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予言の紅星6 疾風の時  作者: 杵築しゅん
領主会議

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30/222

領主会議(3)

「皆様申し訳ありませんでした。皆様の前で涙を見せるなど、領主としての自覚が足りませんでした。子供のような態度をとり恥じ入るばかりです。さあ、学生たちが領主様にお会いできるのを楽しみに待っています。これから体育館と武道場にご案内いたします。宜しければキシ公爵様、ヤマノ侯爵様、ポルムで遊びながら向かいませんか?きっと楽しいですよ」


イツキは極上の笑顔を見せて、謝罪し、誘導し、誘惑(無意識)する。

 重い重い空気が、イツキの笑顔で一気に消し飛んでいく。

 先程まで絶望の表情で泣いていた少年は、何事も無かったかのように笑顔で皆に話し掛けてきた。


『子供のような態度って……まだ子供だよねイツキ君』(校長と教頭)

『やっぱりイツキ君は強い!でも甘えるのはこれで最後にするよ』(エントン)

『・・・なんだあの美しい笑顔は』(マキ公爵)

『凄い!空気が一瞬で変わった。これがリース様の御力なのだ』(マサキ公爵)

『・・・イツキ君って本当に14歳?それにしても美しい笑顔だ』(ホン領主)



「皆様お願いがあります。僕は現在ヤマノ領の伯爵として学校で生活しています。ですから校内ではイツキ君と呼んでいただきたいのです。僕は領主として特別扱いを受けたくありませんから。お願いします」


皆の先頭を歩いて体育館に向かっていたイツキは、クルリと後ろを振り向いて全員にお願いした。今度は無邪気な子供らしい笑顔で。少し少女っぽく。

 そしてポルムをヤマノ侯爵にパスする。ヤマノ侯爵はキシ公爵に、そして再びイツキにパスされ、ワンバウンドでエントン秘書官にポルムが渡る。


「承知した」

「「「了解イツキ君」」」


何故か全員がその笑顔にドキドキする。既に50歳が近いおじさんから、25歳のヤマノ侯爵まで、その眩しい笑顔から目が離せない。


☆☆☆ イツキ、癒しの能力【金色のオーラ】を絶賛発動中である ☆☆☆



 イツキはやるせない気持ちや絶望感を、自分の放つ【金色のオーラ】で癒しながら、領主達も癒していく。

 領主としての重圧や領地のゴタゴタなど、胸に蓄積されたドロドロした感情を、子供の様に純粋な気持ちに戻していく。

 日頃から自分を偉そうに演出しているマキ公爵やホン領主やミノス領主は、すっかり肩の力が抜け、背負っていた重しが取れたように体が軽くなった。

 勿論ハードワークでお疲れの秘書官やキシ公爵や他の領主も、同様に体が軽くなる。


 フィリップだけは、イツキがリースの能力(ちから)を使っているのだと分かっているので、また無理をしているのではないかと心配する。




◇ ◇ ◇

 少し時間は遡る。イツキが会議室を飛び出し、手洗い場の前で声を殺すように泣いている姿を見た時、フィリップは全身の血が沸騰するような怒りの感情が込み上げ、戻って領主達を締め上げたい……罰っしてやりたいという思いに駆られた。

 偶然その場を通り掛かったヨム指揮官も、ギョッとした表情でイツキを見て、怒りで震えている親友フィリップに気付くと、何処かへ走り去ってしまった。


「イツキ様大丈夫ですか?俺は奴等が許せません!たとえ領主であろうと許すべきではありません!」


フィリップはイツキの側にひざまずき、怒りで震えながら言う。

 するとイツキは涙で濡れた顔でフィリップを見て、「僕は大丈夫だ」と答えた。


『いけない。フィリップが怒りに支配されている!』


イツキは自分のせいでフィリップが怒りに支配されている姿を見て、スッと冷静になり我に返った。

 急いで【金色のオーラ】を放ちながら、フィリップの両手を握る。

 フィリップは驚いたようにイツキを見上げる。すると、イツキの体をキラキラと金色の光が包んでいるように視えた。


「フィリップ僕は大丈夫だ。今、自分の能力(ちから)で自分を癒している。だから、怒りを解け。さあ立ってくれ。そしてありがとう」


「えっ?何故、どうして・・・」


フィリップは何故ありがとうと礼を言われたのか分からず、ポカンとした顔でイツキを見ながら立ち上がる。直接イツキの癒しの能力を両手から注がれているので、その表情はすっかり穏やかになっている。


「フィリップはやはり僕を守り、僕を導く者のようだ。フィリップが怒りに任せて暴挙を行うのではないかと思った瞬間、僕は冷静になれた。だから、ありがとう」


「イツキ様・・・」


フィリップはその時のイツキの顔を、一生忘れることはないだろうと思った。キラキラと輝く微笑みは、人のものではなく……天使様や……神様のように思えた。


「さあ行くぞ!これからが本当の戦いだ!」

「はい、イツキ様!」




◇ ◇ ◇

 体育館で今か今かと領主様を待っていた学生達は、【金色のオーラ】を解いたイツキに続いて入場してきた領主様一行を、割れんばかりの拍手で出迎えた。

 領主・秘書官、秘書官補佐、校長と教頭は、安全の為2階の観覧席に座る。

 学生達は体育館内でコートを囲むように座っている。全員が体育館に居るのではなく、3分の1はアタックインの観戦の為、武道場で待機している。


イツキはポルムゴールの代表の2チームを集合させ、とあるお願いをする。


「皆さんお疲れ様です。僕からの演出のお願いです。始めから飛ばさず、開始5分くらいからピッチを上げてください。そしてラスト1分、全員の本気を領主様と僕に見せてください」


