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予言の紅星6 疾風の時  作者: 杵築しゅん
イツキ、商会を立ち上げる

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波乱の領主会議(2)

 ミノス領の領主選定について、あれこれと意見を聞いた国王は、1年間の社会経験を積ませた後、エンター伯爵をミノス領の侯爵に陞爵し、ミノスの内政を1年学ばせてから、正式に領主に任命すると決定した。


 現在エンター伯爵は、警備隊本部で要人警護部に在籍している。

 そこで警護の仕事を兼ね、9人の領主を1ヶ月交代で順に回り、領主の仕事を勉強させることに決定した。移動時間を考慮すると、1年で各領地を回ることができるだろうとの計算だった。


 本人の居ないところで勝手に領主にされようとしているエルビスに、イツキは心から同情した。

 イツキとしては、信頼できる部下や補佐役に恵まれることを祈るしかない。

 年末にはヤンも卒業するから、エルビスの従者になるのも有りだろうとイツキは想像する。

 後ろに育ての親であるエントン秘書官がついているので、人材は確保できるだろう。


 2年間は、財務部と産業部と警備隊から、事務部長や隊長クラスを王宮から派遣し、領主代行補佐として仕事をさせる。もちろん、その下にミノスの貴族を付けることは必須である。

 イツキは警備隊からの代表として、教育部の教育課長ボグを推薦しておいた。

 ボグ課長35歳は、昨年警備隊本部がギラ新教徒に襲撃された時に大ケガをしていたが、先頃復帰して新人研修をしていた。


 ボグ課長は、ロームズ警備隊で勤務していた時に、イツキの指揮下でオリ王子軍と戦っていた。彼の人柄や能力はイツキが保証すると言い、ヨム指揮官が了承したので承認された。

 ボグはミノス領のナイト(騎士爵)の家の出身で、ミノス上級学校を卒業していた。今回大尉から少佐に昇進させ、準男爵の爵位を授けることになった。

 仕事の内容は、ロームズ領の屋敷で働いているグライスと同じ、軍と警備隊との連携や予算の遣り繰りである。


 結局エルビス(エンター伯爵)が正式に領主に就任するまで、2年間は秘書官が領主を代行することになった。





 次の議題は、ホン領主から出ていた。


「王様、国境の守りを強固にしたいと思います。恥ずかしながらホン領は、ナイトをあまり抱えてはおらず、軍関係者も少ないのが現状です。全ては領主である私の不徳の致すところです。しかしながら、昨今のギラ新教の動きを考えると、悠長に構えてはいられません。お願いでございます。どうか国境軍を至急動かしてください」


真剣な顔をして、ホン領主は王様に深く頭を下げた。

 これまでのホン領主の人となりを知っている全員が、驚きのあまり自分の目を疑った。

『『 誰だお前はー! 』』と。


「国境の護り?ミリダ国は同盟国だ。ネイヤー公爵は、何をそんなに心配しているんだ?先日ミリダ国の王妃から、別段変わりないと手紙を貰ったが?」


「それは、その手紙の日付はいつだったのでしょうか?」


「日付?確か2月の初旬だったと思うが・・・まさか、何か、ミリダ国で何かあったのか?」


バルファー王は立ち上がり、睨むような目付きをホン領主に向ける。


「いいえ、それはまだ確定できておりません。国境を守る領主として恥ずかしいのですが、私はミリダ国に対し、政治的な目的で密偵を送り込んでいませんでした。しかし、商業面からギラ新教徒の暗躍の情報は掴んでいます。先月爵位剥奪の上、商会を取り潰した伯爵は、ミリダ国の王宮御用達商人の傘下におりました」


ホン領主は、その伯爵が経営していた商会がしていた悪事は、ミリダ国の商会の指示で行われており、ホン領で最近洗脳された貴族や商会長は、全てその伯爵経由で洗脳されていたのだと説明した。


「王宮御用達の商会……これは厄介な感じですね王様」


秘書官は腕を組むと、ウーンと唸りながら下を向く。


「念のため、破壊部隊のレン指揮官が、ミリダ国にルド副指揮官を潜入させています。何かあれば軍のハヤマ(通信鳥)で連絡が来ると思います。しかし、ミリダ国の王都ヤギから届く知らせであれば、最短でも6日~7日必要です」


ヨム指揮官は【破壊部隊】の潜入を伝えるが、その表情は固い。


 実質的に【破壊部隊】を動かしているのはイツキである。そのイツキがヨム指揮官に、ミリダ国は必ずギラ新教の手に落ちると予測し伝えていたのだ。

 イツキは昨年末からずっと、ホン領とミリダ国に【破壊部隊】と【教会の情報部隊】を展開させていた。

【教会の情報部隊】から上がってきていた情報で、ミリダ国の皇太子は、どうやらギラ新教徒のようだと報告を受けたのは、春大会の前日だった。


 その報告を聞いたイツキは、自分の予知(2月30日)も含めて、国境軍ラミル部隊の隊長であるヤマギと、【破壊部隊】のレン指揮官を、こっそりロームズ辺境伯邸に呼び出し指示を出していた。

【破壊部隊】もイツキの指揮下にあるが、【奇跡の世代】もイツキの指揮下にあった。


【奇跡の世代】であるヤマギ隊長が、イツキの指揮に従うのは当然であり、ヤマギ隊長は隊長権限で、ヤマノ・カワノ・マサキ・キシに駐屯させていた100人を、演習という名目で、3月2日にホン領に移動命令を出していた。

 国境軍の本来の仕事は、他国との国境を守ることだが、平和なレガート国では、各領境にも配置されていた。


 そして【破壊部隊】のレン指揮官は、元建設部隊の大佐だった。

 ホン領の国境設備を強固にするため、新しく建設部隊の大佐に任命された元部下に、国境の点検という名目で、200人の人員をホン領に向かわせるよう、レン指揮官は指示を出していた。

