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予言の紅星6 疾風の時  作者: 杵築しゅん
ロームズ医学大学開校

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開校式・入学式(2)

 1月12日午後、中級学校の入学式に出席した従者のパルは、交替でラミルに戻るレガート軍の2人と一緒に旅立った。

 ラミル上級学校は、1月10日に入学式と始業式があり前期がスタートする。

 馬車での移動ではなく、特別に馬で移動するため、6日で上級学校に戻れる予定である。それでもラミルに到着するのは18日なので勉強に遅れはでる。



 13日午後、パルと入れ替わるように、医学大学に入学する学生達や来賓が到着し始める。

 来賓はロームズ辺境伯屋敷に滞在するので、国境の検問所から直接屋敷に案内できるよう、ロームズ警備隊が待機している。

 学生達は、検問所に待機していた領内循環幌馬車や荷馬車に乗って大学へと向かう。


 学生達は、新人職員が到着した時と同じように、到着後は医学大学の本館に集合し、入学手続きをしていく。

 先ずは寮か下宿かを選ぶのだが、女子優先の下宿は中級学校に入学した女の子に先を越され、残り1軒となっていた。

 本来ならカルート国から入学・転入してくる中級学校の生徒は、隣町のカラギの元ホテルの寮に入る予定だったが、男女同じ建物に難色を示した貴族家が、下宿にさせて欲しいと願い出て、校長の判断で下宿でいいと決まった。


 今回医学大学には、レガート国からの女子入学者は20人いて、下宿の希望者は10人だったが、6人が寮でも大丈夫だと言ったので、ロームズ辺境伯屋敷から下宿に移った教育部のアンジュラとイシリアが、再びロームズ辺境伯屋敷の3階に戻り下宿問題は解決した。

 学生達は必要な文具や布団等を購入し、入学手続きが終った者から下宿や寮に移動する。医学大学の学生寮は、領主屋敷と大学のちょうど中間地点に在った。

 寮の建設は、来年度、再来年度の入学者のために2年間は続けられる。



 ロームズ辺境伯枠で入学した薬学部のパルテノン、ダン、ヤストの3人は、予想より大きかった領主屋敷に驚きながら、3階の4人部屋へと荷物を搬入する。


「わーっ!いい景色だなあ。窓は小さいし下がり天井だけど、思っていたより部屋も広い。書斎も自由に使っていいらしいし、本当に幸運だったな俺」


キシ上級学校出身で平民のダンは、大きな屋敷で生活することが夢のようだと喜ぶ。


「確かに屋根裏だけど、他にも講師の先生や事務官の人も3階らしい」


カワノ出身でナイトの家の次男であるヤストも、新生活に期待し胸を膨らませる。


「隣の部屋はラミルから来た中級学校の生徒らしい。勉強や日頃の世話をするよう家令のオールズさんに頼まれた。他にも他国から入学する特別医学部の学生2人がこの屋敷に住むので、仲良くするように領主様に頼まれた。夕食迄には到着される予定らしい」


「そうか、パルテノンは領主様とは親しかったんだよな。でも、ラミル上級学校の卒業生は、旅の途中も領主様のことを話さないようにしていたよな?」


文武両道のダンは、既にイツキのファンであるが、長い移動中もラミル上級学校の卒業生は、どんなに他の者に質問されても、誰も領主様の話をしようとしなかったのを不思議に思っていたので質問してみる。


「まあな。合格した全員がイツキ君……領主様の親衛隊に入っていた奴ばかりだから、自慢話を始めたらきりがない。俺達ラミル上級学校組は、他の学生達に変な先入観を持って欲しくないから、話題にしないようにしていたんだ。それに、学生としてのイツキ君と、領主様としてのイツキ様は違うと思うし」


パルテノンや他のラミル上級学校組は思っていた。ペラペラとイツキ君のことを教えるより、実際に接して驚く顔を見た方が楽しいだろうと。あの、独特のカリスマ性を体験したら、絶対にファンになるはずだという自信があったのだ。




