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ニートはダンジョンに居場所を求める  作者: アーマナイト
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ニート、収納を考える

 あれからさらに、四つの上位コボルトの群れを狩った。

 群れのなかにはコボルトメイジやコボルトハンターもいたけど、やっぱりゴブリンメイジやゴブリンハンターより強いとは思わなかった。

 足を止めて魔術や弓を使うゴブリンたちと違って、コボルトメイジとコボルトハンターは動きながら遠距離攻撃をしてきたけど、隊列を組んで進行を阻んだり、後衛を守る護衛を置いたりしないから、魔術で牽制しながら一気に近づいて狩ることができた。

 上位コボルトも群れで連携してくるけど、包囲からの攻撃や一撃離脱に偏りすぎている気がする。

 メイジやハンターみたいな後衛職が、護衛もなく前衛に立つのは戦術の素人のボクでも無茶だとわかる。

 上位コボルトの狩りは順調なんだけど、一つ問題がある。

 コンテナブレスレットに空きがないから、上位コボルトの群れを狩るごとに面倒だけど第一層のときのように、セーフエリアへ上位コボルトの武器をピストン輸送しないといけない。

 シャドーコートを装備しているから、慎重に動けばシルバーラビットやシャドーバットとの交戦は避けられるけど、一回狩るごとにセーフエリアに戻るのは地味に面倒だ。

 今度、買取所に行ったら、新しいコンテナブレスレットを買うか、重量軽減効果のない安い収納バッグの購入を考えよう。

 収納のスキルを獲得する手もあるけど、獲得条件がなかなか厳しいから現実的じゃない。

 収納のスキルの獲得条件は、まず、最初に光、闇、火、水、風、土の魔術のスキル熟練度を全て二〇まで上げて、回復魔術のスキルを獲得できるようする。

 回復魔術のスキルを獲得したら、属性魔術を合わせた七つの魔術のスキル熟練度を八〇まで上げると収納のスキルが獲得可能になる。

 ちなみに、収納のスキルの獲得に必要なスキルポイントは一〇〇で、鑑定や清浄のスキルと同じように熟練度がない。

 ボクが獲得しようとしたら、ゴブリンメイジとコボルトメイジが弱点でもある光属性の魔術を使えないから、いくら狩っても入手できない光属性の杖と、回復魔術を使うときに必要なマギダイヤモンドを備えた全属性の杖を宝箱から入手するか、買取所で購入しないといけない。

 けど、光属性の杖はともかく、全属性の杖はコンテナブレスレットよりもはるかに高い。

 収納のスキルは魔力の消費量で、収納できる物の量が代わる。

 でも、収納する空間を維持している間、消費した魔力は寝てもポーションを飲んでも回復しない。

 しかも、少しの量を収納するのにも、大量の魔力を消費する。

 収納のスキルが使える探索者はベテランの魔術の使い手が多いけど、狩りで使用できる魔力を減らすくらいなら、高額の収納系のアイテムを購入することを選ぶ者が多い。

 収納のスキルは一般的に獲得条件が難しいのに、性能が微妙なスキルと言われている。

 同レベル帯の探索者に比べて魔力が多いボクなら、もう少し収納のスキルを有用に使えるかもしれないけど、短期間で獲得条件を達成するのは難しいからあまり意味がない。

 まあ、当分はピストン輸送するしかない。

 運良く宝箱から収納系のアイテムが出てくれればいいんだけど、このダンジョンの宝箱の出現率の低さを考えるとあまり期待できない。

 ボクの運が悪すぎるだけなんじゃないかと一瞬、脳裏にちらつくけど、気分が沈みそうになるので思考にフタをする。

 時間帯的に最後の狩りをするために、コボルトの領域に広がる草原を進む。

 索敵に反応。

 六体、あるいは虎並みに大きいもじゃもじゃの毛をしたアサルトハウンドに跨るコボルトライダーが三騎。

 鞍と後ろに取っ手のついた首輪を装備した巨大な犬に、槍と革鎧を装備した二足歩行の犬が跨っている姿は、なんとも不思議な気持ちになる。

 三騎のコボルトライダーがこちらを包囲するように散開する。

 その速度はスモールブラックホーンを上回る。

 一番遠くを走るアサルトハウンドの地面につく直前の前足に、風の玉を命中させる。

 アサルトハウンドが足をもつれさせた瞬間、立て直すの阻害するために、風の玉を連続で顔面に着弾させる。

 跨るコボルトライダーを押し潰すように、激しく横転する。

 風の玉を試しに自分の腕に放ったことがあるから、衝撃や魔力の乱れによる一時的な痺れがどれくらいのものなのかわかる。

 残念ながら、風の玉には直撃を受けても、備えていれば行動できる程度の威力しかない。

 でも、全力で走っている足に、それも着地寸前の瞬間を狙われたら、運良く転倒しなくても足をもつれさせて動きが乱れる。

 相手の連携を乱して、デュオシックルで狩る一瞬を稼ぐには十分な威力だ。

 風魔術の狙いをつけにくくするためか、こちらに迫る二騎のコボルトライダーはジグザグに大きく動く。

 あの巨体が左右に大きく動きながら近づいてくるのは、なかなか迫力がある。

 けど、直線に動くより明らかに減速している。

 ボクにとって、むしろ狙いやすくて、対処しやすい。

 前後から挟撃するように、数メートルの距離に迫っても、一歩も動かずに静かに待ち構える。

 距離、一メートル。

 ゴブリンワンドを逆手に持ちかえて、魔力感知で感じる後方から接近するアサルトハウンドの前足に直接見ることなく風の玉を放つ。

 大きく横に、跳躍。

 直前まで、ボクのいた空間に二騎のコボルトライダーが衝突して、肉が弾けるような不吉な音を周囲に撒き散らす。

 手早く、痙攣する四つの命を、デュオシックルで狩っていく。

 起き上がり、こちらに疾走する最後の一騎のほうに向き直る。

 跨るコボルトライダーの右腕に槍はすでになく、骨が折れて力が入らないのか、ブラブラとただ肩からぶら下がっている。

 残る左腕でアサルトハウンドの首輪の取っ手にしがみついている。

 手負いになって、アサルトハウンドに縋り付いているのかと思ったけど、こちらに向ける射抜くような視線からは、最後まで挑もうとする戦士の気迫を感じる。

 騎獣のアサルトハウンドも乗り手の気迫を感じたのか、風魔術対策でジグザグに動くようなことはしないで、全速力で最短距離を突っ込んでくる。

 ゴブリンワンドを収納。

 デュオシックルを逆手に構えて、こちらも全速力で突進する。

 意識をどんどん目の前の相手に集中させて、ただ一撃で狩ることに専心する。

 大きく口を開けて近づいてくるアサルトハウンドの動きが、徐々にスローに見えてきた。

 自分の体なのにどこか緩慢で、驚くほど滑らかに動く。

 まさしく、紙一重。

 噛み殺そうと飛びかかってきたアサルトハウンドの触れるぐらい近くに、身を滑らせて相手の進路上に残したデュオシックルの刃を一気に振り抜き、二つの命を両断する。

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