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予言の紅星6 疾風の時  作者: 杵築しゅん
最後の仕事

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188/222

実演販売と夏大会の準備(1)

 4月20日午後、すっかり慣れた?モンタンが、悠々と上級学校のグラウンドに飛来し、何時もの如く学生たちに囲まれていた。

 今回モンタンは、たくさんの学生に撫でてもらい、嬉しくてグラウンドをぴょんぴょんと飛び、巨体にも拘わらず軽やかな動きが可愛かったので、モンタンに乗りたいと思う学生から、熱い視線を集めていた。


 イツキは早速イツキ組全員に、執行部室へと招集を掛けた。


「本格的に夏大会の準備を始めたいと思います。それで、レガート大峡谷行きを希望する最終人数は決まりましたか?」


「体力に自信のない20人が、まだ決断できていないようです。現地の入口までは馬車でしょうかイツキ君?」


執行部部長であるヨシノリは、なんだかイツキの雰囲気が一段と高貴な感じになっていて、つい丁寧な言葉で返事を返してしまう。

 以前のイツキであれば、直ぐに普通の話し方に変えるよう言うところだが、今日のイツキはそのまま会話を進めていく。

 イツキファンの皆さんや後輩は、元々敬語だったり丁寧語だったりするのだが、タメ口だった3年のミノルやヤンまで、何だか戸惑いながら話している。

 イツキ自身は全く気付いていないのだが、顔付きもきりりとシャープになり、女性と見間違うような可愛さは影を潜め、まるで後光が差しているかの如く、高貴なオーラを放っていた。


「そうですねぇ……校長と予算を詰めてみないと分かりませんが、現地までの移動には、丘の上のキニ商会が作る辻馬車5台を投入しようと思います。10人乗りに改造しているので、50人のお尻は守られますね」


 イツキの話を聞いたヤンとルビンが、直ぐに手を上げて新型の辻馬車に乗りたいとアピールする。


「全員が交代で乗れるようローテーションを組み、不平等がないようにしましょう」


ハハハとイツキが笑いながら言ったので、皆の妙な緊張は解れていった。

 そこからは係りを決めて、全員に仕事を割り振っていく。




 翌日の昼休み、食堂の掲示板には、イツキがスケッチしたレガート大峡谷の美しい絵の数々が展示されていた。

 そして執行部から、夏大会関連の張り紙が貼り出されていた。


【 夏 大 会  役割分担について 】


(1) 採取する薬草や食用素材の見本の絵を描く者 (急募) 10人程度 

(2) 調理係り (事前訓練あり)  30人程度

(3) グループリーダー (危険を恐れず責任感のある人) 10人

(4) 馬車の配車及び進行係り  25人程度

(5) ヤマノ上級学校との連絡交流係り(ヤマノ出身者以外) 5人

(6) 医療班 (医療コースの学生に限る) 10人程度 

(7) 物資運搬係り(軍・警備隊コースの学生に限る) 30人程度 

(8) 獣、魔獣撃退係り (体術、剣術、弓、槍のA級者) 30人程度

(9) 上記の係りに成らなかった者は、食材調達係りになる。


(1)と(2)と(6)の責任者 イツキ

(3)の責任者 風紀部隊長 ヤン

(4)の責任者 風紀部副隊長 ミノル

(5)の責任者 執行部部長 ヨシノリ

(7)(8)(9)の責任者 全教師


● 上記の係りについて、4月25日までに希望を出し、29日に決定する。

  


【 夏 大 会  グループ分けについて】


◎ グループリーダーは、投票で決定する。(4月28日に投票)


* 得票数上位の10人は、グループリーダーとしてグループを纏め、毎日リーダー会議に出席する。

* リーダー権限として、グループ内の(2)(4)(6)(7)(8)の係りの者を選ぶことができるものとする。(5月1日までの間に決めること)

* グループリーダーは、上記(8)と兼務できるものとする。


◎ グループリーダーが必要な5人を選んだ後は、各係り毎にくじを引きグループを決定する。くじ引き(5月3日予定)


● ラミル上級学校とヤマノ上級学校の全グループを2つ~3つのルートに分け薬草採取を行う。

  ルート分けは、夏大会前日に発表する。



【 夏大会の特典について ラミル上級学校・ヤマノ上級学校合同企画】


◎ 毎日、薬草の採取量、その他の活躍に得点をつけ(教師やグループリーダー、執行部、風紀部が)、各ルートで最高得点を獲得したグループの代表者2名は、モンタンで5分間上空散歩が出来る。


◎ 狩りで得た素材をドゴルに売った場合、そのお金は打ち上げ等に使われる。


◎(1)の絵を描ける人の内イツキが認めた者は、レガート大峡谷の景色を描くバイトができる。


◎ レガート大峡谷を観光地にするためのアイデアや、問題点等のレポートを募集。

  (グループでも個人でも参加可能)