「イツキ君、始めから全力だとダメなのかい?」


どうしてイツキがそんなことを言うのか意味が分からず、ピドルが質問してきた。

 そこでイツキはスタートメンバーの10人を手招きし、円陣を組んで説明する。


「ピドル先輩、エンド先輩、始めから全力だと領主様はわくわくしません。ちょっぴり緩いスポーツのように見せ掛けて、徐々にピッチを上げることで、おや?おやおや?これは楽しそうじゃないかと思うようになります。皆さんは言わばこの学校のスターみたいなものです。スターはスターらしく見せ場を作って、観客を虜にしてやらねばなりません」


「スター?」「俺たちが?」「観客を虜に?」


 10人全員が何故かイツキ第2親衛隊のメンバーという中、円陣を組んだことによってイツキの顔が直ぐ側にあり、緊張しまくりのメンバー達だったが、スターという言葉に顔付きが変わってきた。

 ガンガン全力で攻めて、イツキと領主様にいい格好を見せようとしていたのに、見せ場を作るという作戦を言い渡されて戸惑うが、イツキの次の話でニヤリと笑う。


「僕は皆さんを信じています。格好いいドリブルシーンとか、ワンバウンドのパスとか、スター選手である皆さんなら御手の物ですよね。後半は速いパス回しを展開し、ラストは全力で走ります。前半は個人の技を重視し、後半はチームワークで勝負です」


「うん、分かった」「おう、任せとけ!「やってやるぜ!」「俺たちはスターだ!」


イツキの話に全員が遣る気で返事をする。気付けば他の10人も円陣の直ぐ後ろで返事をしていた。


「よし、みんな、やってやれ!」(イツキ)

「「オーッ!!!!」」(20人全員)


 余談ではあるが、これ以後ラミル上級学校の各種大会で円陣が組まれるようになる。




 同時刻、会場内では執行部6人と風紀部2人(エンドは選手、イツキは別行動)の合計8人が、各領主を担当し競技について説明したり、質問に答えたりしていた。


「君は確か執行部部長だったかな?」

「はいそうですマキ公爵様」

「イツキ君って、どんな学生かな?人気はあるの?」

「イツキ君は学校1の頭脳の持ち主であり、2つの親衛隊を持っています」

「へ~ぇ、そうなんだ……成る程」


マキ公爵はイツキに興味を持ったようで、エンターに色々質問しながら、視線はずっとイツキを追っていた。エンターはマキ公爵を、本能で注意人物に認定した。



「ホン領主様、執行部副部長のミノルと言います。よろしくお願いいたします」

「ああ、よろしく頼むよ。ところでイツキ君の剣の腕はどうなのかな?」

「はい、彼は生徒指導をしているのですが、後期は特産品作りが忙しくて、まだ1度しか練習に出ていません。ですから対戦したことはありませんが、指導教官より強いのは確かです。噂では、一振りで肘から下を切り落としたそうです」

「ほ、ほ~……そ、そうなんだ。彼は暴力的だったりはしないのかね?」

「はい?イツキ君がですか?彼は静かに怒りますから、暴力とは無縁ですね」


ミノルは思った。ホン領主は明らかにイツキ君の何かを疑っていると。そして何かビビっているようだと。



「君はイツキ君とは仲が良いのかな?」

「はい、ミノス領主様、私は同じ風紀部の隊長なのでよく知っています」

「イツキ君は、6月に学校を休んだそうだが本当かな?嘘じゃないのか?」

「はい本当です。正確には5月20日以降ですね。夏大会の途中だったのですが、緊急事態が起こったとかなんとか……彼は、背負っているものがたくさん有りますから」

「特産品を作ったのもイツキ君らしいが、本当は発明部とか教師ではないのかね?」

「いいえ、彼の発明の知識は、我々学生……いえ、技術開発部の方々を指導する程ですから」


隣の領地の領主の子息である自分に気付かないミノス領主に、インカは領主として大丈夫か?と心配になる。そしてイツキを疑うような物言いに、どうやらこの領主とは仲良くなれそうにないなと思った。



「君は確かマサキ公爵様のご子息だったかな?」

「はい、ヤマノ侯爵様」

「君はイツキ君とはかなり仲が良いのかな?」

「はい、公私共に大変お世話になっています」

「そうか……先程の会議で、イツキ君を傷付けてしまった……彼は気丈に振る舞っているが気を付けてあげて欲しい」

「分かりました。彼が使命を果たせるよう、僕らは全力でイツキ君を守ります」

「そうか、君は……イツキ君をよく知っているんだな……よろしく頼む」


ヤマノ侯爵は安心した。イツキ君の事情を知っている学生が側に居て、守ろうとしてくれている。しかも領主の子息だ。イツキ君同様に新米で若造の自分では、領主としてまだ力が足りない。イツキ君の為にも、城で働く時が来たようだと決心を固める。



〈〈 ピーッ 〉〉と試合開始の笛が鳴った。

 イツキはコートの外で中央ライン近くに座り、司令塔としてゲームを引っ張っていく。

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

毎日酷暑です。皆様夏バテに気を付けてお過ごしくださいませ。

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