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ニートはダンジョンに居場所を求める  作者: アーマナイト
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ニート、オークを加工する

 起きたら、さまようカボチャを装備して、さっそく水を飲んでみたら普通に飲めた。

 再度、鏡を見ながら水を飲むところを確認すると、大きく開いたカボチャの口に水を流し込んでいるようにしか見えない。

 なかなか不気味な光景だ。

 けど、主観的に違和感がなくて、普通に水が口から入って舌に触れて喉を通って飲んでいる。

 不思議だけど、非常時にさまようカボチャを外さずにポーションを飲めることがわかったのは良かった。

 オークのしょうが焼き定食も、さまようカボチャを装備したまま食べてみようとするけど、肉を挟んだ箸が不思議な力に拒まれて、口に入っていかない。

 液体は飲めても、食事はできないか。

 とりあえず、さまようカボチャを外して朝食をすませる。

 オーク肉はシルバーラビットやスモールブラックホーンの肉を超える美味さだった。

 噛めば噛むほど甘い脂と旨味が溢れて、口のなかがどんどん幸福に包まれる。

 気づけば三人前は食べていた。

 まあ、ダンジョンで探索していれば大丈夫だろうけど、オーク肉の食べすぎには気をつけねば。

 オークの皮、オーク合金製のハンマー、光属性の杖、アダマントコックローチの胸当て、納品する武具の作製などやることが山積しているけど、一つずつ順番にこなしていこう。

 少々グロかったけどオークの頭を双魔の剣鉈で割って取り出した脳を手に、錬金術と革加工のスキルを起動してオークの皮をなめして、まばらに生えている毛も落とす。

 アダマントコックローチの甲殻やスモールブラックホーンの皮どころか、ゴブリン鋼やコボルト鋼の金属系の素材よりも、オークの皮は魔力を十分に浸透させる量がかなり多いようで、みるみるボクから魔力が流れ出ていく。

 なめしたオークの革は素材として変なクセもない素直な性質のようで、鑑定で問いかけたツナギに最適な厚さや柔軟性へスムーズに変化させることができる。


「皮膚っぽい」


 ツナギ用に調整したオークの革の手触りはともかく、肌色で見た目がどこか人の皮膚っぽくて不気味に思えてしまう。

 性能的にはともかく、生理的にこのままツナギに加工して装備するのは、なんか嫌だ。

 だから、シャドーバットの飛膜をオークの革の表面に貼り合わせる。

 うん、人肌感は薄まった。

 炭素繊維製のツナギを参考に、シャドーバットの飛膜と貼り合わせたオークの革をツナギの形状に加工していく。

 大体の形状ができたら、作りかけのオークの革のツナギを着て最適なものに調整していく。

 けど、問題が発生した。

 当たり前だけど、オークの革で作ったツナギには前を閉めるファスナーが付いていない。

 炭素繊維製のツナギのファスナーを外して移植する手段もあるけど、せっかく作ったオークの革のツナギに通常素材の虚弱部分を前面に生み出すことになる。

 ……ゴブリン鋼でファスナーを作るのが無難かな。

 ゴブリン鋼のインゴットを手に、炭素繊維製のツナギのファスナーを参考にして、ゴブリン鋼のファスナーを作っていく。

 ファスナーというものは普通にありふれているけど、自分で作るとなるとなかなかの難物だ。

 とにかく構造が細かくて、噛み合わせが繊細にできている。

 少しでも雑に作ったり、細部で妥協すると、スムーズに開閉できないどころか、まったく動かない。

 出来上がったゴブリン鋼のファスナーをオークの革のツナギに取り付けて、開閉がスムーズにできるように調整する。

 ファスナーの調整が終わったら、軽く動いて革の伸縮性や柔軟性を確認して、オークの革を調整する。

 さらに、走ったり、跳んだり、体術の動きを試して、細部の細部まで詳細に妥協することなく調整する。

 防具としての性能はわからないけど、動きやすさは炭素繊維よりオークの革に軍配が上がる。

 着ているというより、第二の皮膚になったようで動きをまるで阻害しない。


『シャドースーツ:隠行のスキルに微補正』


 コートやマントより小さいけど、隠行のスキルに補正効果が付いたのは嬉しい誤算だ。

 軽い休憩を挟んで、オークが使っていたオーク合金製のハンマーを手に取る。


「重い」


 鉄より軽いゴブリン鋼やコボルト鋼と違って、オーク合金はタングステンや金並みに重いオーク鋼とダンジョン鉄の合金だから、ハンマーの見た目以上にずっしりとして手に重さがのしかかる。

