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予言の紅星6 疾風の時  作者: 杵築しゅん
領主と学生と教師

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131/222

前期スタート(ラミル)

新章スタートしました。

これからもよろしくお願いします。

◇◇ ラミル上級学校 ◇◇


 時は少し遡る。

 1月10日、ラミル上級学校は、入学式に備えて万全の警備態勢をとっていた。

 本年は、26年振りに王子の入学が決まっていたので、入学式にやって来る新入生の父兄が多いのだ。

 毎年新入生の父兄は、父親だけが参加する家が多いのだが、王子の同期生となる幸運な学生の親達が、気合いを入れ両親揃って、または祖父までやって来ると思われる。


「ヤン、エンド、風紀部の2人は新入生の入場を手伝ってくれ。ヨシノリ、ミノル、インダス、ナスカ、イースター、執行部の5人は父兄の誘導を頼む。A組とB組に分かれて父兄席を設けているから、しっかり確認してくれ。リバード王子はA組だが父兄には伝えない、質問されても答えないように」


「はい、分かりました教頭先生」(全員)


返事をしている役員たちは、家庭教師をしていたヨシノリや卒業したエンター、クレタから、リバード王子の話を時々聞いていた。なので、会ったこともない王子様のことを、まるで弟のような仲間のような気持ちで迎えていた。今日の入学を誰よりも喜んでいたし、何かあれば身を挺してでも御守りしようと決心していた。

 このメンバーは、リバード王子が2度も魔獣の毒で殺されそうになったことを知っていた。そしてギラ新教徒が、リバード王子を排除しようとしていることも知っていた。


「よし、俺とインダスとイースターはB組、ヨシノリ、ナスカはA組の父兄を誘導する。イツキ君が帰るまで、リバード王子にかすり傷ひとつ負わせてはならない!」


執行部副部長で武闘派のミノルが、全員に向けて檄を飛ばす。


「オーッ!」と全員応え、闘う男の顔をして担当の持ち場へと向かう。

 ある意味、校長や教頭よりも危機感を強く持っている学生に、警備担当責任者として来ていた警備隊のヨム指揮官は、フッと笑いながら頼もしい後輩たちを笑顔で見る。

 同じキシ領出身のミノルは、キシ公爵家の執事をしていた叔父を、先月ギラ新教徒に殺されていた。

 キシ領の人間にとってギラ新教徒は、尊敬され人望の厚かった前マグダス伯爵夫妻を殺し、役場やキシ組の屋敷に火を放ち、あろうことかフィリップ秘書官補佐とソウタ指揮官を卑怯な手で殺した、絶対に許せない憎き敵として認定されていた。



 午前10時、多少のドタバタはあったものの、なんとか無事に入学式が開始された。

 いつものように少し長い校長の挨拶から始まった入学式は、来賓のキシ公爵の挨拶、在校生代表(執行部副部長のヨシノリ)の挨拶を終え、いよいよ新入生代表の挨拶の番がやって来た。

 毎年新入生代表の挨拶をするのは、首席合格者と決まっていた。


「新入生代表、ケン・ネル・ラシード」

「はい!」


教頭に名を呼ばれ、リバード王子の従兄弟であり、イツキたちが勉強を教えたケン君が、大きな声で応えて壇上に上がる。

 体育館内は「オオーッ!」とあちらこちらから声が上がり、本年度首席合格者の名を知った親達が、ひそひそと会話する。

 常識ある貴族ならば、ネル・ラシードは側室エバ様の実家の名であり、父親は王宮の人事部長であると知っている。王子に次いでケンに注目が集まる。

 が、しかし、息子の晴れ舞台を見ていたのは、母親と祖父だった。

 父親のラシード伯爵は、ロームズ医学大学の入学式に出席するためロームズ領に行っており留守だった。


「本日、我々60人は、伝統と格式高きラミル上級学校の、門をくぐることを許されました。それは、私たちの喜びであり誇りであり希望です。今時代は、混迷の時を迎えていますが・・・我ら60人は・・・し、決して挫けることなく、懸命に学び友を作り、先輩方や先生方の教えや助言をいただきながら、前を向いて歩んでいきます。尊敬する先輩方に置いていかれないよう、自分のことだけではなく、友のため、家族のため、学校のため、国のため、……そしてランドル大陸の平和を守るため、努力を惜しまず戦うことを誓います。新入生代表ケン・ネル・ラシード」


