かつ分かりやすく、見返しやすくだ。
これをおれは日記と位置付ける。自分自身の羅針盤と地図である。まぁおれの死後誰かが見るかもしれないな。ま、何かの参考になるといいな未来の人、で日記を始める。
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さてどこから話したものか。書き物をする時は思い出したところからやるのが良いと本で読んだ。
それに追従するならば、まずは自己紹介をしようか。
俺の名前は川崎こゆず。れっきとした男だが、まぁ名前の響きで女と間違えられることがある。特に気にするほどの事は無い。損をしたこともないし、俺が気にいっていればそれでいいと考えている。
この頃おれは、中小病院で看護師をしていたが、女社会についぞ慣れる事が出来ず退職した。家でごろごろしていたのだが、親にいい加減働けと尻を叩かれて家を渋々出てきたところだ。看護学校なんてのは、むしろ就職説明会の方が学校に来るくらいの超売り手市場だからな。きちんとした就職活動なんてのは、したことがないのだ。
だがしかし、動く出したならきちんと動き出すのがおれだ。
やる気はないが、やると決めたらやってやろう。
そう、あれはまだ肌寒い日だったな。全く懐かしい。
散歩がてらタラタラと、ハローワークへの道のりを辿る。
段々と思い出してきた。坂の上り路に一人の女性の姿があった。
仁王立ちする少女の横を無感情に通り過ぎようとした、俺にあの日、彼女は声を掛けた。
「怠惰ね。」
「は?」
何言ってるんだこいつ。誰だって思うだろ?おれだってそう思ったさ。
「怠惰だと行ったのよ。仮にも私に続くもの。血と鉄に塗られた道を歩く者。それが何と怠惰に過ごしているのかしら。」
…本気で眩暈がした。なんで職探しに出てきてこんな狂人に絡まれなばならない?
「おれが怠惰で何が悪い。」
少女は唇をかんだ。
「私は、私と、私に連なる者たちは誓いを立てたわ。そしてそれらはもうすぐ130年になるというのに、
未だ果たされる機会がなく燻ぶっている。言い訳は聴かないわ。あなたもまた『誓約』したもの。」
「あんたは…なんなんだ。」
おれは彼女の不思議な狂熱に触れてまごついていた。
「神とここに集う人々の前に、厳かに誓う、
看護専門職の倫理規範を遵奉し、
忠誠心を持って看護チームの他のメンバーと共に協力し、監督者として指定された医師または、
看護者の指示に忠実に、そして己の能力に従って最善を尽くし、
一切の悪行や悪意ある行為をせず、意図しながら害のあるいかなる薬を与えることや不正行為には加担しないと。
職業上の知りえた秘密についてはこれを秘匿する。
そして全力を尽くし看護実践の標準と品位を高めることを、自分に誓う。
我が人生が看護専門職の仕事とその高邁な理想に捧げられんことを。」
「ナイチンゲール誓詞…まさか…。」
「やりなおしなさい。川崎こゆず。貴方を待つ全ての者たちの為にその身を捧げなさい。」
とたんに眩暈が襲ってきた。世界は暗転し、意識は反転し、平行は失われ、物語は開始する。
俺はまだ知る由もないが、時は永禄2年。場所は岡山。点々と続く島とわずかな干拓地、
決して豊かではない時代の備前の国であると知るのは果たしてしばらく後になることだろう。
こんな感じでいかがでしょうか。第二話をどうかどうかお待ちくださいませ。
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