 さっそく、錬金術と鍛冶のスキルを起動して、オーク合金製のハンマーからオーク鋼を分離していく。

 オークの皮と同じように、オーク合金も浸透させる魔力量が多い……というか、いままで一番魔力を持っていかれる。

 しかも、皮と違って、全然素直じゃない。

 まったく動かないわけじゃないけど、なかなか強情で他の金属の三倍は手間がかかる。

 うーん、オーク鋼を分離するというイメージよりも、ダンジョン鉄を動かしたほうが賢明だな。


「凄い」


 黄金以上の輝きを放つ鮮やかな黄色の金属、オーク鋼がボクの手のなかにある。

 思わず魅入られそうになる貴金属のような気品すら感じられる金属だ。

 オークの持っていたオーク合金製のハンマーに含まれるオーク鋼の割合は半分程度で、思っていたよりもオーク鋼の割合が高かった。

 オーク鋼はオークキングの武器の素材として有名だけど、必ずしも素材としてゴブリン鋼やコボルト鋼より上というわけじゃない。

 粘りがあるのはゴブリン鋼の性質に近いけど、その重さのせいで力に余裕のあるベテランか、ハンマーや大斧などの重量級の武具の使い手にしか需要がない。

オーク鋼のインゴットを手にして、さっそく試しに複数のスキルを起動する。

 脳裏で次々に鎌、剣鉈、杖をイメージする。

 杖はダメだな。

 単体だとゴブリンワンドやコボルトワンドより上でも双魔の杖には及ばないし、オーク鋼を素材として双魔の杖に追加しても強化にはならないみたいだ。

 うーん、鎌と剣鉈も、保留する。

 オーク鋼、ゴブリン鋼、コボルト鋼を素材にして作った武具は強力なようだけど、すぐに作る気にならない。

 武具の素材としてオーク鋼がメインになるから、従来の倍どころか三倍以上の重さになってしまう。

 オークやランスホーンのような頑丈なモンスターもいるから強い武具は欲しいけど、重いと扱いにくくなってしまう。

 当たらなくて、避けられないんじゃ意味がない。

 新しいコンテナブレスレットを買って、持ち運べる武具の数が増えたら考えよう。

 続けて、アダマントコックローチの胸当てを修理というか、ほぼ新しく作る。

 せっかく第二層で使い続けてかなり強化されたのに、また一から強化することになる。

 まあ、アダマントコックローチの胸当てが強化されていたから、オークの拳を受けて致命傷にならなかったのかもしれない。

 もう少し防御力が欲しいけど、そうなると重量で妥協するしかない。

 こちらも第三層を探索して身体能力を上げながら模索しよう。

 次に、光属性のビギナーワンドから外したマギパールを、新しく作った双魔の杖の先端にはめる。

 骨と茨じゃなくて、羽と後光をイメージして施したエングレービング以外は他の双魔の杖と同じなんだけど、見た目の印象が禍々しいというより威圧的で、神罰とか審判という単語がなぜか脳裏に浮かんでしまう。

 ゴブリンとコボルトは光属性を弱点とするモンスターだから、ゴブリン鋼やコボルト鋼も光属性と相性が悪いかと思ったんだけど、そんなことはないみたいで問題なく光魔術を使うことができた。

 これで上位ゴブリンや上位コボルトを相手に、魔術だけで狩ることができるようになるかもしれない。

 魔力がまだ残っているので、納品用の武具を魔力切れになるまで作り続ける。

次回の投稿は三月十一日一八時になります。

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