ケンは宣誓のような挨拶を終え、来賓や先生方に深く頭を下げ、先輩方に軽く頭を下げた。新入生は全員が立ち上がり、ケンと同じように頭を下げていく。

 リバード王子の母である側室のエバ様は、警備の都合上2階席での列席となっている。全ての式次第が終わったことを教頭が告げると、エバ様は1番始めに退席される。

 この国では、警護対象者から退場する決まりがあり、当然ながら王族は、誰よりも先に退場する。そして会場を出ていったことを確認し、他の者も退場していく。


「皆様、ご側室のエバ様が退場なさいます」と教頭が告げると、会場内の全員が立ち上がり、エバ様の方を向き正式な礼をとる。

 エバ様はにっこりと微笑まれ、侍女やヨム指揮官らに守られながら退場していく。

 エバ様が退場されると、来賓が退場し、そして父兄たちも退場した。



「続きまして、1099年度前期始業式を始めます」と、教頭が大きな声で告げた。

 始めに校長が壇上に上がり、各クラスの担任を発表する。

 次に、各クラスのクラス代表の名前が呼ばれる。それは、そのクラスで1番成績が優秀であることを示しており、3年生は全員、あることを真剣に祈っていた。


『どうか、自分のクラス代表がイツキ君でありますように』と。


 クラス分けは、A組が文官・経済・医療コース。B組は軍・開発コース。C組は警備隊コースである。

 既にイツキは、医療と開発の専門スキル修得コースで資格をとっていた。

 かといって、治安部隊で指揮官補佐までしていたので、いったいイツキはどのクラスに入るのか、誰にも見当がつかなかった。


 2年生と3年生は、昨日までに全員が寮に戻っており、今朝は一般教室棟ではなく、特別教室棟の自分が希望する専門スキル修得コースの教室に集合していた。

 そして、専門スキル修得コースの担当教師に届け出て、クラスが正式に決定する仕組みだった。

 しかし、今年のクラス分けはいつもの年と勝手が違っていた。

 医学大学が出来たことにより、新2年生が軍や警備隊コースから、文官コースや医療コースを希望する者が増えたのだ。


 しかも、2年生で既に軍や警備隊や文官の修得コースの認定試験に合格していた新3年生まで、医療コースや文官コースを希望したのである。通年なら、軍コースを合格したら警備隊コースに、警備隊コースを合格したら軍コースを選ぶのが当たり前のようになっていたのに……

 そのため、文官クラスの人数が多くなり、クラス定員をオーバーしてしまった。

 そこで校長、教頭、副教頭、学年主任が話し合い、医療コースの学生を、警備隊コースのクラスであるC組に入れることにした。

 軍コースのB組は、発明に興味を持った学生が増え、開発コースを選択したので、人数的には問題なかった。



「えーっ、クラス代表の発表の前に2年生、3年生には、クラス編成で大きな移動があるので、しっかりと説明を聞くように。……ロームズ医学大学の開校に伴い、今年から医療コースを選択する者が増えた。そこで、医療コースを選んだ学生のクラスを、これまでのA組からC組へと変更する」


「「「ええぇ~っ!」」」


校長の発言に、2年生3年生は驚きの声を上げる。ラミル上級学校の長い歴史の中で、警備隊コースが他のコースと同居……相部屋になったことなど無かったので、その驚きは教師たちも同じであった。

 まあ、クラスで行われる午前中の授業は、A~C組まで全て同じである。午後からが違うだけなので、学校側としては大して困ることもない。


 プラス思考で考えれば、筋肉バカで勉強は苦手というB組の軍コースには、隣国ミリダに留学を目指す開発コースの者が増える。そして、勉強できます系の学生と、まあ普通?という学生が多かったC組警備隊コースには、圧倒的に勉強できます系の医療コースが加わり、クラスの平均点はグンと上がることになる。


 イツキが上級学校の学生……いや領主になったことで、これまでの伝統を変える事態になってしまったが、全体的に学力が向上し進路が増えたので、学生達にも学校にもプラスになっている。

