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予言の紅星6 疾風の時  作者: 杵築しゅん
イツキ、商会を立ち上げる

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採用試験と面接(2)

 リリアン衣装店の3人は、だだっ広い倉庫のような店の中に入り、ポカンと口を開けたまま、キョロキョロと店内を見回していた。


「制作は全て2階で行います。1階はできた商品の展示と販売に使いますが、年に3回くらい新作発表会をします。モデルを王宮のメイドさんや侍女の皆さんにお願いし、発表会、いえ、ファッションショーには、国で働く独身男性を審査員という名目で出席させ、ファッションショー終了後には、モデルさんや商品をお買い上げいただいたお客様を、独身者のお見合いパーティーに招待します」 


イツキはこの店で作るのは、高級ドレスと大量の既製服だと説明した後、この商会の運営方法を説明していく。


「そ、それでは、この場所では一般人への販売は行わず、販売するのは契約した商会だけで、販売先はレガート国だけではなく大陸中の商会になると……」


店長のエリザベスは、あまりにも大きな話に目を見開きながらも、その瞳は既に遣る気でキラキラと輝いていた。


「この店が、高級ドレスと安価な服の流行をつくっていくのね。あぁ、なんて素敵なの……やっぱりこれは夢?夢なのかしら」


デザイナーのレイナは手を胸の前で組んで、夢見る少女のようにうっとりした表情で呟き、イツキの話した動きやすい働く女性の為の既製服のデザインを思い浮かべる。


「あの~、ファッションショーって、どのような感じなのでしょうか?全く想像できませんが……」


1番若い21歳のお針子エレナが、イツキに向かって質問する。

 するとイツキは、全員に想像力と妄想を働かせてくださいねと前置きをして、ファッションショーについて話し始める。


「1階の床には全て高級板をはり、壁には白を基調とした壁石が貼られ、美しい装飾と大きな鏡、天井にはキラキラと輝くガラスのシャンデリア、正面の階段には深紅の絨毯が敷かれます。

 ショーの開始とともに、新作の既製服を着たモデルさんたちが、笑顔で2階から下りてきます。1人目が1階に到着すると、次の服を着たモデルさんがまた登場します。

 既製服でも少し高級な服を着たモデルさんは、独身男性と楽しそうに話しながら、または手を繋ぎながら下りてきます。


 ショーの最後は、高級ドレスを着た貴族家の令嬢が、軍や警備隊、王宮で働く貴族家の見目麗しい独身男性にリードされながら、優雅に微笑みながらゆっくりと上品に階段を下りてきます。

 ラストを飾るのは、他に類を見ない純白の高級ドレス・・・教会の結婚式で着るウエディングドレスを着たモデルさんが登場し、階段の途中で待っていた男性と腕を組んで下りてきます」


イツキの語りの能力は優れていた。なので3人は、イツキの話を聞きながら充分に想像力を発揮し、まるで物語の主人公になったような気持ちで、あるシーンでは自身がモデルになり、あるシーンでは観客になることができた。

 ちなみにイツキのこの知識は、読んだ小説や観劇したシーンを参考にしている。


「なんて素敵なの……あぁ・・・」と言って、結婚に憧れ、想像力溢れるエレナは思わず倒れそうになる。



「どうですか?うちで働いてみませんか?」


自分が想像していた以上の反応を示してくれた3人に、イツキは極上の笑顔で訊ねた。


「「「働きます。いえ、働かせてください!」」」


3人の声は、仲良くハモっていた。そして顔を見合せ幸せそうに微笑んで抱きあった。



「それでは、改めまして、女性の既製服と高級ドレスの商会【丘の上のキニ】の商会長、キアフ・ルバ・イツキ・ロームズです」


3人の興奮が納まったところで、イツキは自分の正体を告げた。


「えっ・・・?」(お針子エレナ)

「ええっ、ロームズ?」(デザイナー レイナ)

「ええぇーっ!ロームズ辺境伯様?」(店長エリザベス)


イツキの正体を知った3人は、短く呟いたり叫んで固まった。

 完全に挙動不審になり、ギギギと怪しい動きでリンダの方に首を向ける。


「フフフ、こちらは昨年新しく領主に就任された、ロームズ辺境伯様です。私は今、イツキ様の屋敷で働いているのよ。商会長と言ってもイツキ様はまだ上級学校の3年生だから、制作の仕事はエリザベス、貴女が中心になって頑張って欲しいのよ。運営担当の代表部長の女性は明日面接をして決めるけど、制作については貴女に任せる予定よ」


「ええっ!わ、私が制作の責任者なんですか?」


あまりにも急な展開に、エリザベスはややパニックになりかける。


「エリザベスさん、レイナさん、エレナさん、明日の朝、デザイナーとお針子とモデルの面接を王宮で行います。モデルとデザイナーは、侍女とメイドの中から選びます。特にお針子の実力は、僕では分かりませんので、ぜひ、一緒に面接をしてください」


「「「ええーっ!王宮で面接・・・?」」」


3人は再び固まり、軽い眩暈を感じながら、半分涙目でリンダの方に助けを求める。

 既に3人の常識の思考では、イツキの話について行けなかったのだ。


「ホホホ、これから詳しい打ち合わせを屋敷でしましょう。うちの屋敷の家令は女性で、事務長と呼ばれているのだけれど、ラミル女学院の卒業生よ。とても頼りになるから安心してね。フフ、主の期待に応えて、女性の力をお見せしなくてはね」