 言うまでもないが、新しく建設部隊の大佐に任命された者も、【奇跡の世代】のメンバーであり、イツキの信奉者である。



 当然のことながら、命令は軍のハヤマを使って出されていた。

 命令を受けた国境軍の100人が、ホン領の国境に到着するのは3月13日の予定で、建設部隊の200人が到着するのも13日の予定だった。

 300人の指揮を任されたのは、【破壊部隊】のフジヤ副指揮官だった。

 フジヤ副指揮官もロームズ組であり、元は前衛部隊を率いていたバリバリの突撃……凄腕の遣り手と有名な中佐だった。


 当たり前のことだが、このことは全く王様に報告されてはいない。

 それぞれの部署の活動内容まで、いちいち国王に報告などされることはなかった。

 この場にいるギニ司令官であっても、書類で報告を受ける程度だった。

 幸運なことに、ギニ司令官はミノス領の後片付けや、軍の再編等で忙しかった。

 面倒な手続きなど待っていられないイツキにとって、遣りたい放題であった。


「分かった。念のために国境軍を向かわせよう。ギニ司令官、直ぐに用意出来るのは、何人くらいだろうか?」


「はい王様、国境に接していない領地の者と、ラミルに居る者とを合わせると……100人くらいです。直ぐに指令を出して向かわせれば、60人が7日、いえ、急げば6日で到着します。他は8日以上必要です」


ギニ司令官は頭の中で国境軍の配置人数をカウントしながら、王様に人数を告げる。


『やっぱりこの人達は、平和ボケしている』


イツキは国王とギニ司令官のやり取りを聞きながら、これ見よがしに、いや、自然と大きなため息をついてしまう。

 あまりにも大きなため息をつくイツキに、ギョッとした視線を向けたのはギニ司令官だった。

 イツキの表情はすこぶる不機嫌。そして明らかに怒っていたのだ。


「ギニ司令官、お訊きしますが、ミリダ国の軍隊は、レガート国の軍隊よりも強いと思いますか?それとも弱いと思いますか?レガート国は、ミリダ国軍に勝てますか?」


イツキは無意識に【銀色のオーラ】を身に纏い、会議室の室温を2度ほど下げながら質問した。


「イツキ君、君はレガート国とミリダ国の間で、戦争が起こるとでも思っているのか?ミリダ国は同盟国だ。もしも王族に何かあったり、ハキ神国やギラ新教がミリダ国を攻めるのなら、レガート国は援軍を送ることになるだろう。だが、君の口振りだと、まるでミリダ国が戦争を仕掛けてくるかのよう・・・」


そこまで言ってギニ司令官は話すのをやめた。いや、話せなくなった。

 ミリダ国が攻めてくるという可能性を全く考えていなかった自分が、とんでもないミスを犯していたことに気付いたのだ。

 軍を預かる者として、如何なる友好国であったとしても、いつ何時(なんどき)その関係が崩れるか分からないと、用心し備えておかねばならないのだ。それは当然の義務であり、最たる重要事項だった。


「ミリダ国の軍隊は強いですよ。ハキ神国とは常に緊張状態にあり、軍にお金を掛けています。日頃の訓練は元より武器に至るまで。小国と侮っていると、ホン領が落ちるのに2日も必要ないでしょう。もし今、攻められたらの話ですが」


イツキはそう言いながらも、ギニ司令官や王様、秘書官とは決して視線を合わせようとしない。


 そして暫く、会議室に沈黙が流れる。




「イ、イツキ君、ミリダ国は、いや、ミリダ国王は亡くなったのか?」


呆然とした表情で立ち上がり沈黙を破ったのは、ミリダ国との国境の領地の領主であるラシード侯爵(カイ領主)だった。


「いいえ、その確認は……()()とれていません」

「「「…………」」」


カイ領主を含めたほぼ全員が、愕然とした表情で固まった。

 まだとれていない・・・まだ?

 では、その可能性があるということなのか?


 ロームズ辺境伯が、ブルーノア教会の上位神父様であると知ってしまったメンバーたちは、その情報……いや、その可能性があると、ブルーノア教会は掴んでいるのだと思った。ゴクリと唾を呑み込んだり、そんな筈はないと否定しようとしたり、言葉を発することはないが、全員頭の中はパニック状態だった。


「王様、国境軍などと言わず、レガート軍全体で人員を配置してください。何事もなければそれで済みます。お金が必要ならホン領で負担します。お願いでございます。私は領民を守らねばなりません」


ホン領主は再び深く頭を下げ、必死で軍を動かしてくれと頼む。

 そして全員が緊迫した表情で、確認するようイツキに視線を向ける。


「今ある投石機を、全てホン領に運んでください」


イツキは短く、それだけ指示を出した。

 その一言で、ミリダ国が侵攻してくるという恐ろしいことが、現実として本当に起こりうるのだと、全員が理解した。



「秘書官、直ぐにミリダ国の情報を集めてくれ。ギニ司令官、キシとマサキの8割の軍を、ホンの国境に向かわせろ!カイ領にはミノスの軍を向かわせろ!レガート国は、第2級警戒体制に入る」


バルファー王は第2級警戒体制を宣言し、領主会議は強制終了した。

 これから大臣や軍隊、警備隊の高官を緊急召集し、今後の対策会議が行われる。

 秘書官はレガート城の最上階に設置された、教会の鐘とは全く違う音を出す、緊急召集を告げる鐘を鳴らすため、急いで階段に向かって走りだした。

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

暫く更新が遅れるかもしれません。出来るだけ頑張ります。

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