ニート、マントを作る
草原というデュオサイズを十全に振るえる状況で、ゴブリンライダーの相手は相性がいい。
デュオサイズが通用するのはいいことなんだけど、前回のような上位ゴブリンとの狩りを期待していたから、少し残念だ。
ゴブリンライダーを解体して魔石を回収しながら、思案する。
スモールブラックホーンの皮は必要だけど、三つの死体を持ち帰るのは難しい。
ここで解体して、必要な素材を持って帰るか。
スモールブラックホーンから魔石を取り出して、手早く皮を剥いでいく。
スモールブラックホーンの肉は牛肉に近い味がして、そこそこ美味しいらしいけど、今回は諦める。
三体分の剥ぎたての皮に付着した血と脂と肉片を清浄のスキルで綺麗に落として、運びやすいようにたたむ。
切り落とした三つのスモールブラックホーンの首をゴブリンライダーの槍に、鬣を紐代わりにして縛り付ける。
ホブゴブリンの角以上に価値のあるスモールブラックホーンの角と、皮をなめすのに使うから脳を持って帰りたいだけなんだけど、槍先にモンスターの首がぶら下がっていると、なかなかグロい。
第二層は、暗闇に包まれたモノトーンな第一層と違って、明るいから血と臓物と断面が色彩豊かに見えて、より生々しくてグロい。
槍先にモンスターの首をぶら下げて、剥いだ生皮を担ぐ、カボチャ頭。
B級ホラー映画に出てきそうな怪人だ。
まあ、ボクなんだけど。
セーフエリアに帰還したとき、狩りを終えるには早いけど、スモールブラックホーンの皮を加工したいので今日の狩りは終了。
スモールブラックホーンの頭部から二本の角を切り落としてから脳を取り出して、錬金術と革加工のスキルで、スモールブラックホーンの皮をなめしていく。
ジャイアントラットやシルバーラビットと違って、スモールブラックホーンの皮は毛皮にしないので、いらない毛を処理する。
皮からごっそり毛が抜ける光景は、少し気持ちよくて、少し不気味だ。
スモールブラックホーンの革で作るタクティカルグローブと安全靴、マントとコートを脳裏でイメージしながら、鑑定に問いかけてスモールブラックホーンの革の厚みや柔軟性を最適なものに、錬金術と革加工のスキルで調整しようとするけど、上手くいかない。
それぞれに最適な革の形状が違うようだ。
タクティカルグローブを作るのに必要なスモールブラックホーンの革を切り分けて、再度、厚みと柔軟性を調整していく。
さらに、ボクの手にジャストフィットする形状に加工していく。
手に装着して、指を動かしながら、違和感があったら厚みと柔軟性を修正していく。
拳と手の甲の部分に、衝撃吸収用のスライムゴムと合わせたアダマントコックローチの甲殻を貼り合わせる。
いままで使っていた通常素材のタクティカルグローブよりも、なかなか無骨で威圧感のある防具というよりも武具のようなタクティカルグローブになった。
これで、安心してモンスターを殴ったり、裏拳を放ったりできる。
続いて、安全靴を作るのに必要なスモールブラックホーンの革を切り分ける。
靴底用の少し硬めに調整したスライムゴムと、着地の衝撃を吸収するための適度な弾力のスライムゴムを用意して、足裏を守るために柔軟に曲がる薄いゴブリン鋼の板を作る。
爪先と踵を守るためにアダマントコックローチの甲殻を加工する。
作ったパーツ組み立てて安全靴の形にして、履いて修正、歩いて修正、走って修正を繰り返す。
これなら強化された身体能力で酷使しても、簡単には壊れないだろう。
いままでの安全靴は全力で負荷をかけたら、早々に限界がきそうで怖かったから良かった。
マントとコートを作るために、残りのスモールブラックホーンの革を一枚にして、厚さと柔軟性を調整する。
さらに、厚手の黒いビニールみたいな一枚の布状に加工したシャドーバットの飛膜をスモールブラックホーンの革に貼り合わせる。
このスモールブラックホーンの革の残りで、マントとコートの両方を作るのは無理。
今回は、簡単に作れそうなマントにする。
吸血鬼が身に着けていそうな襟付きマントをイメージしながら、シャドーバットの飛膜を貼り合わせたスモールブラックホーンの革を加工していく。
しっかりと存在しているのに、存在感の希薄な黒いレザーマントができた。
『シャドーマント:隠行のスキルに小補正』
ついに、補正効果付きの装備を自分で作ってしまった。
まあ、シャドーバットの飛膜を素材にマントやコートを作れば、隠行のスキルに補正が付くのはわかっていたけど、それでも実際にできると嬉しい。
シャドーマントを装備して、軽く動いてみる。
振り返ったりして、黒いシャドーマントが大きくひるがえる様は中二の心を満たしてくれるけど、意外に動きの邪魔になりそう。
実際に狩りで着心地を確認してからだけど、コートが完成したらこのマントは予備の装備になるかもしれない。
コートを作るにはやっぱりスモールブラックホーンの革が足りない。
魔力がまだ残っているから、上位ゴブリンの武器からゴブリン鋼を取り出す。
上位ゴブリンの持っていたゴブリン合金製の武器に含まれるゴブリン鋼の割合と強化の程度は、ホブゴブリンの武器と同じくらいだった。
モンスターの武器が予想以上に強くないのは良いことだけど、素材としてホブゴブリンの武器と同程度の価値しかないのは残念だ。
 