リンダは優しく3人に微笑みながらそう言うと、大好きなイツキに、作戦成功を喜ぶ笑顔を向けた。




◇◇ 王宮待機棟 ◇◇


 3月5日朝、イツキは事務長のティーラと昨日雇ったリリアン商会の3人を連れて、王宮の侍女やメイドたちが使う待機棟にやって来た。


 イツキはモデルとお針子の面接には立ち会わず、デザイナーの1次試験を担当する。

 実はイツキ、商会の責任者として働ける人材を、侍女長に頼んで推薦してもらうことになっていた。他の応募者たちの手前、デザイナーとして試験をするが、イツキの目的は、婦人服部門の代表部長を選ぶことだった。

 2次試験の面接は、純粋にデザイナーの応募者はリリアン商会の3人が面接し、代表部長候補の者はイツキとティーラが面接する。


 面接はモデル志望の女性から1階で行われ、立ち姿・笑顔・歩く姿・礼をとった姿で得点をつけ、上位10人をモデルにする予定である。

 応募者が40人以上居たので、モデルには選ばれなくても、受付係りや案内係を手伝ってくれたら、懇親会という名の【お見合いパーティー】に出席出来るという特典を、急遽追加することにした。

 モデル希望の女性の目的は、間違いなく【お見合いパーティー】に出席するためなので、気合いの入り方が凄くて、面接したティーラとリリアン商会の3人は、怖いと感じる程だった。


 モデルの面接が終了すると、イツキは2階侍女長の執務室を借りて、デザイナーの試験を開始した。


「受付番号8番までの人は、これからデザイン画を描いてもらいます。テーマは市場で働く時に着る服のデザインです。これから1時間の間に控え室で書いてください。9番と10番の2人は、別の試験をしていただきます。両方とも1時間後に課題をこの部屋まで持ってきてください。それでは開始してください」


イツキはそう言うと、デザイナー志望者には白紙の用紙を渡し、残りの2人には【2つのテーマについて述べよ】と書いた論述問題を渡した。



 午前11時、イツキが担当した1次試験を受けた10人が、解答を提出しに執務室にやって来た。

 イツキは、8番までの受験者の2次試験は午後1時から1階で、9番と10番の者は同じく午後1時から侍女長の執務室で行うと告げた。

 皆が執務室を出ていくと、イツキはメイドさんが淹れてくれたお茶を飲みながら、8人のデザイナー希望の受験者が描いたデザイン画と、残りの2人が書いた論述問題の採点を始めた。


 デザイン画は、イツキが思う働く女性のための服とは程遠い、オシャレで華美なデザインを描いた者は落とし、機能性や動きやすさを重視し、たくさんのポケットなどを描いていた2人を、1次合格者候補とした。


 論述問題を受けた2人には、侍女長が直々に、ロームズ辺境伯様が始められる、新しい事業を手伝ってみないかと声を掛けて貰っていた。

 実際に侍女長が声を掛けた者は5人居たが、3人は王宮勤めを辞めたくないと答えたので、本日試験を受けた者は2人だけだった。

 2人の論述問題のテーマは、【女性が働きやすい職場とは】と【女性が商会を経営することで考えられる苦難について】というものだった。


 2人とも女学院を優秀な成績で卒業しており、解答文を読んだイツキは、思った通りに優秀な人材が確保出来そうだとニヤリと笑った。

 侍女長によるとこの2人、本当は侍女ではなく事務官を希望していたらしい。しかし、女性の事務官は募集人数が少なく、この2人が卒業した年には募集が無かった。そこで王宮の侍女を受験したのだった。



 全ての面接が順調に進み、くたくたになったリリアン商会の3人とティーラは、午前11時半にイツキと合流し、少し早めの昼食を食べていた。


「私が王宮で食事をしているなんて、今でも信じられません」(お針子のエレナ)

「そうよね。昨日までの私たちの絶望は、何処へ行ったのかしら」(レイナ)

「私だって信じられないわ。王宮で食事をしていることよりも、領主様と一緒に食事をしていることが……」


3人のリーダーであるエリザベスは、今の現状が有り得ない幸運であると分かっているだけに、夢なら覚めないでと神に祈ったりする。


「あら、私だっていきなり事務長よ。普通の主婦だったのに。今では前の生活がどんなだったのか、思い出せないくらいだわ」


ティーラがそう言うと、3人は遣り手の事務長の言葉が信じられず「本当ですか?」とイツキに視線を向ける。


「そう言えばそうだった……まあ、僕の目に狂いはなかったということだよね」


イツキは領主らしい威圧感や畏れ多い感じなど全く出さずに、その辺の上司と部下のような感じで話しながら食事をする。


 食後は全員でお茶を飲みながら、8枚のデザイン画について論じる。

 イツキは自分が選んだ2枚について、どうしてこの2枚を選んだのかを説明する。

 初めは売れる服を作るが、本来の目的は働きやすい服を作ることなのだと力説し、機能的だけどちょっとお洒落な服が作りたいと夢を語った。



 午後1時、予定通りに2次試験を開始し、デザイナーについてはリリアン商会の3人に選考を任せた。

 イツキとティーラは、2人の侍女の2次試験というか面接を開始した。

 全ての募集の合格発表は2日後の7日だったが、イツキとティーラが面接した2人については、その日の内に合格であると、侍女長から2人に告げられた。  

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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