 イツキはと言えば、到着したレガート国の教育大臣と人事部長、イントラ連合国のイントラ高学院から到着した副学長と事務長の接待のため、ハキル学長と一緒にロームズ領内を案内していた。


 来賓との夕食会が終わって暫くした頃、ハキ神国からラノス王子18歳と従者のクロダ19歳、そしてラノス王子の護衛隊長のシュルツ32歳と、3回目の戦争の時に指揮官だったドーセ38歳が到着した。


「到着が遅いので心配していましたが、何かありましたか?」


迎えに出たイツキとハキル学長は、とても疲れた感じの4人を見て何かを感じたが、とりあえず会議室に案内する。そして居残りしてくれていた料理長のピータとメイド頭のソルさんに、急いで4人分の食事の準備をするよう頼んだ。


「「「「お久し振りですロームズ辺境伯様」」」」


イツキのことを、シーリス(教聖)様だと思っている4人は、正式な礼をとり深く頭を下げる。


「実は出発前日の夜、王宮内のラノス王子の寝所が襲われ、王子付きのメイドが2人と警備兵3人が殺されました。ラノス王子とクロダ君と私は、ブルーノア教会のファリス(高位神父)様に呼ばれ、極秘に本教会に行っていたので、偶然難を逃れることができました。全ては神の御導きと感謝しました」


本当に疲れた顔で説明したのは、久し振りに会ったシュルツ隊長だった。

 シュルツ隊長は、ハキ神国が初めてロームズに侵攻し占領した時の、ハキ神国軍の少佐だった。ロームズでイツキに出逢い、イツキからブルーノア教会のシーリス(教聖)見習いだと聞かされ、イツキの奇跡を体験していた。

 疫病騒動の時、シュルツはロームズに取り残され、騒動終息後にようやくハキ神国に戻ったが、オリ王子と軍に嫌気が差し軍を辞め、ラノス王子の警護をしていた。


「ロームズ医学大学へ入学することは、ギリギリまで秘密にしていたのですが、出発の2日前に公表したところ……」


「襲われたと。……成る程。側室のクレシアスは、いつでも殺せると思っていたラノス様が、他国に逃げると思い強攻策に出た……ということですね」


口ごもったラノス王子の言葉を続けて、イツキは状況を推察し結論付けた。


「王宮内で刺客を放つとは信じたくなかった父(ハキ神国軍総司令)ですが、本当にイツキ様とハキル学長の言う通りになり、敵の人間性を甘く見ていたことを後悔していました。そして我々4人は、追撃をおそ……追撃を用心しながら夜明け前に出発し、馬車を乗り継ぎながら……遠回りでしたがカルート国のハビルを経由し、ようやく到着することが出来ました」


ラノス王子の従者であり従兄弟でもあるクロダは、ロームズ到着までの状況を、怒りを込めながら説明した。

 刺客に用心しながらの旅は、大変だっただろうと想像できるイツキは、「ご苦労様でした」と従者と護衛の2人に労いの言葉を掛けた。

 ちょうど簡単な状況を聞き終えた時、ソルとピータが食事を運んできた。


「うちの警備は万全です。食事をされたら、出来上がったばかりの新しいお風呂で、ゆっくりと疲れをお取りください。食事が済まれたらベルを鳴らしてください。メイド頭のソルがお部屋まで案内します」


「ソルと申します。お荷物はお部屋に運んでおきます。どうぞこれからよろしくお願いいたします」


ソルは少し緊張しながらも、きちんと挨拶をし、他のメイドを呼び荷物を部屋に運ぶよう指示した。



 イツキは家令のオールズ、軍と警備隊担当のグライス、教え子のベルガ、警備隊長のコウタを執務室に呼び、ハキル学長と一緒に、ハキ神国からラノス王子一行4人が到着したことを伝えた。


「ラノス王子一行は、出発前に王宮で殺され掛けた。私の予想ではロームズまで追っ手は来ないと思うが、屋敷の警備を万全にし、如何なる来客であっても、ハキ神国の人間は私の許可なく屋敷内に入れることを禁じる!グライス、国境の警備は?」


