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雨男の誕生

序章「雨の降る日に」

やまない雨はないとはよく言ったものだ。

だが、僕は太陽を知らない。

日差しを知らない。

青空を知らない。

知っているのは雲がない空は綺麗だということ。

それも、本で読んだだけのものだが。

自分が外に出ると必ず雨が降るのだ。

太陽が隠れるのだ。

だから僕は外に出られなかった。

外に出たら石を投げられる。

罵声を浴びせられる。

災厄、歩く自然現象とよく罵られた。

だから僕は、岩陰に隠れ怯えていた。

「やまない雨はない……なんてことないんだな。」

一人、岩陰で呟いた。

足音が聞こえてきた。

またやられるのか。

そう思って顔を上げる。

「何してるの?」

そこに女は立っていた。

ずぶ濡れになりながら僕を見て笑いかけてきたのだ。

僕は口早に追い払おうと口を開く。

「お姉さん、駄目だよここは危ないし濡れる。」

しかし、彼女は逆に口を尖らせる。

怒っているのだ。

「そんなこと言わないの!君の名前は?」

咎められた。

そして、名前を聞かれた。

「アメノ・P・レイジ」

それが僕の名前。

自分を嫌わないで、名前を呼んでくれる人はアメって愛称で呼んでくる。

女はその名前を聞いて笑いかけてくる。

「アメって呼ばせてもらうね。この天気と同じ名前になったね。」

そんな冗談をはさんでくる。

「あっ……自己紹介まだだったね。私はマリー・A・クロエ」

それを聞くと同時に僕の意識は遠くなった。

それと同時に、クロエの笑顔に太陽を見た気がした。

「ねぇ……起きたら私と旅しよっか?」

もう音は聞こえなかった。

でも、クロエの唇がそう囁いた気がした。

┈┈そして僕達のの旅が始まった。


第1節「雨と少年と少女と」

「……きて!起きて!ねぇ起きなさいよ!」

騒がしい声が聞こえる。

その声を聞きながらアメは目を覚ます。

「懐かしい夢を見てた。」

アメは声の主にそう声をかけた。

「はいはい、そんなこと言ってる暇があったらご飯食べて。」

声の主であるクロエは腰に手を当てながらそう言う。

「連れないなぁ姉さんは。」

そう言いながらアメは食卓につく。

「今日は買い出しに行ってくるから留守番してて。」

「了解した。」

今二人はとある街に滞在中である。

アメの体質の謎をを解き明かすため。

そして、この世界に伝わる10代神秘と呼ばれるものを探すためにここを拠点としているのだ。

10代神秘を簡単に説明すると、その昔神が降臨した時に残したと呼ばれている武具、魔法の事だ。

しかしそれを人に与えるに当たって神は迷宮を作りこの世を去った。

現時点でわかっている迷宮は2つ

1つは、グニル渓谷に存在する軍神オーディンが生み出した迷宮

もう1つは、フレイアル樹海に存在する豊穣神フレイヤの迷宮である。

「出発は明日だろ?」

「そうよ。私達はグニル渓谷に向かうわ。」

アメたちはグニル渓谷に向かうことにしていた。

クロエは準備を済ませると買い出しに出かけた。

「じゃあ行ってくるね。」

「気をつけてな。」

クロエが出ていったあとアメは外に出ないように作った縦穴式の洞窟で自分の魔法の確認をし始めた。

アメの周りが雨になる能力は進化していた。

と言うよりむしろ悪化していた。

外じゃないところに限り任意で雨を降らすことが出来るようになった。

そこでアメが目をつけたのは電撃魔法だった。

雨と電撃はすこぶる相性が良かった。

だから、アメは電撃魔法を極める程度にはなった。

そして氷魔法も一応極めている。

「ふむ……これでいいか。」

アメは一通り訓練を終えクロエを待つことにした。

1時間ほど経ったがクロエが帰ってこない。

アメは心配になって家を出た。

雨が降るのも構わず走り続けた。

一方その頃、クロエは路地裏で肩を揺らしていた。

その手の中には一人の娘がいた。

「はぁ……はぁ…撒いた?」

辺りを警戒するクロエだったがすぐに息を潜める。

「親方!雨が降ってきましたよ。」

「構わん!探せここら辺にいるはずだ。」

4人組ほどいる男達は慌ててるようだった。

彼らは奴隷商でクロエが連れているのが奴隷なのだ。

クロエは非常に世話焼きなので見ても立ってもいられなくて彼女を連れ出して今に至るのだった。

「今の内に……。」

逃げ出そうと顔を出した。

これが失敗だった。

「見つけたぞ!この女ぁ!!」

その声とともに炎弾が飛んでくる。

「くっ………。」

クロエは咄嗟に飛び退く。

ジリジリと追い込まれていった。

もう駄目だと思った時、頬に水が落ちてきた。

涙ではなかった。

雨が降ってきたのだ。

今まで晴れていたはずなのに。

「……来る。」

彼が来る。

自分が旅に誘い、いつの間にか自分より頼もしくなった。

アメが来る。

「姉さんに何をしてるんだ。」

雨に濡れる青髪に髪色より澄んだ碧眼。

いつもは外に出られないくせにこんな時は駆けつける。

クロエは口角を上げながらアメに言葉を送る。

