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予言の紅星6 疾風の時  作者: 杵築しゅん
領主と学生と教師

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新しい生活(ラミル2)

 ミノルは同郷の後輩デイルに、正直がっかりした。

 憧れ尊敬するソウタ指揮官は、身分など関係なく実力でのしあがった人だった。

(表向きにはソウタ指揮官は死亡している)

 真に男らしく、キシ組の中でも1番の目標としている人だったのに、甥のデイルは伯爵家の子息であることを前面に出し、男爵家の子息である自分をバカにしていた。


「確かにラミル上級学校は貴族が殆どで、入学した頃は家柄に拘る者も多い。しかし、上級生に向かって名前と身分を名乗らせる学生など、出会ったことなどない」


ミノルは放課後の執行部室で、ヨシノリに昼の出来事を説明していた。


「そうだな……身分絶対主義なのか、他に理由があって嫌な態度をとっているのか……どちらにしても実際に会って話してみるよ。身分に拘りがあるのなら僕の話は聞くだろう。それでも態度が変わらなければ、とても風紀部やイツキ組には迎えられない」


ヨシノリはそう言うと、デイルと直接話をするために執行部室を出ていった。


 デイルを探して体育館に行くと、グレーの髪にグレーの瞳で、レガート国の貴族でございますという感じの、ある意味この学校では目立ちにくいデイルが居た。

 しかし、デイルは身長が185センチと大きく、体もがっしり体型で、顔もそれなりに整っており、如何にも軍属系の風貌なので、違う意味で目立っていた。

 どうやら部活見学に来ているようで、剣術部の練習と、今年から正式な部活になったポルムゴール部の練習を、真剣な表情で見ていた。


「君は1年のデイル君?僕は3年執行部のヨシノリという者だが、少し話をいいかな?」

「ああ、入学式で話をしていた先輩……」


ヨシノリの問い掛けに、拒絶することはないものの、面倒臭いなとう表情で応える。


「随分と鍛えているようだね。剣術部に入るのかな?」

「さあ……どうでしょう。僕より強い人が居なければ、入部しても意味がない。フッ、この程度では……」


デイルは目の前で練習をしている先輩達を、見下すように鼻で笑いながら、とことん感じの悪い態度をとる。


「まあ、上級者はこの中には居ないからね。余程自信があるようだが、君では勝てない先輩もいるよ。ところで君はリバード王子をどう思う?」


ヨシノリはイツキ(神の神託)より授かった、右こめかみの【青い星の印】の力を使って、デイルに悪意があるかどうかを確認するために質問する。


「君では勝てない?まあ、そういう先輩も居ないとつまらないですから、本当に居るなら手合わせしますよ。リバード王子をどう思う?それはどういう意味です?」


デイルは目に前の先輩の思惑が分からず、怪訝そうな顔をして逆に質問で返した。


「どういう意味かって、当然臣下として御守りしようとか、仲良くしようとか……はたまた第2王子など眼中にないとか……意味はいろいろさ。他の1年生の大部分は、最年少入学した王子を尊敬しているようだが、中には王族だから合格したと思っている者もいるだろうね」


「くだらない。私はキシ領の伯爵家の長男だ。いずれは家を継ぎ軍か警備隊で働く。レガート王家に仕えているのだぞ?仲良しごっこなど出来るか!」


デイルはどこまでも高飛車な態度で、臣下としての立ち位置であることが当然だというように、感情的になりながら言う。

 今のところ、悪意の象徴である黒い煙は、デイルの顔の周りには見えない。


「君は、ソウタ指揮官とは全く違う生き方なんだね」


ヨシノリは残念そうな顔をして、ミノルと同じようなことを口にした。


「はあ?どういう意味です?貴方に叔父の何が分かるんです?まるでよく知っているような言い方ですね。学生の貴方がどうして……」


尊敬し憧れていた叔父と比べられたことも許せないが、似ていないとか違う生き方とか、なんの権利があってそんなことを言うんだとデイルは腹が立つ。


「君はソウタ指揮官が何と戦っていたか知ってるか?僕達は同じ敵と戦っている。それに僕は同じ敵に殺されかけた。君とソウタ指揮官の違いは、信頼できる友が居るかどうか、そして、命を懸けて共に戦う仲間が居るかどうかというところだ。ソウタ指揮官は指揮官でもあったが、奇跡の世代の一員でもあり、キシ組の一員でもあった。君には信じる仲間は居ないだろう」