「はい領主様。本日より特別警戒体制に入っています。特に新しい商人の出入りは3日間禁止し、関係者以外の、東地区(領主屋敷から医学大学までの領主所有の土地)の通行を禁止してあります。東地区は、元々ロームズの領民も住んでいませんでしたから、困ることは無いでしょう。ハキ神国側の国境は封鎖してあります。工事関係者はようやく1ヶ月の休暇に入り、2日前にミノスやカイに戻りました。カイ領主のご子息クスコ様は、入学式に列席されてから帰郷されます」


グライスは立ち上がり、警備体制は万全だと報告する。


「屋敷の警備も、イツキ様がご滞在の間は、ロームズ正教会から応援が来ますので、倍の人数を配置しています」


教会警備隊のコウタ隊長も、抜かりなく準備出来ていると報告する。


「よし、執務室の前の予備室に、ドグさんとガルロさんに泊まって貰おう。それで大丈夫だろう。コウタさん、誰かロームズ正教会に使いを送ってくれ」


「はい承知しました」


コウタは軽く頭を下げると、直ぐに部屋を出ていった。そして残りのメンバーも其々の部屋に戻っていく。



 翌朝イツキは、レガート国とイントラ高学院からの来賓に、ラノス王子一行を紹介した。

 当然何も知らなかった客達は驚いたが、特別医学部に入学したのだと分かると、歓迎ムードで明るく挨拶をしていく。


「今日は、カルート国の皇太子ご一行も到着されます。夜は歓迎の晩餐……と言っても田舎料理ですが、皆様の親交を深める場にしていただけたらと思います。堅苦しくないようリビングでのパーティーといたします」


イツキはにこやかに、領主っぽく微笑むと、パーティーは午後6時からですと伝えた。


 急遽呼び出されたドグとガルロは、ラノス王子に礼をとりクロダに挨拶をすると、顔見知りでもあるシュルツ隊長とドーセと共に、ラノス王子の護衛に加わることになったと言い握手を交わした。





 14日午前中、学生達は大学内を見学し明日からの日程の説明を受け、ロームズの町を見学する。

 午後から大学に戻り、各学部ごとに分かれて行動する。

 


「寮が全て個室とは驚いたな」

「ああ、狭いけど落ち着いて勉強が出来そうだ」

「寮の飯が旨くって驚いた。あの食事付きで個室、それで銀貨3枚は安いよ」

「3階には女子も居た。看護学の教授とか看護師も住んでるらしい」

「俺達はカルート国からの入学だから、隣町の元ホテルの2人部屋なんだ。ちょっと羨ましいけど、中級学校の奴等の世話をすることで、食費込みで銀貨2,5枚だ」


医学部の学生25人は、1階1ー1の教室で思い思いの話に花を咲かせていた。

 そこへ、若い男性が2人入ってきた。


「今日から医学部の学生を担当するベルガだ。レガート軍の軍医だが、今年からロームズ医学大学で講師をすることになった。まあ担任みたいなものだが、毎日ホームルームをするわけではない。伝達事項はエントランスの掲示板で知らせるので、ホームルームがあるかどうかは掲示板を確認するように」


ラミルを出発する学生を引率してきたベルガは、学生の半分とは既に親しくなっている。歳も近いので、学生達は何かと相談もし易いだろう。


「医学部事務担当のライス(ラミル上級学校卒業・イツキ第2親衛隊)です。提出書類・学費・寮費の手続き、履修相談も受け付けます。1階事務室の学生担当課に居るので、大学生活で分からないことや困ったことがあれば相談してください」


ライスは緊張しながら学生達に説明する。普通の事務職だと思っていたのに、学生担当になってしまい半分泣きたい気持ちだった。自分より優秀な同期生や先輩の世話をするのは気が重い。しかし講師のベルガ先生が、イツキ君ととても親しいと知り、元イツキ第2親衛隊の追っかけとしては頑張るしかないと勇気を出す。


いつもお読みいただき、ありがとうございます。

入学式はまだ?と思われた皆様……すみません。次こそは入学式です。

ストーリーを組み直していたので、更新が遅れました。

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