 大変なのは医療コースと開発コースの教師である。完全に人手が足らなかった。



「それでは、クラス代表を発表する。1年A組代表ケン・ネル・ラシード。B組代表デイル・マグ・ローテス」


校長は1年生から順に、クラス代表を発表していく。B組のデイルはキシ領出身で、ソウタ指揮官の甥である。


「2年A組代表トロイ・ランカー。B組代表ナスカ・マナヤ・ホリス。C組代表イースター・ファイ・ブローズ」


「エエーッ!?」


校長の発表に驚きと言うか疑問の声が上がった。ナスカは警備隊コースから軍コースに変え、イースターは文官コースから医療コースに変更していたのだ。


「続いて、3年A組代表……キアフ・ルバ・イツキ・ロームズ」

「「「オオーッ!」」」(歓喜の声)

「「「ええ~っ……」」」(がっかりした声)


「B組代表リョウガ・フィレス・ベントリー。C組代表パル・フィルバ・ギラス。以上がクラス代表である」

「「ええっ?」」


皆が驚いたのは、植物部のリョウガが文官の認定試験に合格し、開発コースに移ったことと、パルが軍コースの認定試験に合格し警備隊コースに移ったことが原因である。

 新3年生は、イツキの従者であるパルは、当然イツキと同じクラスになるだろうと思っていたのだ。



「それでは、上級生はその役目を果たし、友との誓いを守るべく戦うことを期待する」


ボルダン校長は、1年生には分からない話を、始業式の終わりの言葉とした。




 入学式が始まる前、早目に体育館に入場していた在校生たちに向かって、副教頭のダリルは、ある手紙を読み上げていた。


*** 親愛なる友へ ***


 今年の新入生の中に、リバード王子様がいらっしゃいます。

 リバード王子は昨年、2度も魔獣の毒を盛られ死にかけました。もちろん犯人はギラ新教に洗脳されたギラ新教徒です。

 リバード王子は、自分の身を守るため必死で勉強し、安全な上級学校に入学されました。

 しかし洗脳者は、自分をギラ新教の人間だと名乗らずに洗脳を始めています。ギラ新教を憎んでいても、いつの間にか洗脳されてしまうことが、領主会議に報告されました。


 リバード王子をお守りすることは、レガート国の民として、共に学ぶ友であり先輩として、そして臣下として当然の努めです。でも僕は、可愛い弟分であり共に戦う仲間だと思っています。


 新学期、もしも大切な友がギラ新教に洗脳され変わっていたら、どうか校長先生を信じて報告してください。もしかしたら、洗脳を解く手段があるかもしれません。

 洗脳されて時間が経過すると、仲間を攻撃しリバード王子を殺そうとするでしょう。

 友を犯罪者にしてはいけません。友を救えるのはアナタだけです。


 医学大学の入学式を終え僕が戻るまで、優秀な皆さんにお願いします。

 どうかリバード王子を守ってください。

 どうか友を救ってください。


 *** イツキより ***  


 イツキからの手紙を読み終えた副教頭は、手紙を封筒にしまうと、学生たちの顔をじっと見て付け加えた。


「イツキ君はいつ如何なる時も戦っている。友の切なる願いを……皆にはぜひ叶えて欲しい。そして、リバード王子暗殺未遂について一切口外してはならない。当然ご本人に対してもだ……どうだ、みなイツキ君に約束できそうか?」


「もちろんです副教頭。我々はレガート王の臣下です。友であるイツキ君が、王子様を守れると僕たちを信じてくれているのです。そうだよなみんな!」


風紀部の役員であるヤンは、立ち上がると大きな声で副教頭にこたえて、全員に向かって同意を求めた。


「もちろんだ!」「やるに決まっている」「友を守る!」「俺達も戦う!」と、ほぼ全員が声を上げ立ち上がった。



 新学期になっても、忙しくて登校できないイツキとパルのことを想いながら、在校生達は気を引き閉める。

 そして、最年少の13歳で入学してきたリバード王子を守り、洗脳者を救い、ギラ新教徒と戦うと全員で誓った。

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

来週は出張なので、更新が遅くなるかもしれません。

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