「グッ……仲間なんて……俺だって敵の正体は知っている。ギラ新教だ!ギラ新教が叔父を殺したんだ。必ず俺が仇を討つ」


まるでバカにされたようで、デイルは拳を握り体を震わせ、睨み付けるようにヨシノリを見て、仇を討つと宣言する。


「今の君ではギラ新教に勝つことなど出来ない!君は敵のことなど何も知らないだろう?奴等の狡猾さも恐ろしさも、凶悪さや資金源や活動方法や洗脳方法や、殺し屋がどれだけ強いかとか……結局君1人では何も出来はしない。今のままではね。僕はマサキ公爵家の子息だが、強大な敵の前で自分がどれだけ無力なのかを知っている。だから仲間と共に戦っている。……君が本当にギラ新教と戦う気があるのなら、風紀部室か執行部室を訪ねてこい。戦う勇気が本当にあるのならね」


ヨシノリは厳しい表情で、出来はしないと切り捨てる。そして最後は誘うように言ってニヤリと笑ってみせた。

 ヨシノリは賭けに出た。

 向こうがこちらを下に見る以上に、もっと上から見下ろした。

 もしかしたら人を寄せ付けない他の理由があるのかもしれないが、それはこちらから探るものではなく、向こうから話そうとしなければどうにもならないことだ。


 今年の執行部と風紀部の立候補の届け出の締め切りは、明後日の昼までである。

 16日には演説会があり、21日が選挙である。明日の放課後デイルが来なければ、イツキ君には申し訳ないがデイルの推薦は諦めると決めたヨシノリだった。 




 ヨシノリは次に、発明部の部活場所である工作棟に向かった。リバード王子とケン君が部活見学をしていたのだ。


「どうですかリバード君、ケン君?これがイツキ君が心血を注いで完成させたポルムです」


ヨシノリはキラキラした瞳でポルムを作っている発明部・植物部・化学部の先輩達を見ている、リバード王子とケン君に声を掛けた。


「あっ、ヨシノリ先輩、お疲れ様です。凄いです」(リバード王子)

「ヨシノリ先輩、お久し振りです。感動しました。さすがイツキ先輩です」(ケン)


今やレガート国の特産品として、国内外にその名を轟かせ始めたポルムの製作現場で、やや興奮気味に2人の後輩は返事をした。


「見学中申し訳ないが、少し執行部室に付き合って貰いたいんだが、いいかな?」

「「もちろんですヨシノリ先輩」」


2人は仲良くハモりながら、足を踏み入れたことがない執行部室へのお誘いを、ワクワクした笑顔で了承した。



 執行部室に移動した3人は、ミノル、ヤン、ナスカ、イースター、新しくイツキ組に加わるリョウガやルビンやホリーと合流した。


「えっ、俺が執行部役員になるのですか?そして推薦者はヨシノリ先輩?」


ヨシノリから執行部の説明を受け、自分が推薦者になるとヨシノリから聞いたケンは、驚いた表情でヨシノリに確認する。


「ああ、1年首席入学者は、執行部に推薦されることが多いな」


ヨシノリはそう言うと、昨年度首席入学のナスカを指差し、イツキ親衛隊の説明をさせる。


「ええーっ、本当ですか?僕がイツキ先輩の親衛隊に?しかも1年部代表になれるんですかナスカ先輩?」


「そうだよ。そしてイツキ組に入って、共にこの学園を引っ張りながらギラ新教と戦って欲しい。今夜ヨシノリ先輩の部屋で選挙の対策会議をするから、2人にも出席してもらう。俺は今年からイツキ親衛隊の隊長を務めることになったので、何かあれば北寮の俺の部屋に相談に来てくれ」