  優秀なレポートには、ヤマノ領の伯爵から賞金が与えられる。

 【最優秀1作】 金貨1枚 【優秀1作】 銀貨5枚 【入選5作】 銀貨1枚



 昼食時間の食堂内は大騒ぎになった。

 本当にレガート大峡谷に行くのだと実感した学生と教師は、気持ちを引き締める……者もいれば、冒険に行けると喜ぶ……者もたくさん居た。

 それは、イツキが描いたレガート大峡谷の絵が、あまりにも美しく、見たこともない景観に心を奪われたことが大きな要因だと思われる。


 5時限目の医療コースの講義を終えたイツキは、急いでラミルに在るヤマノ侯爵屋敷に向かった。

 ヤマノ侯爵は1週間前にヤマノ領に帰っていたので、執事さんにヤマノ侯爵とヤマノ上級学校長宛に、至急の手紙を届けてもらうように頼んだ。




◇◇ ヤマノ上級学校 ◇◇


 4月24日昼前、イツキはモンタンに乗ってヤマノ上級学校のグラウンドに到着した。

 23日には手紙が届いており、授業中ということで大きな混乱もなかった。たぶん……


「突然呼び出してしまい、申し訳ありませんエルト様」


イツキはヤマノ上級学校の校長室で、臣下としての礼をとりながら挨拶する。


「いやいや嬉しい限りだよ。ミリダ国との戦争を回避した手腕は、流石だと感心したよ。えぇっと、今日はその……うちの伯爵として接した方がいいのだろうか?それともロームズ辺境伯として?」


ヤマノ侯爵エルトは、突然手紙でヤマノ上級学校に呼び出されたのだが、差出人の名前がキアフ・ヤエス・イツキとなっていたので、どう接するべきなのか迷っていた。


「もちろんヤマノ領の伯爵でお願い致します。伯爵位を頂きながら、これまで何もヤマノ領に貢献できておりませんでした。そこで、今回の夏大会を通じて、レガート大峡谷の素晴らしさを、多くの学生や教師に知ってもらい、新しい観光地にできないかと考えた次第です」


「ヤマノ領の伯爵として……と言われればそうだが、ロームズ辺境伯様としてなら、多大な支援を頂いていますよ」


 ヤマノ領では、ポム弾の製造や新型ペンの製造を行っており、ペンの収益から税金も納めているので、かなり貢献していたが、それは対外的には秘密になっている。

 エルトはにっこりと笑いながら、主として友としてイツキと握手を交わす。


「お久し振りですロームズ辺境伯様、いえ、今日はイツキ伯爵様でしたかな。2月の校長会議以来ですね。紙飛行機の講義は大変面白かったです。開発コースの教師も、医療コースの教師も、俄然遣る気になり頑張っていますよ」


校長は礼をとりながら、よい影響を与えていただきありがとうございますと頭を下げ、どうぞお座りくださいと応接セットに案内する。


 イツキは始めに、自分がスケッチしたレガート大峡谷の絵を、テーブルの上に取り出して広げる。

 スケッチのおおよその位置を示しながら、それらがいかに素晴らしい景色であるかを話し始める。

 そして、ラミル上級学校の掲示板に貼り出した物と同じ内容の紙を取り出し、参加人数や引率について話していく。


「夏大会の担当教師や、執行部のメンバーとも、打ち合わせをしたいと思います」


大まかな段取りを説明したところで、午後から詳しい打ち合わせをしたいと校長に申し入れる。


「分かりました。これらのスケッチは、直ぐに掲示板に貼らせていただきます。それから、執行部の学生たちと一緒に昼食は如何でしょうか?本日ラミル上級学校から夏大会の担当学生が来ると伝えてあります。まさか、ロームズ辺境伯様が来られるとは夢にも思っていないでしょうから、驚くと思いますよ」


校長は愉快そうに笑いながら、誰が来るのか秘密にしていたのだと言う。


「校長、ヤマノ上級学校でイツキ君は、我が領の伯爵だとは思われていないのか?」


「いえ、ヤマノ領唯一の伯爵の名前を知っている学生は多いですが、イツキ伯爵はヤマノ領の社交場に、1度も顔を出されていないご様子なので、半信半疑と申しましょうか……大人でさえお顔を知らないのではないでしょうか?」


校長は少し困った顔をして領主を見る。


「うむ……そう言われればそうだな。イツキ君、今夜は我が家に泊まってくれるんだろう?集められる者だけでも紹介しておこう。どうだい?」


エルトはう~んと考えながら腕を組み、やはり領都に屋敷が無いのはおかしいな……と呟き、急にヤマノ領の貴族を紹介したいと言い出した。

 名誉伯爵としての爵位ではあったが、領地を与えたのであれば、重要な会議や式典に呼ばなかった自分の失策ではないかと反省する。

 学生だったことや、成人していなかったこと、あまりにも忙しそうだったイツキに遠慮して、他の貴族との交流の場を設けていなかったのだ。


「すまない、年末に成人したのだから、社交界に誘わねばならなかったな」


「エルト様、私はラミルで行われる社交場にも、出席したことなどないですよ。そもそも、キシ領の子爵ってことも、キシ領の貴族には殆ど知られていませんし……」


イツキは自虐的に笑いながら、社交界には全く興味がありませんからと、貴族としては如何なものだろうかということを平気で言ってしまう。

 貴族としてのあれやこれやを教えるべき存在である寄親だが、キシ公爵は忙し過ぎて社交界に顔すら出さない。王様や秘書官は立場的に論外である。だったら自分が・・・と考えたところで、リース(聖人)様であるイツキ君には必要ないかもしれないと思い直す。


「エルト様、せっかくですから学生の武術の講義を見学してください。その後、私のモンタンに乗って、レガート大峡谷を少しだけ見に行きませんか?」


「なんだって!私を乗せてくれるのかい?」


凄く驚いたのかエルトは大きな声で尋ね、直ぐにキラキラした瞳をイツキに向けた。 

  

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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