日常
スロースターターです。
『朝』・・・これほど憂鬱な時間帯はない。
朝が好きな人もたくさんいるだろう。だが、起きることが嫌いな俺にとっては苦行でしかない・・・。朝日の光はとても眩しく目には毒々しいし、朝の澄んだ空気を吸えば肺の中が虚しさで満たされやるせない気持ちにさせる。きっと俺の前世は吸血鬼か夜行性の動物だったのだろう。でなければ深海や地中の目が退化した生物だ。ならば仕方ない、その本能に身を任せてまた眠りにつくだけだ・・・。
ぴぴぴぴ・・・・
何度目かのスヌーズを止めるため布団から腕を伸ばし、スマホを探すために手を彷徨わせる。
どたどたどた・・・、ガチャ!!
明らかにアラームとは別種のけたたましい音が聞こえてくるが、アラームを止めてすぐに布団の中へと手を引っ込める。
とたとたとた・・・・サッ、サッ
乾いた音が聞こえるが俺には関係ない。あと五分は眠らせてもらおう・・・。
「朝だぞっ!!起きろっ!!」
・・・うるさいな。町内放送でもなっているんだろうか?静かに眠らせてくれ。俺はより一層布団の中で丸まる。
バサッ!!
突如布団がふっとんで・・・眩しい光が俺を容赦なく照り付ける。
「ぐあぁ~っ!!死ぬ、カーテンを閉めてくれぇ~!!」
「何言ってんの、学校に遅刻しちゃうよ!!」
俺は敷布団の下に潜り朝日から逃れる。
「遊葉、あんた遅刻ばかりで今月も先生に呼ばれたばかりでしょ。まだ入学して三か月なのにヤバいってきいたよ?」
といいながら腰に手を当てて、呆れながら俺を見下ろすのは幼馴染の赤松ひなび。
「お前こそ、人の部屋には勝手に入るなって言ってるだろ!!てか、勝手に家に入ってくるなよ!!」
「おばさんには許可取ってあるし、先生にも頼まれてわざわざ部活まで休んで来てるんだから、早く起きなさいよね!!」
「女子バスケ部期待の1年生がそんなことで休んでいいのかよ」
「仕方ないでしょ、顧問の鈴城先生はあんたのクラスの担任でもあるんだから」
「そうだっけ?」
「あんたねぇ・・・。いいからさっさと起きて支度しなさいよ。起きないっていうなら、今から部屋の片付け始めるからね」
「・・・わかった、起きるから。リビングで待っててくれよ」
思春期の男子の部屋に勝手に入ってきただけではなく、部屋まで探索されてはさすがにまずいと急いでひなびを部屋から追い出し、せかされながら身支度し2人で登校した。そしてまた今日も平凡な一日が始まる・・・と思っていた。この時はまだ・・・。
読んでくださり、ありがとうございます。