ナスカはそう言いながらリバード王子とケン君と握手をする。そして、その場に居る全員を紹介していく。

 そしてその夜、イツキ、パル、1年のデイル以外の13人が集まり、明日立候補と推薦の届け出をすることが決まった。


「残る問題はデイルのことだな・・・」(ヨシノリ)

「どうしてそんなに(かたく)なな態度なんだろうか?」(ヤン)


「放課後、同じキシ中級学校から入学してきた奴に話を聞いたんだが……3年生(12歳)の時に、同じ剣術部の5年の先輩から無理難題を押し付けられたり、金をせびられたりしたらしい。拒んだり逆らえば、剣術部で練習と称した虐めを受けたようで、それから人が変わってしまったらしい」


ミノルは重い口調で事情を話す。恐らく周りは報復が怖くて、見て見ぬ振りをしたのだろうと推察した。


「しかし、古参の伯爵家の長男に、よくそんなことが出来たな。教師は何をしていたんだ?」


「ナスカ、どうらや虐めていた首謀者の父親は、教頭だったらしい。しかも聞いたところによると、その教頭は昨年の春休みに突然学校を辞めたようだ。出身はラミルで男爵家の養子に入っていた。……もしかしたらギラ新教徒だったのかもしれない。ギラ新教徒だと判明したら爵位を剥奪すると、王様が公布を出された翌日に学校を辞めている」


ミノルは憎々しそうに言いながら、ギラ新教徒ならキシ領の貴族を敵だと思っていたはずだから、親子でデイルを排除しようとしたのかもしれない……調べたら他にも被害者がいる可能性もあると、悔しそうに顔を歪め付け加えた。


「事情は分かった。だが、例えそれが原因でも、このままではダメだ。明日、此処に来てくれることを祈ろう。デイルには戦友が、そして使命が必要だ」


ヨシノリは全員に向かってそう断言すると、イツキ君の決めたことには、必ず意味があるはずだからと笑った。




翌日の朝食時間、リバード王子とケンは、早速行動を開始した。


「ここ、座っていい?」


リバード王子は然り気無く、ポツンと1人で食事をしていたデイルに話し掛けた。

 デイルは突然リバード王子に話し掛けられ、驚いた顔をしたが、「どうぞ」と少し恥ずかしそうに答えた。


 そこからリバード王子とケンの、とんでもない話が始まる。

 

「リバード王子、死にもの狂いで勉強して良かったですね。これで3度目の毒殺の危険は回避されました」


「そうだねケン。でも、逃げていてはダメなんだ。ギラ新教は必ずまた命を狙ってくる。武術の腕を磨き、共に戦う仲間を作らねばならない。どんなに辛くても、僕を信じてくれる人がいる限り、そして、僕を守ろうとしてくれる人がいる限り、僕は、僕は勝たねばならない。ギラ新教を倒すためなら何だってする。それが僕のプライドなんだ」


「そうですね王子、いえリバード。俺も戦います。必ずリバードを守れる従者に成ります。だから、俺は執行部に入り、優秀な学生を仲間にして卒業に備えます」


「僕はイツキ組に入って、多くのことを学ぶよ。イツキ先生、いや、イツキ先輩に認めて貰える人間に、必ず成ってみせる」



 側で何となく2人の会話を聞いていたデイルは、目を大きく見開きながら、己の人間としての器の小ささに愕然とした。 

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

長いゴールデンウィーク、休みは1日だけだが、1日中小説を書きたい。でも、他の作品も読みたい……

どうか貴重な休みを、自分のために使えますようにと願う今日この頃……

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