嫌悪の眼差しは思慕の兆し
ー恋愛って性にあわない。
言い争って去っていく彼女の背中を煙たげに見送って、滉輔は一段と溜め息を吐いた。
金髪に染めた髪を無造作に掻きむしり階段を降りる。
「朝っぱらから胸糞悪りぃ」
彼女とは付き合っていた。ただなんとなく、という感じは否めない。だが、些細な事も大袈裟に捉えて問題にする。
女とは面倒臭い。なにがリア充だ。
今日も移動教室で廊下からざわめく声が上がっている。その中で目を引いたのが、女子のグループに男子が1人混ざっていた事だ。
豊満 和輝。男の癖にナヨナヨしてるし、いつも女子の輪にいる奴。何で面倒臭い連中とつるんでるのか理解できない。
モテている訳ではなく、友人として男子が女子達に囲まれているのが異質に見えた。妬みなんかじゃない。ただ見ているとウザかった。
「昨日の動画サイトでね、ユメメが短時間メイク術してたんだけど、やっぱり神だったー」
メイクの話をしているらしい。その後、アニメや漫画の話に変わりヲタク全開の話展開になっている。
「興味ねぇ…。ぜってぇアイツとは合わねぇ」
ヲタクの話しなら、カースト下位のヲタ男子連中とつるんでいれば良いのに。と常に思っていた。
和輝とマトモに絡んだ事は無い。話す言葉が見当たらないからだ。
「あれ?滉輔、今日サボらないの珍しいんじゃね?」
話しかけてきたのは、同じクラスの中宿 静香だった。
「いや、サボるけどよ。お前出んの?」
「だって、留年したくないじゃんー。部活で推薦とれたら楽なのになぁ」
静香は女子バレー部に所属している。ウチの高校は部が少ないものの、活動は積極的に参加する者が多い。文化部より運動部の方が発言力も権力も強い。
「私も出るし、滉輔も出ようよー。ノートはどうせ、和輝に写さして貰うしー」
「何でそこで和輝が出てくんの?」
怪訝な顔が可笑しかったのか静香がクスクス笑った。
「妬くなしー♡和輝は課題要員だってー」
どうやらパシリだったらしい。
「アイツとあんま絡みたくねぇんだけど…。」
「でも、滉輔だって課題もーそろ、やらないとヤバみでしょ?」
確かに、俺だって留年は面倒臭い。
「しゃーねぇな…。」
背に腹は替えられない。俺は仕方なく留年よりも和輝に貸しを作る事を選んだ。