「あんた……いつも遅いのよ。」

「緊急時しか出れないんだ勘弁してくれ。」

アメは少し笑って男達に顔を向ける。

クロエはそれを見て少し後退する。

「〖雷鳴よ轟け顕現せよ我が名の元に〗」

高速詠唱クイックキャスト

アメの詠唱と共に男達に雷が落ちる。

男達は飛び退くが2人だけ間に合わなかった。

「野郎……〖炎獅子力の限り吠えよ〗」

炎弾が2つ飛んでくる。

しかし運が悪かった。

アメの能力とはいえ雨が降っているのだ。

「〖氷精よ我が身に集え〗」

雨の雫が一気に固まり出す。

まるで蛹を守る繭のようになっていく。

炎弾が当たっても雨が降っているので即座に回復していく。

「ちぃ……〖業火よ狂気に染まれ〗」

「!?」

雷から生き残った男達が口角を上げる。

増幅詠唱ブーストキャスト

男達の炎弾の威力が上がった。

耐えきれなくなったガラスのように氷の繭が砕ける。

「アメ!」

クロエは叫んだ。

しかし壊れた繭から出たアメは笑っていた。

まるで獲物を狩る狼のような笑みだった。

「かかりやがったな……〖雷精よ踊れ・更に・更に・舞い踊れ〗」

継続詠唱(チェインキャスト)

これはアメの得意技の1つで詠唱に詠唱を重ねることで拡散や収束を可能にするものだ。

雷が時間差で落ちてくる。

「ぐぁ!!」

男達は地面に倒れ伏せた。

雨の音だけがその場を支配した。

「俺の連れに手を出した罰だ。」

そう男達に言うとクロエの方を向いた。

「さぁ姉さん帰ろうか。」

そう言うってアメは帰路に向かって歩き出す。

クロエはその背中を見ながら呟く。

「全く……泣き虫だったのに変わったね。」

しかし、よく見るとアメの背中が震えてることに気付く。

「し、死ぬかと思った。」

その背中を追いながらため息気味に呟いた。

「まだ意気地無しは変わらないか。」

そして2人は奴隷にされるはずだった少女を連れ拠点に戻る。

「見つけたぞ……」

辺りに誰もいなくなった路地裏に1つ影が揺らめいた。

行間

彼は泣き虫だった。

転けて泣いたり、モンスターを見て泣いたりと、とても泣き虫だった。

だけど彼は退くことはしなかった。

死ぬことが怖い意気地無しでもあった。

でも彼は逃げなかった。

その碧眼は澄んでいた。

どこまでも透明な瞳だった。

だから私は彼を選んだ。

弱くて情けなくて小動物みたいな彼を選んだ。

そして、時が過ぎた。

泣き虫は無くなった。

だけど意気地無しが治りきらない。

でも、逞しくなった。

────だから君と旅がしたかった。

これからもとても楽しくなりそうな予感がしてる。

「あの子も逞しくなったものね。」

「姉さんご飯覚めるよ〜。」

「今行くわ。」

そうして私は書いていた日記を閉じた。

これからもここに色々なことを書く期待を胸に閉まって微笑んだ。


第2節「軍神の迷宮」

先日の戦闘から3日後クロエ達が助けた少女が目を覚ました。

「……ここはどこ?」

少女は長い銀髪を揺らしながら辺りを見回す。

そしてその銀髪の奥にあった紅眼がアメ達を捉えた。

少女は混乱した。

自分は奴隷にされているはずだった。

しかし、目の前にいるのは違う人物達だ。

1人は青髪碧眼の少年。

もう1人は意識がなくなる前に覚えてる自分を助けようとしていた紫色の髪にアメジスト様な瞳をした女の人だったのだ。

「わ、私は一体どうしたんでしょう?」

「私が助けたのよ。目が覚めてよかったわ。」

クロエが微笑みながらそう言った。

「俺のことはアメって呼んでいいよ。君名前覚えてる?」

アメは少女に名前を聞いた。

「キリン・Z・クラウディア……周りからはキリンって呼ばれてた。」

キリンとそう彼女は名乗った。

「キリンちゃんね。私はクロエよろしく。」

「とりあえずゆっくりしてくれ。」

アメがお茶を用意したところで3人で話し始めた。

まずはお互いのことを話す。

その後に旅をしている理由を話した。

10代神秘を解き明かそうとしてることも話した。

「あ、あの私もついて行ってよろしいでしょうか?」

キリンがそう行ってきた。

「家族とかいないの?」

「はい、だからアメさん達と私旅がしたいんです。」

キリンはそう言った。

アメはその言葉に頷きながら言った。

「理由はわかった。でも戦えるのか?」

「はい!付与魔法(エンチャント)と斧が使えます。」

アメはその言葉に頬をひきつらせた。

「斧って重いよな……持てるのか?」

「はい!力は強いんです。」

その言葉にアメはキリンの体を見回した。

どう見ても強そうには見えない。

アメは思わず鼻で笑ってしまった。

するとキリンが、おもむろに剣を手に取った。

クロエ用の予備の剣だ。

するとそれを真っ二つにへし折った。

「つ・よ・い!んですよ。」

「すんません……よく分かりました。」

さすが意気地無し切り替えが早い。

ここから何が起こるのか誰も知らない


続く

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